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胸郭出口症候群は多因子的

先日、キングコング西野さんのサイン付き絵本「えんとつ町のプペル」を甥っ子たちにプレゼントしました( ´ ▽ ` )

まだ小さいから絵を楽しんでる印象なんだけど、食い入るように絵を見つめてる姿を見ると早く読み聞かせをしたいと思う、32才の今日この頃笑


さて、今回は胸郭出口症候群(以下TOS:Thoracic Outlet Syndrome)について!

TOSは学校の授業でも習う症候群。習う内容といえば、3つの絞扼部位・絞扼されるもの・整形外科的テスト・問題になる筋・国試で出やすいポイントなどでしょう。

👇たとえばこんな感じ👇


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ただ、実際の臨床では症状の軽快に時間がかかったり、不定愁訴に似た痛みに苦労したり、そもそも実は頸椎の方に問題があったなど。。。

知れば知るほど、奥深い( ´ ▽ ` )

また、TOS単体よりも、交通事故後の症状の1つとして出るように何かとセットになってリハビリしている印象です。

今回の記事では、Double crush syndromeや交通事故後などいろんな視点からTOSについて掘り下げていきたいと思います。


胸郭出口症候群は3タイプ


TOSは病因に応じて、❶神経原性TOS・❷動脈性TOS・❸静脈性TOSの3タイプに分けれる。

発生率は明らかに違いがあって、神経原性TOSが約90%

あまりにウエイトが大きい・・・

加えて、この3タイプは1)先天的な要因・2)後天的な要因・3)外傷それぞれに関係してる。

1)先天的な要因:頸肋の存在・第1肋骨の異常など解剖学的要因

頸肋がある人のほとんどは無症候性ですが、神経原性TOS症例の最大20%が頸肋の存在が原因と言われています。

もちろん、動脈を圧迫して動脈性TOSになることもあります。

2)後天的な要因:スポーツやADLでの反復的な運動、overuse

筋肥大では圧迫が起こり、反復運動などオーバーユースでは腫脹・小さな出血・線維化が引き金となる。

3)外傷:交通事故やむち打ち症、骨折など

事故後では出血・血腫・骨折で神経や血管が圧迫される。むち打ち症のように急激に頭頸部が屈曲や伸展をしてしまうと、特に神経原性TOSとの関わりが深いです。

先天的な要因自体を僕たちがどうこうすることはできないけど、それ以外ならリハビリの領域ですね✨


神経原性胸郭出口症候群は9割

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神経原性TOSは90~95%、動脈性TOSは1~2%、静脈性TOSは3~5%と言われてます。

この記事では神経原性TOSに焦点を絞ってお話をしていきますが、その前に絞扼部位と整形外科的テストのおさらい✨


❶interscalene triangle(斜角筋三角部)

1番内側にあるコンパートメントで、前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨でできる間隙。ここを腕神経叢と鎖骨下動脈は通るけど、鎖骨下静脈は通りません。 


❷costoclavicular space(肋鎖間隙部)

鎖骨下筋、鎖骨、前中斜角筋で囲まれていて、腕神経叢、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈は全てこのコンパートメントを通過。


subcoracoid space(小胸筋間隙部)

小胸筋はこの間隙の前縁、肋骨は後縁を形成。

絞扼部位と整形外科的テストは国試でも必須ポイントでしたね( ̄▽ ̄)



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漢字が多すぎて小難しさしか伝わってこん。。。orz

神経原性TOSは「interscalene triangle」と「subcoracoid space」で起こりやすい。斜角筋や小胸筋のタイトネスはもちろん、頸肋、異常な筋構造、外傷後の瘢痕が原因になる可能性があります。

なで肩・女性はなりやすいってよく聞くけど、それ以外でもオーバーヘッドスポーツをする人やウエイトリフティングをする人でも起こりやすいと言えます🏋️‍♀️

また、このような人に症状が出ると共通の特徴も出ます。


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再現性が高いということは、問題動作のイメージが容易にできて、アプローチの対象もスッキリしやすく、さらに治療の効果測定行いやすいなどリハビリを進めるのに役立ちます✋

患者さん自身にしても経過の良し悪しが分かるので、満足度が高くなりやすいかもしれません。

症状では、後頭部・首・肩・腕・手指・前胸部の痛みや感覚異常、重だるさが出現。尺骨神経領域で影響を受けやすい傾向にあります。

👇C5・6・7神経(上部腕神経叢)の圧迫を伴うTOSの症状👇

首の外側に痛み、耳や後頭部よりも上に放射状の痛み。また、菱形部〜鎖骨を横切って前胸部、三角筋と僧帽筋領域を通って腕の外側へと放射されることも 。

👇一般的にはC8・Th1神経(下部神経叢)の圧迫による症状が多い👇

痛みは肩〜腕の内側面に沿って前腕へ出やすい。


病歴と身体所見をもとに下の図のような、神経原性TOSの臨床診断の予備的ツールが提唱されています🏨

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動脈性・静脈性胸郭出口症候群

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先天的要因では第1肋骨の異常によるinterscalene triangleでの圧迫、後天的要因では活動的な人でsubcoracoid spaceで圧迫を受けやすい。

