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問題解決が好き。科学はどこからでも真理にたどりつける。専門性にこだわりすぎずチャレンジし続けたい。

今回インタビューにご協力いただいたのは、味の素株式会社のアドバイザーを務められている木村毅さん。味の素社と並行しながら、機能性素材等に関するアドバイザーとして他の企業のプロジェクト支援に携わっています。

外の企業で仕事をする面白さややりがい、また外部人材として働くうえで気を付けていることなどをお伺いしました。

※本記事は2021年6月に行ったインタビュー内容をもとに作成しています。木村さんは味の素株式会社のアドバイザーを6月末に退任し、同アミノインデックス事業部のコンサルタントとして一部の仕事を継続されます。また、今月より森村商事株式会社の特別技術顧問に就任されました。月10日ほどの顧問業務の傍ら、現在受けている複数の仕事は継続。また今後も可能な範囲で他の仕事も受けていくご予定です。

【RDエキスパート:木村毅さん/インタビュアー:RD LINK三浦】

【プロフィール】
幼少期から親の仕事の関係によりアメリカとイギリスで生活。1975年ロンドン大学キングズカレッジに入学し分子生物学及び細胞学を学ぶ1984年6月同大学博士課程(生化学)修了。同7月米国国立衛生研究所入所。
1989年に帰国し、味の素株式会社に入社。2005年7月品質保証部長、09年6月執行役員、10年10月研究開発企画部長、13年6月取締役常務執行役員を歴任し、2019年6月から2021年6月までアドバイザーに就任。
食品添加物協会会長、健康食品産業協議会など多数の外部団体の活動にも従事。品質保証をメインキャリアとしながら、研究開発や知財関連など多岐に渡る経験を持つ。
RD LINKからは、機能性素材のエキスパートとして高齢者向栄養関連のプロジェクトに携わったのち、現在はまた別の企業で遺伝子組み換え微生物を利用した機能性成分の開発を支援中。安全性確認や国内外の許認可方法に関するアドバイスを実施している。

短期のプロジェクト支援は自分の経験値と対応幅を広げるのに良いと感じる

木村さん写真

- 味の素社のアドバイザー時代からRD LINKの案件に参画いただいていましたが、どのような経緯で業務委託という働き方を始めたのですか

味の素でアドバイザーといういわゆる顧問のような立場になったのですが、アドバイザー契約は2年間で兼業も認められていました。そこで、人生の次のフェーズも含めて色々布石を打っておこうとは思っていました。

実際に外で他の仕事を受ける最初のきっかけはRDサポートさんですね。RDサポートさんとは味の素時代から接点があり、セミナー講演などで協働することもありました。そのご縁でRD LINKから高齢者栄養のプロジェクト案件を紹介いただいたことが最初のきっかけだったと思います。今はもう1社他のエージェントにも登録しています。

- 現在は何社で働いているのですか

RD LINKさんからは最初のプロジェクトが終わって、今2社目ですよね。それ以外に別のエージェント経由でベンチャー企業の学術関連の仕事を請け負っています。あとは直接個人で打診を受けている案件もあります。

- 弊社からの案件は月に1日という契約内容ですが、全体的な日数としては月間でどれくらい働かれているのですか

今までに受けているものは大体月に1回ペースですね。

現場に張り付いて指導をするという仕事ではないですし、ある程度アドバイスをさせていただき、それを受けて企業側にも検討実行する時間が必要になるので、大体月に1回というペースになります。私自身も今はそのぐらいの方が都合良いですね。

それで数日の稼働になりますが、あとは味の素や外部団体の仕事が不定期にあるのでその月によります。

- 木村さんのご経歴だと直接仕事の声もかかるのではないかと思いますが、そのあたりいかがでしょうか

まだ味の素との契約もありますから、直接雇用というのは無いですね。当面はスポット的な短期のプロジェクトで回していくのが、私の経験値を上げ、対応幅を広げるという観点からも良いかなと思っています。

例えば、もう少し収入を増やしたいとか経験を積みたいと思えば契約を増やすこともできますが、そうなるとやはり「本当に回るかな?」「成果を提供できるかな?」などキャパシティの問題が出てきますよね。

- そうですね、自分のスタイルに合わせて働き方を決められるところが複業の良さだと思います

そうですね。もう少し慣れてきて自分でもオーガナイズできるようになったら増やしてもいいかなと思っています。

ちょうど先週、食品添加物協会は退任となりましたし、他の団体活動からも徐々に外れ始めています。味の素のアドバイザー契約も今月で終わりなので、そうするとまた自由度が増すと思います。

