1匹の爪の話
その動物は爪が長ければ長いほど、優秀な遺伝子を持っていると言われていました。
そして、身体に爪痕を食い込ませるのがその動物たちの求愛行動でした。
爪痕を残すのは身体を相手に預けられる、相手を心から欲しがるということだったのです。
そして、昔。人間がその動物を見つけました。その動物は人間たちを初めて見ました。そして、いとおしいと思ったのです。
調査隊の何名かに彼らの爪が深く刺さりました。痛みに叫び声があがり、血が吹き出して皆大騒ぎになりました。
それが世界中に知れ渡り、その動物たちは危険分子として駆除対象になり、あっという間に絶滅危惧種になりました。
それからようやく、人間たちの研究により、爪を指すことが愛情表現ではないかと唱えられました。
しかし、時は既に遅く、動物たちの数は減り、残されたものたちも人間を警戒し、その爪で攻撃するようになったのです。人間たちはそれを愛情表現だと思っているので、仕方なく反抗せずに受け入れました。
愛情は時に、憎しみに。憎しみは時に、愛情に見えてしまうのです。
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。