見出し画像

様々な人や開発テーマに触れ、会社では得られない面白さと充実感がある。

今回インタビューにご対応いただいた長島さんは、化学メーカーを退職され個人事業主として発酵技術に関するアドバイザーとして多数の企業のプロジェクトに参画されています。複数の企業で仕事をする面白さややりがい、また外部人材として働くうえで気を付けていることなどをお伺いしました。

【RDエキスパート:長島直さん/インタビュアー:RD LINK高本】

【プロフィール】
30年以上に渡り、麹菌や担子菌などの糸状菌、サッカロマイセス、ヤロウィニア、キャンディダなどの酵母菌、納豆菌やアミノ酸生産菌などの好気性細菌、脂肪酸を生産する微細藻類、乳酸菌や嫌気度の高い環境で生育するビフィズス菌など様々な菌株の最適な培養条件を確立し、様々な物質の生産およびダウンストリーム工程の確立に従事した。
研究開発、さらにはビジネスの成否は人材の育成が最も重要であるという信念のもと、技術的な課題解決という視点だけではなく、顧客の将来的な発展を担うバイオ技術者の育成を含めた支援に取り組んでいる。
RD LINKからは、天然資源の有効活用において試験管レベルから量産化に向けたプロジェクトに携わっている。

まずは信用してもらう。全てはそこから。

画像1

-現在RD LINK経由でもプロジェクトに参画いただいていますが、何社ほどの企業様と契約されているのでしょうか

5、6社ですかね。

-各社との打ち合わせの頻度など、具体的にどのようなスケジュールなのでしょうか

基本的には各社毎月1回~2回ほどです。それ以外にもリモートで対応というものが発生することもありますが、私は基本的に訪問しての仕事が多いですね。若手技術員への技術指導を行っていますので。そのため現場を見ないと細かな点がわからないのです。しかし、RD LINK経由で対応しているバイオベンチャー企業の月に10日間という稼働の多さは異例です(笑)。

-訪問にあたり準備に充てる時間はどの程度なのですか

私はあまり時間をかけていません。半日くらいですね。基本的には現場で観察しながらの指導となります。ただし、テーマの背景は文献で下調べはします。

-外部人材という立場で仕事に関わることになり、会社員時代とは違って心掛けていることや気をつけていることはありますか

基本的に現場の技術者に私の言うことを聞いてもらえないということを前提として、聞いてもらうためにはどうしたら良いかなと考える点では、会社員時代よりは気を遣っているかもしれません。あとは現場の若手社員が言えないことを上長に具申することを意識しています。

-それは外部人材だからということですか

そうですね。外から来ている私の意見、コメントを最初からウェルカム的にみんなが聞いてくれないですよね(笑)

組織人は常に評価されるのを気にしています。従って評価者に対しては反対意見をあまり言わないですよ。いわゆる保身的忖度です。だから代弁し、仕事の環境を整えるということを行います。それにより技術者の味方だと思ってもらいます。まぁ、私自身が長いものに巻かれるのが嫌いですからね(笑)

-なるほど。聞いてくれないことを前提としているから、会社員時代よりもタイミングをみたりするのですね

そうですね。タイミングもそうですし、「この人の意見、コメントは聞く価値があるな」と思ってもらうためにはどうしたら良いかとかね。まずは信用してもらわなきゃいけないわけですよ。

-信用してもらう。大事なキーワードな気がします

RD LINK経由で仕事をさせてもらっているクライアント企業では、最初の3ヶ月契約の中で、初月に5日間、そのあとは月に10日間訪問していますよ。何のために時間をかけているかというと、お客様に「この人はちゃんとやってくれる!」と思ってもらい、技術者には「この人は味方だ」と思ってもらう。そのようにして私の話に耳を傾けてもらえるための信頼関係を構築します。

「この人はやってくれる。信頼できる。」と思ってもらえたら、そのあとは月に1回の指導でも効果が出てくる。最初から月1回程度のスタートですと、信頼感ゼロで進行するわけですから、私が指導する効果は出ないか、かなり時間がかかります。

-弊社からのケースの場合は理解したのですが、最初から月に1回という契約の所もありますよね?その場合はどうされるのですか

月に1回などの場合は、雑談や私の失敗談を語るなどコミュニケーションをとるため極力1日中ベッタリいますね(笑)指導が済んだらサッと帰るということはしません。

-”今までの人間関係がないところに入る”ということを理解して、最初は関係構築が重要ですね

そうですね。「この人はどんな人だろう」というところからですから。技術的な部分なんてどうでもいいですね、業務委託という仕事は信頼関係がなければ絶対にやれない仕事ですよ。

各社の難題に携わる面白さと、求められる充実感がある。

画像2

-今の働き方の面白さややりがいなどは何かありますか

自分が対応している人のレベルが上がっていくのを見るのはやりがいかな。楽しいですよ。また、彼らに負けないように自分もレベルを上げなきゃ、と感じるところでウキウキしたりします。

