遂に来た!これぞホテル インディゴ!名鉄の本気も見えた ホテル インディゴ犬山有楽苑 最速全施設完全ガイド
やーっとインディゴの真髄を日本でも楽しめそうです。そして名古屋周辺のホテル勢力図を明らかに塗り替えると思われます。
はじめに
「名鉄犬山ホテル」皇太子時代の明仁上皇、美智子上皇后ご夫妻もお泊まりになられた名鉄ホテルグループにおいて最も格式を高く扱われた名門ホテル。築50年を過ぎた建物は老朽化に伴い、耐震面でも問題を愛知県から診断された事もあり、2019年8月で営業を終了。建て替えと共にホテルブランドも外資と提携し国際的なブランド力と知名度を強化する事に。既にANAクラウンプラザ ホテルグランコート名古屋で協業実績のあったIHG (インターコンチネンタルホテルズグループ) の持つブランド「ホテル インディゴ」として再開業する事が発表されたのが2018年の6月4日でした。
このリリースを見て当時筆者は大変驚いた物です。
「ホテル インディゴ」と言えばIHGのブティックホテルブランドで、トンがった奇抜なデザインが特徴のヤングアダルト層向けブランド。名門名鉄犬山ホテルの跡地にそれを造るのか?なぜ?ここはインターコンチネンタルブランドじゃないのか?しかも付帯施設には宴会場とある。宴会場のあるインディゴなんて世界のどこを探しても聞いた事が無い。いったいどういうコンセプトでどういうホテルになるのだろう。本当にインディゴとして成立するのだろうかと期待と同時にかなりの不安も抱いた物でした。
工事自体は順調に進んでいた様ですが、コロナ禍の影響を受け、2021年秋の開業予定は延期。元々はホテル インディゴ箱根強羅に次ぐ国内2号店となる予定でしたが、後から発表になったホテル インディゴ軽井沢にその座を譲り、国内3号店として2022年3月1日開業に至ったのでした。
本記事はその「ホテル インディゴ犬山有楽苑」の全施設をどこよりも速くレポート・解説し、その魅力をお伝えすると主に、利用を検討されている読者の皆様に施設を思う存分楽しんで頂く一助となる事をねらった物です。
アクセス
公共交通機関をお使いになる場合は名鉄一択です。徒歩で行かれる場合は犬山遊園駅が最寄駅(徒歩10分弱)ですが、ここは無人駅で、駅前にもタクシーはありません。荷物が多い場合はタクシーを使いたい所ですが、その場合は犬山駅で下車し、西口からタクシーに乗ってください。所要時間は概ね5分と言ったところ。運賃は1000円前後です。
エントランス
とにかくこの時点で圧倒されます。竹林を移植して作った、趣のある回廊を抜けるとホテルエントランスです。駐車場は190台、Panasonic製のEVチャージャーも2台分完備されています。この回廊もちょっとした庭園っぽく作ってあって、
歩いてみると気分は嵐山にある「竹林の小径」のプチ仮想体験という感じです。
どうでしょう?この時点で「ひやー!名鉄さん、マジでお金かけたなぁ」というのが筆者の正直な感想でした。でも、本当に圧倒されるのはこれからです。
ロビー
建物の中に入ると完全に眼を奪う様に飛び込んでくる荘厳な光景。山上に聳え立つ犬山城と静謐に水を湛えた美しい庭園のマッチングには感動的。これをPerfectと言わずして!