外の仕事でも経験と知識の応用で意外と対応できるという新しい発見

木村さん写真2

- 他の企業のプロジェクトに入って良かったことはありますか

私にとってもいろいろ勉強になります。自分の知識を活かせると言っても、全く同じことをしたことは無いわけです。

R&Dの仕事では往々にして「私のスペシャリティはこれですから」と限定してしまうことが多いと思います。一方で、どんな技術でも突き詰めれば原理原則みたいなものがあるので、そこを分かっていれば応用が利くわけです。

だから自分で色々な知識を得てみて「根本原理に基づいて考えたらどうなのだろう?」と考えてみたら、直接の経験が無くても意外と対応できるものだなと知ることができましたね。

アドバイスが適切だったかどうかはクライアントからはフィードバックをいただいて、初めてわかることですが(笑)直接の経験が無いなりに提案したことが合っていたとか、うまくいったというフィードバックがいただけると自分自身の新しい発見になりますね。

-なるほど。必ずしも「経験を活かす=求められる経験を持っている」ではなくても、できることがあるのですね

クライアント企業の研究者も色々やってみてデータを出してくるわけですが、なぜそうなっているのかが分からないということがあります。そこを物性なり分子の繋がりを考えることによって、結構解析できることもあるんですよね。自分の知らない領域でも論文をたくさん検索してこの辺が当たりじゃないかな、という見当は付けられます。

- すごい!どうやって調べるんですか!?

そこはやはり一つの技術です。検索技術。日本語だけでなく英語の論文もたくさんあるので、そこをうまく当てていくという感じです。検索技術というのはかなり重要だと思いますよ。データを集めるのに適切なキーワードは何かということと、それで見つからない場合はどうやって幅広く網をかけるかということですね。

これまでも自分が研究をする上では、似たようなことをやっている人が居ないか、誰が何をやっているのかということを知っておかないと、先を越されて論文が出せないなど困ることがあるので、検索して情報を調べることは常に必須でした。

科学者の習性として、それを基本動作として当たり前にやるということだと思います。

- まさに経験値ですね!

RD LINKのマッチング案件は自分のアンテナでは引っかからない

- RD LINKを活用して良かったと感じることはありますか

まず、他のエージェントとの違いとして、技術系に特化しているという点は技術人材としては非常にプラスを感じます。全般的な職種に対応しているエージェントでは、本人の知識や技術よりもコネクションへの期待が大きいように感じますが、RD LINKさんはそうではない。

退任した人が海外の会社の顧問になって技術だけ盗られてバイバイというケースも聞きます。その点ではエージェントを介する安心感はありますね。

あと、人脈を頼って色々なところに自分から営業かけるのが苦手な方にもこういうシステムはありがたいですよね。

- 営業活動の部分では他のエキスパートの方々にも助かると言われます。お話いただいた活用メリットも今後PRしていきたいと思います!

何より、先ほども話しましたが、やはり皆さん、特に技術系の人は自分を絞りすぎてしまっているところがあると思います。どうしても「自分の専門性はこれです」「これ以外できません」みたいに狭くなっている場合が多いと思います。

その視点で仕事を探すとどうしても狭い範囲での仕事になってしまいますが、RD LINKさんを介すと自分では考えていなかった視点で仕事がマッチングされます。それは結構面白い。

私も幅広い仕事をやってきたので、ピンポイントでマッチしなくても、色々とできることはあるのではないかなと思っています。欲を言えば、仕事のリストが合って自分でチョイスできるようになるともっと嬉しいかな。

- 仕事に立候補いただける仕組みは私もあったらいいなと思っています。まだシステムや情報管理上の問題が色々あるので時間はかかりそうですが、今後の参考にさせていただきます。

私たちも自分でチョイスするには先ほどの狭い専門性から抜け出すことが必要です。自分の仕事をしている時にイマジネーションがあるかどうか、つまり仕事をしている時に「これはこういうところにも当てはまるな」とか「基本的にこの根底にはこのメカニズムで・・・」など絶えず考えていることは大事だと思っています。

日本の研究者はまじめな方が多いと思います。例えば科学というのは本来どこからでも真理にたどり着けるんですよね。でもなんとなく「私の研究はここまでのことしか言えません」という形になってしまい、自分で自分を型に入れてしまっているところがあると感じます。

本来であれば、このデータならこうかもしれない、あれもああかもしれない、というところまで考えてやってもらえたらいいなと思うし、自分自身はイマジネーションを働かせながら取り組んできたつもりです。それが科学者かなと考えています。

複業は新しい惑星で宇宙人と働く気持ちだと入りやすい

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- 外部人材という立場で働くうえで、気を付けているポイントなどはありますか