-企業でも部下のレベルを上げるということはできると思いますが、複数企業で働くことで何か違いはありますか

基本的には同じですが、ステージやテーマが違ったり、色々な難題に携われるという面白みはありますね。あとは求められているなという充実感がありますよね。部下の場合は毎日顔を合わせるため指導がマンネリ化することがあります。

-求められている充実感というのは大きいですね。ちなみに、長島さんが独立しようと思われた理由はどんなことだったのですか

組織は面白くないですよね(笑)どうしても自社の利益や守ることを一番に考えた指示が降りてくることが多くあります。企業なので仕方のないことではありますが、もっとお客様を含めたみんなが上手くいくようなやり方を考えたいという思いがありました。

これまでは生活のためというところもありましたが、50歳を過ぎてからは自分でやってみたいなとずっと思っていました。まぁ今回は他にも色々な要因が重なりました。もっと前にやっていたらうまくいっていなかった、かもしれません。最終的には神様のお導きですね(笑)

何年も企業で働いてきて、周囲からの色々な信頼を感じられるようになってきて、そろそろやれるかなと思う時ってあると思います。根拠はないけど第六感みたいな感じです。

-50歳というのはご年齢やポジションが変わった時期など、何かの節目ですか

50という数値的なものではなく、ある企業で役員をやっていたのですが、現場ではないので面白くないんですよね。やっぱり色々な人と接し、微生物を五感で感じたい、と思いましたね。

特に部下が成果を出せないときなど歯痒いです。ということで役員は4年で辞めました。役員をやるのであれば代表にならないと面白さは感じないのではないでしょうか。

-開発職の方は現場が好きという印象を受けます

まぁそれはわからないですけどね。肩書がほしい方ももちろんいると思います。ただ私は名刺に肩書を入れたことがありません。最初の会社の頃から肩書や看板で見てほしくなかった。若い時からずっとそうだったので、昔から帰属意識はというものはなかったかもしれないですね。

-外に出るというのは長島さんの本来の仕事観だったのかなと思いますね

求められる、必要とされることが重要ですね(笑)。求められてなんぼじゃないですか。

-同じように開発などの技術を持っている方が、他の会社で求められる人材になるためのポイントはどんなところだと思いますか

それは実力をつけるしかないですよね。成果やポジティブな結果を出せる実力ですね。成果を出すと周囲からの自分への評価良くなります。そうすると自信が付きます。自信が付くと言葉の端々に出てきます。

加えてより謙虚な言動をとることができれば評価はさらに上がります。一方自信が過信に変わり、横柄な言動になる人がいます。これは最悪で、求められる人材ではなく不要な人材となります。

依頼内容からポイントを掴めれば複業は難しくない

-理系職の外部人材活用では、企業から秘密保持面の懸念を持たれることが多々あります。複数の仕事を掛け持ちされることで、長島さん自身もリスクは大きくなるかと思いますが、どのようにお考えですか

開発にはその開発のポイントというものがあります。そのポイントを口外しないことが秘密保持ということです。

今も何社か並行していますが、今の時代テーマ的にはどこの企業も似たようなテーマとなりがちです。しかし、それぞれの会社でテーマのポイントが違います。もし、ほとんど同じの場合は業務委託を受けません。

まずはお客様の依頼内容をお聞きし、検討内容をイメージ化します。その際に検討のポイントを掴みます。例えば生産物が同じでも使用する微生物が異なるとか、使用する微生物は同じでも生産物が異なるとか、ターゲット物質は同じでも生産の検討か、精製の検討かで異なるかを確認し、秘密保持契約に落とし込みます。

ただその場合は秘密保持の範囲を大まかなではなく、ポイントを押さえた秘密保持内容とします。ここを明確にしておかないとトラブルのもととなります。

-今までのご経験から開発の際の重要なポイントがわかる、漏らしてはいけないポイントが感覚的にわかるということですか

はい、わかります。昔から「この仕事のポイントは何か」と常に考え、それをイメージ化するようにしています。何をするにしてもポイントがあるので、そのポイントを早く掴みます。

秘密保持への意識的なところで言うと、私の場合は受託をやっていたので今も昔もほぼ同じですね。実務部分で言えば、会社員時代は自分の手足を使って実験をしていましたので、より細かなところまで詳細にわかります。

一方、今は実験していませんので秘密保持内容は詳細なところは含まないようになっているかもしれません。実験しない分、私に実感がないので指導は大変なのですけどね(笑)。秘密保持とは話がずれますが、自分で実験をしていれば、実感があるのでより的確に伝えやすいです。

