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エビchill時間を過ごしませんか
お疲れさまです。
どうです、
この後ちょっとエビを釣りに行きませんか?
おお良いですね、ではこのあと行きましょう!
そんな仕事帰りにちょいと一杯ひっかけるような感覚で
エビを釣りに行けるような国にわたしは住んでいます。
春から台湾に来て約9ヶ月ほど経ちました。
お昼頃には語学学校へ行き中国語を学び、
放課後はアルバイトをし、
隙あらば街へ繰り出し、路地を練り歩きながら
気ままに写真を撮り
台湾人に交じって
何食わぬ顔でごはんを食べている日々です。
お陰さまでそれなり元気にやっております。
そうそう、先程お伝えした通り、普段は大学附属の語学学校へ通っているのですが、
世界中から中国語を学びに来ているみなさんと知り合い、良い仲間達ができました。
『エビを釣りに行こう!』と誘ってくれたのはそのクラスメイト達でして。
世界各国、国籍違えど、気心知れた仲間と一緒にあっちへこっちへウロウロしつつ、Google mapを片手に楽しくおしゃべりしながら向かいました。
どんな釣り場というと、そうですね、日本でいうところの釣り堀みたいな場所があります。
今回、遊びに来たのはこんなところです。
それでは自動ドアの向こう側、覗いてみませんか。
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よく釣れます
屋内の釣り堀なんて、ちょっとわくわくしません?
それ以外にも半屋野外や、規模は小さいのから大きいのまで幅広くあります。
台湾、特に私が住んでいる台北は、雨が多く、
気まぐれな通り雨も多いワガママな地域なので屋根があると安心します。
入り口に入るとこんなご様子。
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水槽の酸素玉がぼこぼこ鳴るような、くぐもった音の中に、くすくす程良い笑い声が交じります。
目の前に広がる生簀はすごい色していますが、エビさんたちにとっては、ちょうど良い環境なのでしょう。
水と生き物が合わさった、あの独特な生臭い匂いはそんなに気にならないと思います。
池の手前にはいくつかのテーブルと、左側に缶飲料が並ぶ冷蔵庫があります。
そう、釣りながら飲めるっていうやつです。
もう冷蔵庫を見るだけで楽しみ!
その右手には、古めかしい看板を背面に、並ぶ竿をひとつずつ調整しながら男性が座っていました。
他に従業員らしい人もいないし、事前情報によると、
どうやらこの方が老闆(オーナー)みたいです。
你好、と声をかけ、人数を伝えます。
こくり、と頷き、立ち上がると、ひょろりと背の高い老闆が、小さな冷蔵庫から平たいカラートレーを取り出し、カウンターに並べます。
それからさっき調整していた釣竿を差し出し、各自それぞれ受け取りました。
おお、きみが本日の相棒か。
手渡された釣竿をしげしげと眺めながら、先に付いた釣り針におイタされないよう恐々手に持つと、
老闆が指差す方向に、等間隔に置かれた簡易椅子が池をぐるっと囲うように置いてあります。
空いている席を利用してください、とのことですね。相分かりました。
左手にあった冷蔵庫から飲みたい人は好きな缶を選びまして。
それでは、
エビ chill 時間をはじめましょうか。
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KA -N -PA -I
池底にいらっしゃるエビさんを誘致するのに必要な対価ですが、
幸いなことに、乾燥小エビで良いそうです。
いやオキアミかな?
どちらにせよ、虫の類でなくて安心します。
ふと見ると、あちらで準備しているクラスメイトの元にどこからともなく、一人のおじさま(台湾人)がやってきました。
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優しく微笑みながら、身振り手振り餌の付け方を教えてもらっているようで、
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それから放った釣竿にすぐエビがかかり、
やんややんやと大盛り上がりしています。
いいなー。
釣れるといいね、釣れたらどうやって食べようか
私の国にもエビ釣りあるよ。よく遊んだな懐かしい
今日の小テストどうだった?
まぁまぁ良かったよー
うちの老師はちょっと課題が多すぎる…
そうそう、あの子は12時のクラスにいるらしいよ
もうビール飲みおわちゃった
たまに網を持った老闆がぬらりと現れては、
何食わぬ顔でバチャバチャと追加のエビを投入していきます。
来月、彼女が一年ぶりに会いに来るんだ
楽しみだね!
次のホリデー私はちょっと帰国しようかなー
あ、ビール飲む?
ゆらゆら沈むウキを眺めながら、ビール片手に釣竿の先もゆらゆらと揺れて、
他愛のないおしゃべりが続きます。
ときおり訪れる沈黙ですら、それはそれは居心地の良いもので。
この時間、好きだなぁ。
……本当はね、
日本に戻るか台湾で仕事するか悩むね、理想はどちらとも繋がっていたいの。
わかるよ、ぼくも家族と子育てのために来台したけどキャリアが心配で…
……実は私、来年の夏にはパートナーと一緒にドイツへ行くかもしれない…
えぇっ!!ほんと!?
ちょっと待って!!
いま竿が沈んでいるから!!!
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それからも釣り上げたエビたちに翻弄されながら、
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わたしたちは今も自分たちの人生に翻弄つつ、
それでも楽しい時間はあっという間に過ぎていくものですね。
エビが入った籠を老闆にお渡しして待つことほんの少し、缶ビール一缶分。
やってきたのは粗塩にまぶされ、
平皿に整列した朱色が、はぁ、美しい。
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まだじんわり熱さが残るエビの頭をカシュッと折り、まずはエビ味噌を口に含むと、
クラスメイトから渋い顔をされました。
曰く、うちの国では食べないよと。
ここじゃ誰も見ていないから、試してみるといい、ほらこんな風に!
おそるおそる、ちゅるっと吸ってみる彼女がまた可愛らしくて、
食にまつわる文化の違いほど、特に面白くておいしいのです。
今日は分け合う試食分ぐらいしかないけれど、
さらにもう一缶、ビールがあればちょうど良いねと笑い合いました。
わたしたちは生まれも文化も言葉さえ、何一つ異なる国から、
たまたま【台湾】という小さな島国で出会いました。
現在、学んでいる共通言語を通して、お互いの国と自分自身を紹介し合い、
まだまだ未熟で言葉が足りないなら、
誤解しないように、悲しいすれ違いが生まれないように、
互いが思い遣るように接し合い、それがとてもとても自然なことになっています。
そんななか、この出会いを【縁】と呼ぶならば、
こんなにも不思議なことはないでしょう。
だからこそ、
いましばらく共に居られる親愛なるあなた達と、
過ごせるいい時間を
お酒と共に楽しみたいのです。
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![ロロ|【台湾】社会人留学生](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117465288/profile_6a85171831a599a5a5507c69c06b132b.png?width=600&crop=1:1,smart)