見出し画像

地域安全学会研究発表会(秋季)の一般論文に投稿しました!

こんにちは!一般社団法人RCFの井口です。このnoteで、RCFが取り組んでいる社会課題の分野のうち、防災分野での取組みを紹介しています。

前回は、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」事業にて実施している、災害発生直後の「プッシュ型支援」を支援するシステム開発について書きました。

今回は、このSIP事業の一環として地域安全学会に一般論文として投稿した論文についてご紹介したいと思います。投稿した論文は地域安全学会の梗概集でもお読みいただけます。

論文の目的

国がつくる首都直下地震や南海トラフ沖地震といった大規模災害の具体計画なかで、被災地の物資ニーズを把握する前に最低限の物資を送る「プッシュ型支援」が計画されています。さらに首都直下地震の具体計画では、一都三県においてプッシュ型支援で調達する「基本8品目」がどの程度の量となるのか、必要量の推計がされています。

プッシュ型支援とは
支援物資のニーズ情報が十分に得られない被災地へ、ニーズ予測に基づき緊急に物資を供給する場合の輸送方法支援物資のニーズ情報が十分に得られる被災地へ、ニーズに応じて物資を供給する通常の物資支援の場合の輸送方法

引用:国土交通省 国土交通政策研究所「支援物資供給の手引き」

基本8品目とは
生活に必要不可欠と見込まれる、食料、毛布、乳児用粉ミルク又は乳児用液体ミルク、乳児・小児用おむつ、大人用おむつ、携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパー、生理用品の8品目のこと。

引用:内閣府「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画」

この基本 8 品目の必要量について、一都三県では食料だけでも52,985,900食(1都 3 県合計)と大量の物資が必要になると予測されています。

こうした大量の物資が発災直後に輸送された場合、十分に搬入出が行えるだけの都道府県の物資拠点である広域物資輸送拠点が確保されているのかという検証はまだ全国的には行われていません。

SIP事業「国が調達した物資が都道府県で受け入れきれるのか?」という問題意識が明らかとなったことから、広域物資輸送拠点の搬出入能力を推計し、物資の輸送先や調達品目の選定を検討するうえでの一助となることを目的とした検証を行いました。

広域物資輸送拠点の課題と提案

今回の検証では、東京都の広域物資輸送拠点を対象としたシミュレーションを実施しました。その結果、論文で設定した条件下では、首都直下地震の具体計画で想定されている物資の量は広域物資輸送拠点の搬出入能力を超えてしまう結果となっています。
詳細な内容はぜひ梗概集をご覧ください

特に膨大な量の物資が必要とされる大規模災害の場合、発災直後に迅速に適切な広域物資輸送拠点を開設することが求められるなかで、各施設の搬出入能力を平時のうちから把握しておくことは重要です。拠点の搬出入能力をプッシュ型支援を行う国と受け入れる都道府県で共有することで、「どこに、なにを、いくつ送るか」という意思決定をより迅速化させることができるのではないかと考えています。

また、大量に必要となる食料を輸送量を最大化するには消費期限や重さ、大きさなどにも配慮が必要なことや、飲料水などは物資支援だけに頼らない支援体制の構築が求められることなども明らかとなりました。

事前にこうした拠点の搬出入能力を把握しておくには、各都道府県や国で拠点の仕様や拠点内でかかる作業時間等を調査していく必要があり、拠点の指定を推進するとともに並行してシミュレーションマニュアルの整備等も検討しておく必要があります。

さいごに・お礼

今回は、私たちRCFが実施している事業の一環として投稿した論文について紹介しました。今後も、事業のなかで得られた知見について様々なかたちで発表していければと思います!

また、本論文の執筆にご協力くださった国立研究開発法人 防災科学技術研究所の宇田川先生、参考としたシミュレーションを実施し論文にもご意見をくださった自治体職員の方に感謝いたします。本当にありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!