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言葉にしなきゃ

思っていることを上手く言葉にできなくて、代わりに涙が出てきてしまう。

「しゃべる」ことへの苦手意識は、小学生の頃からずっとあった。
学校でせっかく友達ができても、自分から話題を作ることができなくて、話しかけてもらえるのを黙って待っているような子どもだった。

そのくせ、家に帰ると突然ものすごいおしゃべりになって、母にも、弟にも、近所の友達にも、うるさいくらいよくしゃべっていた記憶がある。その日あった出来事、好きなマンガやアニメの話、突然思いついたアイデア……。話すことは山ほどあった。まるで、学校では話すことが禁じられていて、家に帰るとやっと解放されるのだというように。

でももちろん、話すのを禁じられていたなんてことはなく、誰かに話しかけられれば少しは話したし、話さない代わりにわたしはよく笑っていた。みんなが笑わないような些細なことで笑い、変なタイミングで笑い、思い出し笑いなんかもよくあった。

誰もわたしに話すことを強要しなかったし、黙ってるのは変なことなんだよ、なんて言わなかったから、いつの間にかわたしは、無口だけど喜怒哀楽は分かりやすく表に出す、そんなめんどくさい人間になっていた。

幸いなことにそんなんでも仲良くしてくれる友達はいて、学生時代はそれなりに楽しく過ごし、接客業のバイトをしたりしていく中で、だんだん人とまともに言葉でコミュニケーションを取れるようになっていった。

おしゃべりが下手だったくせに販売の職に就いたりして、お客さんと話すことを楽しいと思えるようにまでなっていた。

それでも、わたしは未だに「感情の言語化」が苦手だ。自分が思っていることを言葉にする前に、いつもこう考えてブレーキをかけてしまう。「こんなこと言ったら、相手はわたしのことをどう思うかな?」

それは確かに、場合によっては必要な気遣いだけど、わたしはいつもこのブレーキに邪魔をされる。分かり合いたいと思っている相手にすら、このブレーキをかけてしまう。

そして、もっと始末の悪いことに、ブレーキをかけて呑み込んだ言葉は、胸の中にしまい込まれるわけではなく、涙になって目から零れてきてしまう。

言葉にして伝えてしまえば一瞬だし、相手にとってもわかりやすいし、自分もスッキリする。分かっているはずなのに、自分の中の大事な感情を言葉にしようとすると不安で、胸がドキドキして、怖くなってしまう。

良く言えば「気遣いができて調和を守れる人」かもしれないけど、率直に言えば「周りの目を気にしてばかりで自分の意見がない人」。そんな自分を変えたいと思い続けているけど、どうしても自分の発言に自信が持てない。

わたしは間違うし、忘れるし、勘違いするし、知らないことがたくさんある。それを分かっているから、何か言って「バカだな」って思われるのが怖いから。怖がりすぎているのだろう、必要以上に。

早いもので、もう少しで今年も終わってしまう。ハロウィンが過ぎたら、町はもうクリスマスの準備を始めている。わたしが働くお店にも、先日クリスマスツリーが飾られた。今年も、わたしは言葉のブレーキにずっと足を置いたまま来てしまった。そのせいで人に迷惑をかけたし、自分も辛い思いをした。

いい加減、このブレーキから足を離さなければいけない時期に来ていると思う。自分の簡単な気持ちすら言葉にできなくて、どうやって何かを成し遂げるというのだろう。

我慢することも、周りに気に入られようとワガママを押し殺すことも、もうやりすぎなくらいやってきたから、そろそろそんな振る舞いから卒業したい。

この一年間の自分と、来年の自分、比べたときに、ちゃんと自分に自信を持てるようになったと、ちゃんと思いを言葉にできたと、晴れやかな気持ちで言えるように。

力を抜こう、わたし。もっと言葉にしなきゃ。

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