そしてレセプションに眼を遣ると、和風でありながら奇抜なデザインに、ここがホテル インディゴである事を実感させられます。そう、こういうのを待っていたんです。そう言えばこの犬山周辺を領地としていた織田信長は奇抜な衣装、奇抜な建築を好んでいたことでも知られています。そういう意味ではここがインディゴになったのも、自然な流れなのか。背景の壁紙は木曽川鵜飼(鵜飼と言えば長良川が有名ですが、木曽川にも鵜飼はあります)の篝火をモチーフに。ホテル インディゴのブランドコンセプトのひとつとして“Discover our vibrant neighborhoods around the world” (世界の活気あるご近所さんを散策しよう)があるのですが、neighborhood storyはこの段階から既に始まっています。また奇抜なデザインである一方で、細部の設えは世界中のどのインディゴよりも圧倒的な高級感を感じます。
このホテルには独特の「Your Host」と呼ばれるサービススタイルがあります。
バトラーサービスに近い感じでしょうか。チェックイン手続き時に館内施設の簡単な案内を記載したポストカードサイズの紙を渡していただけるのですが、そこに記載されたお名前のスタッフさんが、滞在中はほぼ専属で各種サポートを行なってくれます。これはホテル インディゴ世界共通のサービスでは無く、ここ犬山有楽苑だけの独自サービスです。
ロビーを庭園に向かって左手にはホテルブティックとリゾートセンター(コンシェルジュデスク)があります。「リゾートセンター」と名づけているので、ここはやはりリゾートホテルと考えるべきなのでしょう。名古屋市内から電車で30分強で行く事ができるリゾートホテルって、凄いですよね。
ホテルブティックでは地元愛知県や岐阜県の工芸品を中心に気の利いたお土産になるアイテムを販売しています。
日本の伝統工芸を感じさせながらもビビッドな色遣い。こういうホテル、今までありましたか?
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The Bar 夜車山(よやま)
ロビーを庭園に向かって右手にはレストランとバーがあります。The Bar 夜車山は庭園と国宝犬山城を眺めることができるオープンスタイルなのに不思議と落ち着く空間です。なんと、開業日時点ではカクテルメニューリストは無し!「飲みたいものは全部作りますので、なんでも仰ってください」と言われました。ゲストのお酒に対する知識が問われます。 笑
筆者の流儀としては、初めて訪れたバーではまずシグネチャーカクテルを最初にいただくことにしています。最初の一杯は抹茶とカカオリキュール、ジンをベースとした「Urakuen Nite」。茶人として名高く、有楽苑の由来となった織田有楽斎に因み、お点前風に戴きます。ここにもneighborhood storyが。限りなくデザートカクテルに近いスイートカクテルですが、クドくない甘さで食後酒には丁度良いかも。開業日現在で唯一のスタンダードメニューです。笑
スイートカクテルの後はサッパリとした味わいのものを飲みたくてオーダーしたら出てきたのが柚子の香りのするこのオリジナルカクテル。名前を聞いたらまだ決まっていないらしく、これから考えるそうです。笑
このほかにバランタインのハイボールを戴き、トリュフ風味のミックスナッツとポテチがチャーム(お通し)で付いて、お会計は5800円。ドリンク3杯でこのお値段なら、ホテルバーのお会計としては悪くありません。ここはもっと使い倒したいですね。ウイスキーやリキュールの品揃えがどれだけあるのかわからない (一般的なバーの様にボトルがずらりと並んでいない…これはコレでアリですが)ので、その辺をどう見せて行くのかが今後興味深いです。
Indigo Home Kitchen 車山照(やまてらす)
館内唯一のレストランですが、実は今の所オールデイダイニングではありません。朝食、ランチ、ディナーの三部制営業で、特に14:30−17:30の3時間は営業を行なっていません。人手不足(!)とスタッフの熟練度がまだこなれていない事から、来ているこの営業体制ですが、将来的にはこの時間帯でのティータイム営業も計画されているそうです。開業から1週間はランチタイム以外、外来客を受け入れず、宿泊客のみの営業でした。外来客も要予約でした。
