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僕2.5
過去を振り返るときに、どうしても2019年と2020年の間に大きな隔たりがあるような気がしてしまう。まるで、地元だった中学校から地元じゃない高校に行ったときのような。2019年から2020年が明けるまでの数瞬が、それ以前の記憶にフィルターをかけたような。そんな感じだ。
社会的には生活様式が大きく変化したころだった。リモートワークだったりオンライン授業だったり、フィジカルな接触を最低限にする生活になり、他者との関わりはデジタルを介したものがほとんどになった。
否が応でも変化させられたことで、それへの適応に追われ、波のように押し寄せる未知の脅威と、それに関しての情報の精査に忙殺されたような1年は、ポジティブに捉えるなら、退屈な人生に強烈なふりかけが降りかかったといった感じだろうか。
カツセマサヒコの『明け方の若者たち』で、仕事中に起こったトラブルに対して、“僕”は「突然訪れた非日常に、不謹慎にもひどく興奮」していたが、まさにそれと同じことが2020年の1年間かけて起こった。特に最初の4か月は濃度が高かったような気がする。
いきなり現れた敵の正体を暴くことに必死になった1年、自分たちを守ることに必死になった1年、毎日発表される数字たち。本当に不謹慎なことは重々承知しているが、やはり興奮していた。
約20年生きてきて、きちんとデータと向き合えるようになってから初めて直面する未曽有の危機。全人類が同じスタートラインに立ってる感覚。自分の力が試されていると感じていた。しっかりと情報を捌けるのか、しっかりとそこから学びを発見し活かすことができるのか。時に間違えながら、データをもとに予測を立てながら生活していた。京都大学名誉教授の鎌田浩毅先生がよくおっしゃっている「正しく恐れる」を、実践できていたと思う。
ある小説家が「身近な人に感染者がいないため、生活実感がない」といった旨の発言をしていて、この人の本は買わないと決めたり、とにかく毎日が楽しかった。
2020年という1年が強烈すぎたために、2019年以前が、オールドレンズで撮ったかのような趣のある映像記録となっている。ゲームで言えばシリーズ物の1作目だろうか。それよりは、幕間なしで第2幕が始まったと言った方が適切かもしれない。とかく、僕2.0が2020年から始まったのだ。
2022年からの僕は、2019年以前をネガファイルに改めてしまいこんで、勝手に「和に還ろう」をテーマに、僕2.5くらいの感じで頑張っていこうと思う。
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