-なるほど。重要ポイントに気付かないと企業だけでなくご本人が追うリスクも高くなりますね

そもそも仕事のポイントが掴めない人は成果を出せないと思います。バイオに限らず技術の仕事は誰もが踏み込んでいない領域で試行錯誤をしながら成果を出すわけです。ポイントが分からない人は試行錯誤もできないと思いますよ。

業務委託でも営業でも医療でも仕事ができる人は人の話をよく聞きます。質問攻めに、困っている課題の本質を掴むようにされていると思います。一方的にお話しされる方は成果が出ない、出るのに時間がかかると思います。

繰り返しとなりますが、課題の本質、ポイントを掴めない人は業務委託を受けない方がクライアント、コンサルタント双方に良いと思います。

企業は人なり。技術支援だけでは解決できない。

-お話を伺いながら長島さんは人材育成の点を非常に重視されていると感じました。企業からは技術的な課題解決をしてほしいというオーダーと社員教育をしてほしいというオーダーは別案件でいただくことが多いのですが、企業側から社員マネジメントは不要だから技術を教えてほしいと言われたりしませんか

まずお客様から依頼の内容をお聞きしながら、課題の本質を掴みます。成果が出ない原因は何か。仕事の環境なのか、技術者のレベルなのか、指導者の指導方法なのか、テーマ設定がダメなのか、テーマが経営のベクトルと合っているのかなど、あらゆる方向から分析します。

ある程度分析ができましたら、報告書の形で問題点を指摘します。技術的に問題があるのであればその対応策を、人的に問題がある場合はその旨の対策を伝えます。この時一番厄介なのは経営を含めた役職者の考えがずれている時なのです。その時はコミュニケーションをとりつつ多少時間をかけて伝えますが、変えていただくとこは難しいです。

具体的には技術者がいるのにうまくいかないというのは、技術者のレベルが低いからということになります。そうすると、その技術者のレベルを上げることが必要になり、レベルを上げるためには社員教育の基本的なところから始める必要があるというわけです。

経営の方が、その図式を分からないまま、技術的なことを指導してくれればいいのだよと言われた場合に、私がそれを受け入れて指示してしまうと技術者は「なぜそれをやるのか」ということが理解できません。

そういった場合は、その場はうまくいったとしても、私がいなくなるとまた他のテーマで同じことが起こります。そうならないためには人の育成しかないのですよね。ビジネスは人なり、企業は人なり、というのはそういうことだと思います。

-ただ技術を教えるだけではなく、クライアント企業で内製化ができる体制づくりをして去るというというのは、まさにRD LINKの複業のコンセプトですね!

そうです。本当は私の仕事はなくなっていいのですよ(笑)なくならないとその事業の成功はないです。私はあくまで黒子であり、現役をサポートする役割だと考えています。

私が不要になるというのは、その会社のステージが上がるということです。私が引き続きその会社でもう少し貢献したいとなると、私自身がステージを上げなければいけないということになる。

業務委託の仕事は技術者レベルのステージもあるし、モノを売るというマーケティングのステージもあるし、会社を経営するというステージもあります。たまたま私は全て経験しているので、基本的にはどのステージでも合わせられますが、足りないステージがあればまた自分を磨く必要がありますね。

現状に固執せず常に前を向いて次の仕事を見出す姿勢で。

-業務委託という働き方は、結果を出さないと次の契約に繋がらないかもしれないという点が大変かなと思いますがいかがですか

大変だとは思わないですね、当たり前のことだと考えています。大変というのは、クライアントから良い評価を得ることを主に考えているから思うことです。結果が出なくて1年間で終わってしまうかもしれないとかね。

私は今契約が終了しても構わないと思っています。それはクライアントの判断ですから。それよりも目の前の技術者をどう育てるかを考えています。成果は僕が出すわけではないですし。

次の契約が無かったら無いで仕方ない(笑)。ただ逃がした魚は大きかったと後悔してもらえるような何かを残すようにしています。

-すごいですね!

自営や個人事業主、また会社経営者などは現状の案件に固執するのではなく、常に前を向いて次の仕事を見出すことをポジティブ考えているのではないでしょうか。次の仕事や今後のことをネガティブに心配、不安に思う方は会社員として働いていた方が合っているかもしれません。

-そのマインドは複業のポイントかもしれませんね。とはいえ先々不安な方は多いと思いますが、長島さんが今の仕事が無くなっても大丈夫と言える背景には、何か意識的に取り組んでいることがありますか

もちろん仕事があって収入があったほうが良いですが、それが無くなるということはそれだけの努力をしていないからだと考えています。お客様がいなくなるのは自分が求められるレベルに達していないからであり、もう少し努力をしなければいけないという事だと思っています。

