もういちどきみと。[1]
永谷啓介、28歳。男性で独身、都内の大手商社に勤め、同世代に比べて割といい給料をもらって、あてどもなく貯金して。女には面白みのない男だと言われる自覚はある。彼女達の作り笑いや、煌びやかな様子に些かきつい香水が苦手で、俺はあまりそういう席も好きではなかった。
同期は会社の大きな看板を凝縮したようなピンバッチを誇らしげに胸に煌めかせ、夜な夜な肝臓の耐久度を試しに出かけていく。俺はそんな彼らを横目に見ながらのんびりと家路につく。のんびりといえど23時、明日まであと1時間。家に