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日本の公立中学校卒が思い出すICUHS

不思議なことに、社会人になってから、というかここ最近、高校時代のことをよく思い出す。

高校時代の友達のこと、大好きだった世界史の授業、当時はあまり理解できなかったけどものすごく大切なことを教わっているんだなと思った政経の授業、ほとんど寝てた古典の授業……。

そして、私は、高校で圧倒的少数派だった。
ずっと日本にいて、日本語で教育を受け、日本の公立小学校と公立中学校を卒業した私は、超マイノリティに属していた。

突然、高校のことを書こうと思った理由は後述するが、今日は私が3年間通ったICU高校(以下、ICUHS)について書こうと思います。


1.公立学校卒から見たICUHS

私がICUHSに進学した理由はすごくシンプルで、塾の先生に勧められたからだ。
英語の成績が当時、あくまで当時、すこぶる良かった。
英語がすごく好き!って訳ではなかったのだが、中学生の頃に大好きなアニメキャラクターがたまたまアメリカ人で。その頃、某擬人化ジャンルの最盛期でした。察してください。オタクだから、英語の成績だけはグングン伸びた。
都立高校も推薦で受けたが、落ちてしまったのでそのまま2月上旬に私立を受けた。そのうちのひとつがICUHS。
関係ないけど都立日比谷高校は推薦の男と女の募集人数からして男尊女卑感が出ていて、ふ~~~~んって思った。男子が受かる平均内申点は女子が受かる平均内申点より低いのに、人数では男子の方を多く取る。ママがこの事でずっと静かに怒っていたのをよく覚えている。医学部の入試で女子生徒の点数が不当に下げられるのは昔からよくある事、都立もそういう男尊女卑なんでしょうどうせ。とか何とかブツブツ言っていた。
その点、ICUHSは合格者の中にそもそも男女の枠がない。点数が良い順に上から取っていくシンプルな方法だとタムリン(わかる人にはわかる先生のあだ名)が言ってた。
ICUHSに受かったことで、ママからは日比谷の一般入試はもう受けなくていいよと言われたため、ICUHSへ進学することに。塾の先生も親もICUHSに受かってすごく喜んでくれたのが印象的だった。特にママは私に都立日比谷高校の推薦枠を受けさせたものの、あまり行かせたくなさそうだったため、私立の中の本命第一志望に受かったことで本当に喜んでくれた。マザコンなので、ママが喜ぶことが世界で1番嬉しい。

帰国子女が多い学校、というのは聞いていた。
私みたいな日本にずっといて日本語で教育を受けていた生徒は帰国子女に対し「純ジャパ」という。

でも私が超マイノリティなのは、純ジャパだからではない。
純ジャパ、つまり一般生徒用の試験では1/3の人数をとる。だから1/3は私と同じ純ジャパであるはずなのだが……
公立学校からICUHSに進学した生徒が、この中でもとっっっっても少ない。私のICUHSの友人で、公立小学校→公立中学校という経歴の友人は本当に、一握りしかいない。

純ジャパ枠の学歴で多いパターンは隠れ帰国子女(帰国子女だけど、帰国子女枠の試験を受ける要件は満たしていない等の理由がある)や、中高一貫の私立に進学したものの、共学の高校に行きたいとか校則のないところに行きたいとかで、ICUHSに来たパターン。次に多いのが幼稚園から学習院のパターン。皇族か。理由は私立中高一貫者と同じ。あとは日本のインターナショナルスクールに通っていたが、授業料が高すぎるor日本の大学を受ける予定である等の理由から来たパターン。

私の通ってた公立中学校は元不良校で、先生はその名残でトランシーバーを持っている。
包丁を持たせられないという理由で、通常の家庭科で料理の授業はなし。闇金ウシジマくんの地元ほどではないが、治安は悪い方だと思う。
駅前はパチ屋だらけで歩きタバコは当たり前の地域なんです、今も。念のため、東京都23区内の話です。
もちろん、中学3年間で高校受験に必要な勉強は授業で終わらない。校則がたくさんあった。

毎週水曜日の、学年主任がいばり散らすだけの、無駄としか思えない朝の集会が大嫌いだった。学年主任は生徒を黙らせて整列させるためにしか存在していないような人だった。
中学の友達とは今でも仲が良いし、その時の友達と出会わなければ今の私はない。何が言いたいかというと、中学は完全に「友達と遊ぶ場所」だった。友達のおかげで学校に通うことは少しもイヤじゃなかったし、楽しかったと声を大にして言える。
でも学ぶ場所ではなかった。人として素敵な先生は何人かいた。でも授業のレベルは……英語の教師なんて、発音から文法の教え方まで、何もかも酷かった。
お決まりの法則だけど、ヤンキーが多いから地元の子どもの数は多い!中学3年間で苗字がコロコロ変わる友達もいた。あんまり気にしたことはなかったが、片親率も高校時代に比べると高かった。中学の同級生にはもう子供が3人いて、3人の子ども全員お父さんが違うパワフルなご家庭を築いている方も。

そんな公立中学校からICUHSに行くと、校則が何一つなくて、塾にわざわざ行かなくても素晴らしい授業を学校で受けられることにものすごく感動した。
そしてそこに感動できるのは、私みたいな超少数派の生徒だけなんじゃなかろうか。世界のだいたいの学校には校則がない(らしい)。集会でも整列なんてさせられなかったし、校長先生が喋っているときには「イチロウ~!」と下の名前で野次が飛ぶ。それを怒る先生も誰一人いない。
授業のレベルに関しては住んでいた国、地域によってまちまちだろうが、少なくとも私立中学から来た生徒は感動しないだろう。

