【短編】 枕

 他のことにあまりこだわりはないのだけど、枕だけは譲れないものがある。

 硬めで大きいもの。まぁそれなりにお値段はするけど、こればっかりは変えられない。

 睡眠の質を良くするためでもあるんだけど、何より大切な役割がある。

 今日みたいに、もうくたくたで、何もかも嫌になるときが絶対来るんだ。

 でも意地っ張りで気まずいのが耐えられない私には、涙を見せられる相手がいない。彼氏にすら、泣いて甘えることができない。

 だから、こうして、ベッドに倒れこんで、枕を濡らす。

 「…!」

 声にならない声が聞こえないように、枕で顔を覆う。それから大人げなくわんわん泣く。

 こんな姿自分でも見たくない、こんな声自分でも聞きたくない。

 だから、枕にはこだわるんだ。

 唯一、目の前で泣ける相手だから。


 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。

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