-なるほど。相手に求めてもらえるように自己研鑽を積むことで、仕事が続いていく仕組みを作れているということが、個人で働く場合は大事なのかなと感じました。

自己研鑽のベースは人間性を磨くということと、情報なり、成果なりのアウトプットが出せることが大事ですね。求められるのは技術力だけじゃないと思いますよ。技術が高いから仕事があるわけではなくて、そこには人間性がみられていると思います。

-win-winの関係ですね。

そうです。常に自分自身を俯瞰して見られるかが大事ですね。私の価格は基本的に市場価値で決まるわけですから。

お客様の成功を第一に考えて有言実行するのがプロ。

画像3

-会社員から個人事業主となり、今はどのように仕事を見つけているのですか

色々ですね。例えば昔から知っている設備メーカーの方がいて、その人が企業へ設備を納品された後、設備の使用状況で企業の課題を感じた時に私を紹介してくれるとか。そこで良い仕事をすると2回目があるのですよ。

-良い仕事をすると次に繋がるのですね

そうです。そのためにも私は基本1回が勝負だと思っています。

-RD LINKに登録するメリットはどんなところに感じていますか

お客様を探すための営業努力をしなくていいということですね(笑)。

-初めて複業をする方に、ここは気を付けた方がいいよというメッセージはがあるとしたらどんなことですか

複業をしようと思った動機は何かということですね。収入アップが目的だとうまくいかないと思います。

それが悪いことだとは思いませんが、どうしても思考の主が収入になってしまうと思います。お客様の成果については二の次なり、それはお客様にも伝わると思います。動機づけとしてはお客様の成功の一助になりたい、との考えが重要のように思います。

再雇用で給料下がるからその時のためにという話だったとしても、相手のお客様のことを主に考える人じゃないと多分うまくいかないのではないかな。

-今は組織=安定ではないため外にも出たほうが良いのでは、という形で登録される方も増えていますが、そういう方に伝えたいことはありますか

私はプロスポーツ選手になりたかったのですが、スポーツ選手は個人事業主で基本1年契約なのですよ。私は働く上ではずっとその感覚でいます。だから転職はフリーエージェントであり、1年目から結果を出さないと2年目以降の契約は無いという感覚で仕事をしてきました。

そういう感覚が良いかはわかりませんが、転職、就職してこれで安泰だ、と思うマインドでは複業はできないと思います。転職しテーマが決まった時、2年で成果が出なかったら退職しますと言って、自らを追い込んで1年半で結果を出しました。

-有言実行ですね。RD LINKからの複業先企業でも同様に宣言されていますよね

業務委託という仕事は有言実行しないと信用されないのですよ(笑)。プロは無言う実行では評価されません。

研究開発だとしても目標を数値で表して、それを期間内で達成するような働き方をしないと、今後は生き残れないのではないでしょうか。営業職には数値目標がありますが、R&Dはやってみないと分からないというのは、私から見れば甘えだと感じます。

-R&D部門で数値目標が置けるのですか⁉

数値目標は可能です。数値化されたゴールが決まり、そこに到達するまで何をやるかは分かるわけです。たとえ方法論で試行錯誤するとしても、いつまでにどこに到達(数値目標)するか、のスケジュールは立てられるはずです。

課題が難しかろうと優しかろうとマイルストーン形式で設定すれば良いのではないでしょうか。やる人はプロです。それくらいの課題がこなせなくては情けない。

技術開発はやってみなきゃわからない、ということで逃げていることが多いと思います。営業職の方だってやってみないと分からない、と言いたい人はいると思いますよ。

-アカデミアのような感覚では少し難しい感じということですかね

アカデミアはビジネスにおいては素人、つまりゴールまでの走り方を知りません。しかし、企業はプロの集団ですのでやってみなければわからないでは生き残れません。プロ集団として「やってやる」の気持ちで課題に対応するべきだと思います。たとえ新卒だとしても。

-最後にですが、この先やってみたいことや、こんな風に働いていきたいという理想はありますか

若い人たちが成長してくれる、もしくは関わった会社が発展していくとか、あの素材がこうなったのだということを感じられたらいいなと思いますね。私自身がどうなりたいかというのはないです(笑)。関わった人が自信を持って生きて幸せになってくれればそれでいい。

-若い方の成長に関われる仕事をしていくことが幸せなのですね

仕事においてその人の成長に関わっているということは、その人の人生に関わっているわけだからそれで充分です。ある人が言っています。お金を残すのは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上と。

-相手のことをどれだけ思えるか、人間力の重要性など、ビジネスにおけるヒントをたくさんいただきました。本日はありがとうございました!

RD LINKでは引き続きエキスパートの方にインタビューを行い、それぞれの働き方・生き方をご紹介していきたいと思います。

▽▼エキスパート登録にご興味のある方はコチラ▼▽
https://rdlink.jp/

▽▼法人の方はコチラ▼▽
https://rdlink.jp/biz








いいなと思ったら応援しよう!