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ネオ・トウキョウ・デイズ_006


未来世紀の日常クロニクル
エピソード006:夢

西暦2***年、ネオ・トウキョウ。太陽の光は超高層ビル群のガラスに反射し、街全体を人工的な光で満たす。空は飛行船やドローンが飛び交い、常に騒がしい。街路樹は全て遺伝子操作によって作り出されたもの。季節の変化を感じさせることはない。人々は高度に発達したテクノロジーに囲まれ、物質的に豊かな生活を送る。精神的な豊かさや心の繋がりを求める声も静かに広がり始めている。

教育は高度にシステム化されている。子供たちは幼い頃からVR学習システムを通して膨大な知識を詰め込まれる。VR学習システムは個人の学習能力や理解度に合わせて最適な学習プログラムを提供する。子供たちはVRヘッドセットを装着し、仮想現実の世界で、歴史、科学、数学、語学など、あらゆる科目を学習する。VR学習システムは効率的に知識を習得できる一方で、子供たちの個性や創造性を奪ってしまうのではないかという懸念も存在する。

サクラは、10歳の少女。ネオ・トウキョウにあるエリート養成学校に通っている。エリート養成学校は将来のリーダーとなる人材を育成する特別な学校で、入学には厳しい選抜試験を突破する必要がある。幼い頃から英才教育を受けてきたが、VR学習システムにほとんど興味を示さない。いつも空想にばかり没頭する。授業中にもかかわらず、窓の外を眺め、飛行船が行き交う空や人工的に作られた庭園の緑を眺めては自分の世界に閉じこもる。社会のシステムに馴染めず、周囲から浮いた存在だ。

夢の中で見た「緑の星」に強い憧れを抱いている。一面に緑が広がり、青い空と白い雲が広がる美しい星。夢の中で、その星で自由に走り回り、動物たちと戯れ、自然の中で生きる喜びを感じる。夢の中の緑の星は、安らぎと希望を与える場所だ。

現実のネオ・トウキョウに緑はほとんど存在しない。街はコンクリートと金属で覆われ、自然は人工的に管理された庭園の中に限られる。庭園は遺伝子操作によって作られた植物で彩られ、本物の自然とは程遠い。夢の中で見た緑の星こそが本当の故郷なのではないかと感じる。都市の無機質な風景に息苦しさを感じ、自然への憧れを募らせる。

学校で教えられる歴史や科学の知識には全く興味がない。歴史は過去の失敗から学ぶためのものではなく、現在の優位性を証明するための道具として教えられている。科学は人間を支配し、管理するための技術を生み出すためのものであり、自然を理解し、共存するための学問ではない。世の中のシステムやテクノロジーに疑問を抱き、人間本来の生き方とは何かを模索する。夢の中で見た緑の星にその答えがあるのではないかと信じている。

ある日、図書館に足を運ぶ。図書館は、過去の遺物を保管するだけの施設で、ほとんどの人々はデジタルアーカイブセンターで情報収集を行う。図書館を訪れる人は少ない。図書館の奥深く、埃をかぶった書棚の中でサクラは偶然古い本を見つける。21世紀に書かれた「地球の自然」という本だ。本にはかつて地球上に存在していた広大な森林や海、多種多様な動植物の写真が掲載されている。その写真を見て息を呑む。夢の中で見た緑の星はかつての地球の姿だったのだ。

地球の歴史を学ぶことで、人間が自然と調和して生きていた時代があったことを知る。人々は自然の恵みを受けながら、自然を畏敬し、共存していた。産業革命以降、人間は自然を破壊し、資源を浪費し、環境を汚染してきた。その結果、地球温暖化、資源枯渇、生態系の破壊など様々な問題を引き起こし、最終的には大転換期と呼ばれる世界的な混乱を招いた。失ってしまった大切なものに気づく。それは自然との共存、人間らしさ、心の繋がりだった。

学校の授業をサボり、図書館に通い詰めるようになる。地球の歴史、生物学、環境学などあらゆる分野の本を読み、知識を吸収していく。過去の地球の環境問題や人々の自然との関わり方について学び、問題点と共通点を見出そうとする。かつて地球上に存在していた豊かな自然を取り戻したいという夢を抱く。この現実に疑問を抱く彼女にとって唯一の希望だった。

学校の友人たちに自分の夢を語る。友人たちは考えを理解できない。彼らは現在のシステムの中で生きることに満足し、自然への憧れなど持っていない。VRゲームやホログラム映画といった仮想現実の娯楽に夢中で、現実世界の環境問題に関心を持つことはない。

孤独を感じる。自分だけが異質な存在であるかのように感じる。でも諦めない。夢の中で見た緑の星を実現するために、世界を変える方法を見つけようとする。たとえ一人でも、自分の信念を貫く決意だ。

インターネットで情報を収集し、環境保護活動をしている人々と繋がる。インターネットは政府によって厳しく管理されているが、地下組織が運営する秘密のネットワークも存在する。そのネットワークを通して環境問題に関心を持つ人々と連絡を取り合い、彼らの活動に参加するようになる。彼らの活動を通して環境問題について学び、具体的な行動を起こすための知識を得ていく。

まだ幼い少女だが、心の中には未来を変えるという強い意志が芽生えている。夢の中で見た緑の星を現実にするために活動を続けていく決意をする。たとえそれが険しい道であろうとも、決して諦めない。

学校の屋上からネオ・トウキョウの街並みを眺める。灰色の空の下、コンクリートジャングルが広がる。いつかこの街に緑が戻り、人々が自然と調和して暮らせる日が来ることを信じている。心の中には未来への希望が灯っている。未来を変えるための小さな灯火だ。


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