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要求工学プロセス標準
ISO/IEC/IEEE では,ステークホルダ要求仕様,システム要求仕様,ソフトウェア要求仕様を作成するステークホルダ要求工学,システム要求工学,ソフトウェア要求工学からなる3段階の要求工学プロセスを標準化している.
ステークホルダ要求仕様の記述項目は,図1に示すとおりである.
まず,「はじめに」で,ビジネスの目的,ビジネスの範囲,ビジネスの概要,ステークホルダを明かにする.
「ビジネスマネジメント要求」で,ビジネス環境,ゴールと目標,ビジネスモデルを記述する.
「ビジネス運用要求」で,ビジネスプロセス,ビジネス運用ポリシーと規則,ビジネス運用制約,ビジネス運用モード ,ビジネス運用品質,ビジネス構造を記述する.ここで,運用モードというのは,システム運用状態のことである.
「ユーザ要求」で,ユーザ入力,システム出力,相互作用条件などを記述しユーザインタフェースを記述する.
「提案システム概念」で,システムの運用概念と運用シナリオを記述する.
「プロジェクト制約」で,経費と納期を記述する.
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このように,ステークホルダ要求仕様では,ビジネスの目的,ビジネスモデル,ビジネスプロセスを明かにすることが求められる.したがって,ステークホルダ要求仕様を作成することで,DXで必要となるビジネスモデルとビジネスプロセスを明かにすることができる.
DXでは,アジャイル開発が必要だから,要求仕様を定義するのは意味がないと考える人々は,このステークホルダ要求仕様のことを知らないのではないか.ビジネスの目的,ビジネスモデル,ビジネスプロセスを明確にしないままDXを推進するのは難しいとも思われる.