【グループ通算制度】住民税の欠損金②(加算対象被配賦欠損調整額)について解説
前回の続きで第2弾です。今回は「加算対象被配賦欠損調整額」について解説します。
1.(再掲)グループ通算制度下の住民税の計算方法
グループ通算制度は、連結納税制度と同様、地方税には適用されず、住民税は単体納税を前提とした税額計算が行われます。
一方で、住民税額は算出された法人税額をベースに税額計算がなされるため、グループ通算で計算された税額に一定の調整を行った後に税額計算を行う必要があります。
具体的には、他の通算法人から使わせてもらった欠損金や他の通算法人に使わせた欠損金などの影響をなかったことにする調整が行われます。これによって単体納税と同様の結果となるように税額が計算されることとなります。
計算式で表現すると以下の通りです。
住民税額=(グループ通算制度で算定された法人税額+加算調整額-減算調整額)×住民税率
2.(再掲)各調整計算
住民税額を計算するにあたっての加算調整額と減算調整額については、以下の通りとなります。今後、これらを数回に分けて解説したいと思います。
【加算調整額】
①加算対象通算対象欠損調整額・・・第1回にて解説
②加算対象被配賦欠損調整額・・・本稿にて解説
【減算調整額】
①控除対象通算適用前欠損調整額・・・連結納税制度の「控除対象個別帰属調整額」に相当
②控除対象通算対象所得調整額・・・第3回にて解説
③控除対象配賦欠損調整額・・・第4回にて解説
3.加算対象被配賦欠損調整額とは
加算対象被配賦欠損調整額とは、通算グループ内で繰越欠損金の通算が行われた場合に、他の法人の繰越欠損金を自社で利用し損金算入した金額(被配賦欠損金控除額)に法人税率を乗じた額をいいます。住民税は単体納税が前提となりますので、国税で損金算入されてしまった他社の繰越欠損金を加算することでなかったことにしているイメージです。
加算対象被配賦欠損調整額=被配賦欠損金控除額×法人税率
4.計算例
数字例でみてみましょう。
まずは例によって、単体納税の場合の住民税額の計算です。なお、繰越欠損金は100%使用できることを前提とします。
X1年3月期では1.2、X2年3月期では3.6の住民税額が発生していることを確認します。
では、グループ通算制度のケースではどうなるでしょうか。上記の計算に欠損が発生しているB社を追加して考えてみます。
X1年3月期はグループ通算の結果、B社の欠損金のうち、50がA社に使用されております。これを加算対象通算対象欠損調整額として住民税の計算上加算することで、単体納税と同様の結果(1.2)となることは、前回説明した通りです。
では、繰越欠損金が使用される翌年度はどうなるでしょうか。
X2年3月期では、X1年3月期に発生した繰越欠損金50をA社とB社の所得金額でプロラタ計算をして各社に配分しております。A社は繰越欠損金のうち、30が配分され、損金算入されております。
一方、単体納税を前提とする住民税の計算上、B社の繰越欠損金30を使用した事実は排除する必要があります。これを調整しているのが、(C)の加算対象被配賦欠損調整額(30×23.2%=7)となります。こちらを法人税額に加算することで、X2年3月期も単体納税と同様の3.6の住民税額となります。
5.連結納税制度との比較
では、従来の連結納税制度の場合はどうなるのでしょうか。4.と同様の数字例でみてみます。
連結納税制度では、グループ通算制度とは異なり、B社で発生した欠損金はB社に個別に帰属する欠損金となり、X2年度で使用される際もA社に別途帰属させることはしておりません。あくまで全体で所得計算を行っているという発想のためです。
そのため、A社の住民税の計算は単体納税の時と同様となり、特段調整は発生しません。
以上のことから、加算対象被配賦欠損調整額は。グループ通算制度特有の調整項目であり、配分(プロラタ)計算を行うことによって生じた新たな概念となります。
6.総括
ここまで、加算対象被配賦欠損調整額について解説しました。性質は第1回の加算対象通算対象欠損調整額と同様で、グループ通算特有の項目となります。
シンプルに表現すると
・加算対象通算対象欠損調整額=当期に発生した他社の欠損金を自社で利用したもの
・加算対象被配賦欠損調整額=過去に発生した他社の繰越欠損金を自社で利用したもの
とまとめることができます。
次回に続きます。