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ネオ・トウキョウ・デイズ_007


未来世紀の日常クロニクル
エピソード007:選択

西暦2***年、ネオ・トウキョウ。空には高速道路が幾重にも張り巡らされ、飛行車が飛び交う。街の中心部には超高層ビルが林立し、その輝きは夜空の星々をも凌駕する。ネオ・トウキョウは科学技術が高度に発展し、人類がかつてないほどの豊かさと便利さを手に入れた都市だ。人々は遺伝子操作によって病気を克服し、寿命を延ばし、ナノテクノロジーによって生活のあらゆる場面を快適にする。

一方で、テクノロジーへの依存は深まっている。人間は自らの能力や可能性を制限されているのではないかという疑問も生まれる。教育はAIによって管理され、子供たちは幼い頃からVR学習システムを通して膨大な知識を詰め込まれる。個性や創造性よりも効率性と均一性が重視される教育システムは、人間の可能性を狭めているのではないかという批判もある。

ユウトは、18歳の青年。大学進学を控えている。優秀な成績でエリート養成学校を卒業し、未来のリーダーとなるべく期待されている。エリート養成学校は社会を担う人材を育成するために設立された特別な学校で、入学には厳しい選抜試験を突破する必要がある。彼も、幼い頃から優れた知性とリーダーシップを発揮し、周囲から将来を嘱望されていた。

今、自らの将来について深く悩んでいる。当たり前のように、遺伝子操作や脳インプラント技術によって個人の能力や適性が生まれながらに決定されている。遺伝子操作は病気の遺伝子を排除したり、優れた身体能力や知的能力を付与したりするために用いられている。脳インプラント技術は特定の分野の知識や技能を脳に直接インストールすることを可能にする技術で、効率的な人材育成に役立っている。優秀な科学者としての才能を認められ、政府の研究所で働くことが期待されている。政府の研究所は、未来社会の科学技術をさらに発展させるための研究機関で、優秀な科学者たちが集結している。

科学者としての道に進むことに疑問を感じる。科学技術の進歩が必ずしも人間の幸福に繋がるとは限らないと考えている。テクノロジーへの過度な依存が人間から自由と創造性を奪い、精神的な空虚感を招いているのではないかと危惧する。人間が自らの能力や可能性を最大限に発揮できる社会、人間らしさや倫理観を大切にする社会を実現したいと考える。

幼い頃から歴史や哲学に興味を持っていた。歴史書や哲学書を読み漁り、過去の偉人たちの思想や行動から人間存在の意味や社会のあり方について深く考えていた。人間らしさや倫理観を失ってはならないと信じている。人間は理性や感情、道徳心など、AIにはない独自の能力を持っている。そうした人間特有の能力を活かし、より良い未来を創造したいと考える。

大学進学を機に、科学者ではなく歴史学者になることを決意する。常識からは外れた選択だった。両親や教師は才能を無駄にするのではないかと反対する。彼らは、彼が科学者として活躍することで世界に貢献し、名声や富を得ることができると切望していた。しかし、自分の心に従うことを決める。自分が本当にやりたいことは何か、世界にとって本当に必要なことは何かを真剣に考えた結果、歴史学者になるという道を選んだのだ。

歴史学を学ぶことで人間の歴史や文化、思想を深く理解し、自分たちが進むべき道を模索したいと考える。過去の過ちから学び、未来がより良いものになるように貢献したいという強い思いを抱いている。歴史は単なる過去の出来事の羅列ではない。未来への教訓を与えてくれる貴重な財産だ。歴史を研究することで世の中が抱える問題の解決策を見出せると確信している。

大学で歴史学を学ぶ中で、過去の偉人たちの生き方に触れ、大きな影響を受けた。古代ギリシャの哲学者ソクラテスの「無知の知」という言葉に感銘を受け、自らの無知を自覚し、常に学び続けることの大切さを学ぶ。ソクラテスは「私は自分が何も知らないということを知っている」という言葉を残した。ユウトは、この言葉を胸に謙虚な姿勢で学び続けようと思う。ルネサンス期の芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチの多岐にわたる才能と探究心から人間の可能性は無限であることを教わる。ダ・ヴィンチは絵画、彫刻、建築、科学、音楽など様々な分野で才能を発揮した万能の天才だった。ダ・ヴィンチのように様々な分野に興味を持ち、探求心を持ち続けたいと思う。

歴史学を研究する一方、現状にも目を向ける。テクノロジーへの過度な依存が人間から自由と創造性を奪っているのではないかと危惧する。人々はVRゲームやホログラムといった仮想現実の娯楽に熱中し、現実世界での人間関係や社会活動がおろそかになっているように見える。人間が自らの能力と可能性を最大限に発揮できる社会を実現するために歴史学の知識を活かしたいと考える。

大学卒業後、ユウトは、歴史資料デジタルアーカイブセンターで働くことになる。歴史資料デジタルアーカイブセンターは過去の膨大な資料をデジタル化し、未来の人々にアクセス可能な形で提供する施設だ。過去の資料をデジタル化し、未来の人々に歴史の教訓を伝えるという重要な役割を担う。過去の知恵を未来に活かすことで人間性豊かな社会を実現する、という夢を抱き、新たな一歩を踏み出す。


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