芝生が広がる中庭でウクレレを弾いてる男の子がいたり、男装している女の子がいたり(LGBTのことを初めて知ったのも、高校だった)、もはや何か国語で話しているかわからない会話が普通に聞こえたり。
海外に行ったこともない私からしたら、ICUHSは外国みたいだった。
てか高1のとき「海外に行った事がない」って言ったら周りから凄く驚かれた。パスポートも大学入ってから初めて取得しました私は、、、。

2.帰国子女は決して楽をしていない

高校に入ってからの私は英語に苦しめられた。
高校受験用にやっていた中学までの英語と、ICUHSの英語が全く違ったからだ。

ネイティブの先生の授業を受けるのが、とにかく大変だった。
中学までは「私って英語が得意なんだなぁ!」と天狗になれていたのに、実際はリスニング力も会話力も乏しすぎて話にならない。
英検準二級を中1で取ったが、あれ、なんの意味もなかったなぁ…。

入学してすぐに英語・日本語・数学のクラス分けの試験があるため、授業は少人数で同じレベルの生徒と受けることができるのだが、私は一番下の英語のクラスの中でも英語ができないと感じた。ホームルームクラスに戻れば同い年の高校生がみんな、当たり前のように多言語を操れるのに、私はちっとも喋れない・理解できないことに劣等感を抱いた。

帰国子女の彼らが日本語を喋れないのなら、まだ救いもあった。
でも彼らは、ちゃんと日本語が喋れるのだ。漢字が読めない、日本語の長い文章を読めない生徒は大半だったが、高校生レベルの日常会話なら問題なくコミュニケーションがとれる。

それに加えて中国語もできるしフランス語もできるしロシア語もできるしアラビア語もできるしドイツ語もできるし、、、、、、、

みんな羨ましいと思っていた。
親の都合で海外に行かされたとはいえ、幼少期に自然と英語を覚えられるなんて。そこで文法を気にすることなく、完璧な発音を手に入れられて。ずるいとすら思っていた。

これ、私以外の多くの日本人も思ってるんじゃなかろうか。

私が今回、高校時代のことを振り返ろうと思ったキッカケでもあるけど、
「帰国子女は英語ができるだけの馬鹿」と思っている層が少なからずいるらしい。というか、そういう人に会ってしまった。
27歳の慶応卒銀行マンが、私がICU卒であるが帰国子女でないことを知ると「そう思わない?」と同調を求めてそう言ったのだ。
自分は英語を喋れないくせに。どうせお前Netflixを日本語字幕でしか観れないんだろ、って思ったけど、かつて自分も妬みと僻みを込めてそう思ってた節があったから苦笑しかできなかった。まぁ友達じゃないし、その人と会うことは二度とないだろう。

間に追記してしまいますが、つい先日↑みたいな発言が拡散されていて私のリア垢TLは帰国子女たちの悲しみで溢れていました。


私含め純ジャパの方々、心して聞いてください。自然に多言語話者になることは奇跡レベルでないです。親と本人が強く意識しないと、かなり難しい。
辛いのは小学校~中学校の途中で現地校に行ってしまうパターン。
よほど運が良くない限り、現地語が話せない日本人には友達ができない。場合によっては人種差別される。
私のママがママ友から「うちは近くに日本人学校がなかったから、小学3~5年生くらいまで親子で泣きながらフランス語を勉強した」というような話を聞き、それを私に話して、胸が締め付けられる様な思いをした。
私の小学校3,4年生くらいの頃なんて、野球しまくったり遊戯王カードで遊んだり、NARUTOを読んだり、はねるのトびらとエンタの神様を見てバカ笑いしてた…。
アメリカの現地校で露骨に差別され、二度とアメリカに行きたくないという友達もいる。英語はぺらぺらだが、その子も小学校の途中で転校したからさぞかし大変な思いをしたんだろう。

もっと小さい頃に海外へ行ってそっちの言語を習得してしまうと、今度は日本語を覚えるのが大変だ。
なんでうちのママはわざわざ使いもしない漢字を教えるんだ、平仮名とカタカナもわからない!と何回も反発して家出したことがある友達もいる。

その点、私は誰にも人種差別されることもなく、必要に迫られて勉強をしたというよりは、興味関心のもと中学生の頃にのびのびと英語の勉強ができて幸せだった。
結果として高校受験のためでしかないお粗末な英語だったけれど、遊びたい盛りに泣きながら勉強してる小学生に比べたら、私はかなり恵まれていた。
私に限らず、大半の日本人がそうじゃない?
中には天才的な言語の才能で、多言語の習得に苦労しなかった人もいるだろうけど、だいたいの帰国子女は家族ぐるみで想像を絶するような大変な思いをしてる。

それを、なんとなく伝えたかった。
ICUHSは、もともと帰国子女の生徒が日本の高校に通うと高確率で迫害(あえてイジメとは書きませんでした)されてしまうことから、帰国子女のために出来た高校である。
でも帰国子女じゃない、超少数派の私も、ICUHSに通ってよかったなぁと思う。

ICUHSに入学するみなさん、帰国子女も純ジャパも、学校生活を思いっきり楽しんでください。
そして私みたいにICUHSに入ったら急にマイノリティ属性になってしまう生徒のみなさん、おめでとうございます。笑

最後に、高校在学中は「公立中学校ほんとにクソだったな!!!」と思うんですけど、不思議なことに、社会人になると「公立中学校のクソみたいな校則があったから、日本の国民性は“”こんな“”に素晴らしいだな…」って思うんですよね…。ちょっと皮肉気味に。あとは、経験という意味で公立中学校に行って良かったなぁと思うようになった。
もちろん、そう思わなくても正解です。


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