静脈性TOSは鎖骨下静脈がcostoclavicular spaceで第1肋骨と鎖骨によって、圧迫されることで起こりやすい。というかinterscalene triangleに鎖骨下静脈は通らないから、そこで圧迫がおこらないのは当然φ( ̄ー ̄ )

血液の流れが制限されると、血栓症・浮腫・チアノーゼ・重いだるさ・痛み・青白くなったりします。

動脈性にせよ静脈性にせよ、長期的にみると神経の異常につながるリスクがあります。神経原性TOSの場合も含めて、早期発見・早期治療に取り組まないといけないっすね。

軸索が傷ついてしまうと、取り返しがつかないことになってしまいます。


胸郭出口症候群と治療戦略・リハビリ

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すでに説明したようにTOSは多因子的なため、診断への明確なコンセンサスも議論されている最中。

だから、TOSの治療は、ドクター・放射線科・薬剤師・PT・OTなど多職種によって包括的なものであるべき

その中で僕たち理学療法士ができること。

ライフスタイルの修正・姿勢・体重コントロールの指導、リラクゼーション、ストレッチ、運動療法etc...


以前にタムさんがこんなツイートをしてました

あるあるですね笑。あとは本屋に行くとどうしても1冊参考書を買ってしまうとか、セミナーに行きまくるとか( ^ω^ )

頑張ろうとするほど、徒手にこだわろうとするほど、この傾向が強くなってくる。いったん、深呼吸しよう。

理学療法は医療の一部でしかない。どれだけスキルを高めようとしても、理学療法だけで治るはずがない。

僕も前までは、理学療法士=治療者のイメージが強かったです笑。でも今では理学療法士=支援者のイメージで患者さんと向き合うようにしてます。


話が逸れてしまったので、元に戻します笑

発症から介入までの期間が短ければ、保存療法の効果も高まりやすいと言われています。

逆に介入開始が遅くなった場合には、慢性の上肢痛や重度の障害が残ってしまうリスクにつながります。
先ほど紹介した臨床診断の予備的ツールが3ヶ月ですが、この期間が果てしてどうなのか機会があれば調べてみたいと思います( ̄▽ ̄)

僕の場合、交通事故後にしびれが出た患者さんから「治りますか?」と、もし質問を受けた場合には、「3ヶ月単位で考えていきましょう。3ヶ月で少しずつおさまってくる可能性があります。ただ、期間が長くなるほど症状が残ってしまう可能性もあります」と答えますね。



動画でも紹介しましたがTOSの整形外科的テストにはMorley test・Adson test・Eden test・Wright test・Roos testがありますね。

プラスして注意したいこと。

・頸部(頸椎)に問題はないか

・正中神経や尺骨神経の絞扼が肘や手首で併発してないか

これを見落とすとアプローチの優先順位を間違えて、迷路に迷い込みますw


さらにこれは覚えておいてください。

今までの話では神経や脈管が圧迫されることでTOSが生じるとしてきましたが、実際のところはそうとは限りません。

有料になりますが、たくみさんのマガジンで詳しく説明がされてます


・圧迫型
・牽引型

ざっくりと説明をすると、牽引型TOSもあるので評価もさらに工夫をしていきましょう。

TOSが他の障害とダブルで起こる(double crush phenomena)ことが考えられる一方で、その割合は低いとも言われていて、まだまだ不透明な点です。

ですが、頭に入れておいて損はありません。

文献の中では、保存療法としてリハビリは少なくとも4~6ヶ月は手術に先行して行われる必要があると言われています。


おまけの触診動画

ここまで、胸郭出口症候群についてお話してきました。いかがでしたか?^_^

少しでも臨床のお役に立てたら、嬉しいです✨

下の動画は、胸郭出口症候群でキーになる斜角筋と腕神経叢の触診動画です。

ペアがいなくても、1人で触診練習ができるようにしてあるので、ぜひこの動画を見ながら練習してみてください( ´ ▽ ` )


まとめ

✔️胸郭出口症候群は神経性・動脈性・静脈性の3種類あって、神経性胸郭出口症候群が圧倒的に多い

✔️発症要因は先天的要因・後天的要因・外傷に分けて考える

✔️評価では牽引タイプor圧迫タイプ、頸椎や他の絞扼性障害の有無もみる

✔️神経性TOSではC8・Th1領域の症状が出やすい、また特定動作での痛みの再現性が得られやすい


参考

・Thoracic Outlet Syndrome: A Comprehensive Review of Pathophysiology, Diagnosis, and Treatment

・New Diagnostic and Treatment Modalities for Neurogenic Thoracic Outlet Syndrome

・Brachial plexus traction injuries

・牽引刺激における腕神経叢の微小血行動態に関する実験的研究


ライタープロフィール

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運動器リハの中でも下肢疾患が大好き。今は上肢の魅力にも取り憑かれ、日々勉強中!

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淺原 裕一郎
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