クライアントのやりたいことへの理解を示すことと、アドバイスに対する先方の理解レベルを把握しながら話を進めるということですかね。

例えば、各社で投資規模も違えばニーズも違ってきますし、できることも違ってきます。そこに合わせたアドバイスをどのようにするかということが大事ではないかと思います。

逆に味の素のような大企業でも、もっと小回りがきけばいいのにということもあるわけですけど。だから逆に今そういうことができることが、すごく楽しいんですけどね(笑)

- なるほど。味の素社では味わえなかった別の面白さがまたあるのですね

あとは、私が海外で教育を受け仕事をした者として味の素に入社した時の経験からですが、外から入る場合は新しい惑星に行って宇宙人と働くという感覚でスタートしたほうが分かりやすいと思います(笑)

当時も「アメリカではこうやっているのに日本はどうしてダメなんだ」という雰囲気を見せると反発を買ってしまう。転職や複業にもそういうことはよく起こると思います。でもへりくだりすぎてもダメ。私の場合は自分なりに"仲間だけど違う"というポジショニングを確立しました。

なので先入観を持たずに、全く違う惑星に来たつもりで共通言語を探しながら話をしていくと良いと思います。それが先ほどの相手の理解レベルに合わせて話をするということにも繋がります。

アカデミアから企業の役員、ここからは個人としてチャレンジ

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- 今後やってみたいことや目標はありますか

色々ありますよ!やり残したことはありませんが、やりたいことは色々あります。

60歳を迎えた時に、90歳の父親に「次の30年どうするんだ?」と言われたんですよね。それで「そうだよな、リタイアするわけではないよな」と次の30年を考え始めました。私は32歳までアカデミアで研究していて、その後味の素で32年勤務しました。次の32年間を見るには今ちょうどいい機会です。

一方、いつまでも労働をしているわけにはいかないと思いますので、もう少し投資利益だけで生計を立てられるようにしたいとは思っています。まだそこには至っていないですし、まだまだやりたいこともできることもあるので、もう少し色々やってみようかなと思います。

- どんなことをやってみようと考えているのですか

私は基本的に問題解決が好きなんですよ。働き続けることで、そのチャレンジが絶えずあるというのは自分のためにもいいし、私にとっては今までやってきたことだけの延長という風じゃなくていいと思っているんですよ。

もともと味の素に入社する時も研究でなくてもいいと言いました。あまり専門性にこだわってしまっても、一生事業に関わらずに終わってしまうというイメージもあったので、こだわらずにやろうと思いましたね。過去にやっていた研究を引き続きやりたいというのは全く違うと思ったし、全部の分野で自分の能力を最大限使えればいいと考えました。

ですから今でも、色々な企業のニーズがあって、それに自分が応えられるかというチャレンジをしていることが非常に面白いですね。

- これまで味の素に勤めていらっしゃいましたが、企業側として研究開発分野の外部人材活用は広まっていくと思いますか

思います。外部の知見を入れたいという目的の活用もあれば、研究予算が絞られることによって外部人材に頼らざるを得ない環境になってくるという流れもあります。

今後日本でも全部外に出すかは別として、社内だけでカバーしようとする動きはなくなってくるのではないかなと思います。

- 確かにR&D人材の採用コスト面でも困っている企業は多くあります。外部人材をうまく活用することでコスト面でも開発面でも課題がクリアできると良いです。

その場合の問題は、やはり正社員化と秘密保持でしょうね。活用している企業では優秀な人材であれば正社員化したいと思うでしょうから、自社の社員を送り出している企業は引き抜かれないか心配ですよね。

私は、本来であれば手を動かす人材と考える人材は別ポジションで考えた方が良いと思っています。技術者で多くの実験を行ってデータを出してくれる方であれば派遣社員などでも良いと思いますが、新しいものを考えて創り出す場合には知財の帰属先をどうするかという話も出てきます。

多くが契約で知財はスポンサーである企業側に帰するとして進めていくのが実態ではありますが、そのような一番クリエイティブな部分で外部の方にお願いする場合は慎重に進めなくてはいけません。

- 勉強になります。そのあたりは弊社のようなエージェントが入って契約を交わすことでリスク回避を強化したいと思っています。

エキスパート側としてもそこはセンシティブなところですよね。既に外部発表していることなのか、言えること言えないことはきちんと自分の中で気にしながら話さないといけません。

-もっと個人も企業も安心して研究開発分野の人材シェアリングを活用してもらえるようにしていきたいです。本日はありがとうございました!

RD LINKでは引き続きエキスパートの方にインタビューを行い、それぞれの働き方・生き方をご紹介していきたいと思います。

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