メニューはフレンチフュージョンを中心としたコースメニューと、アラカルトメニューから。アラカルトは和食やアメリカンダイナー的メニューも用意されています。
ディナーメニューはコース以外はランチと同じラインナップです。
事前予約でディナーメニューをランチに頂くことも可能です。また、コースメニューにしか無い料理も事前予約でアラカルト扱いで提供していただけました。
定期的に入れ替わるバイ・ザ・グラス (グラス売り)のワイン。
開業時は木曽川に面したこのホテルに因み、川沿いに位置する畑・ワイナリーのものを集めたプロモーションを行なっていました。もちろん、ボトル単位でのオーダーも可能です。
ワインリストは数は多くありませんが、そこそこのグレードのものをバランス良く用意しています。シャンパンだけはお高めですが、ワインセラーの肥やしにしかならない様な何十万もする高額ワインが無いのは好感度大ですね。
その他の飲み物もバランス良く銘柄を揃えています。特にビールはアサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの国産主要メーカープレミアム銘柄を全て取り揃えているのが素晴らしい。
朝食はこのホテルのキラーコンテンツと言えるでしょう。
セットメニューを和・洋から選択し、サラダやハムなどのコールドカット、サラダやフルーツをビュッフェから取るスタイルです。
ここはもう和朝食セットを選ぶことを強くお勧めしたいと思います。
見てください!この豪勢な和朝食セット!日替わりの焼魚、山菜に稚鮎の天麩羅、お造り、蒸鮑、蛍烏賊の酢味噌和え、煮蛸、煮物、冷奴、犬山産とろろ芋等
その辺の“ラグジュアリーホテル”が裸足で逃げ出しそうなレベルです。
これは凄い!
更に驚きなのが、ここでワゴンサービスにより、ご飯に添える海苔と鰹節を用意してくれるのですが、海苔は目の前で炭火で炙り、鰹節は枕崎産の本節を目の前で削ってくれるパフォーマンス!「これでもか!」と言わんばかりな食のエンターテインメントを朝から楽しませてくれます。
ビュッフェ台も負けてはいません。原木からカットするハモンセラーノ(生ハム)が目を引きますが、何よりも凄いのが、三種のスモークサーモン!生の鱒をホテル内のキッチンで全て仕込んでいる自家製です。12時間マリネした後スモークしているスモークサーモン、愛知県のブランド 絹姫サーモン、ニュージーランド産のŌRA KING、そして岐阜県のブランド 飛騨サーモン。それぞれに身の質や脂の味わいが異なり、個性が楽しめます。何よりも生ハムと併せて良い酒肴になるので、朝からシャンパンが進む進む…😅
客室
客室カテゴリは以下の表の通り。
最上位のインディゴスイートを除く全ての客室カテゴリには
キングベッドとツインベッドの仕様が両方とも用意されています
ホテルインディゴスイート
このホテルで最も大きい、最上位にカテゴライズされるスイートルームです。
まずはビデオをご覧ください。
エントランスからロビーにかけたビビッドだけど、ゴージャスでエッジの効いたデザインに対して客室は温かみのあるポップな印象を受けます。壁紙などのデザインから歴史を意識させたコンセプトである事が伝わります。
犬山のneighborhood storyはこの土地の歴史から…。なんでしょうね。
この部屋のみベッドルームとリビングルームが分割されています。
テレビもベッドルームとリビングルームにそれぞれ1台ずつ。
水回りはかなり広め。
一方でクローゼットが占める面積はそれほど大きくはありません。
このスイートは隣のスタンダードルームとコネクティング可能な作りになっているため、子連れファミリーでの滞在にも向いていると思われます。
有楽苑スイート
14室ある有楽苑スイートですが、客室の構造が3種類あって、それぞれに大きな特徴があります。ここではその3種類を便宜上タイプA・B・Cと分けて解説します。タイプAとBの10室は最上階の4Fに、タイプCの4室だけは1Fに位置します。
まずはタイプAのビデオからご覧ください。
最上階の角部屋に唯一あるタイプAは、2方面にある大きな窓と全客室中最も広いテラスを持つ圧倒的なパノラマビュー。個人的にはベストルームだと思います。実効面積も三種ある有楽苑スイートの中では一番広く感じます。一部屋しか無く原則指定不可なので、この部屋に泊まれるかは運。(ツインベッドを指定すれば確率は上がりそうですが)
眺望だけでなく、家具のレイアウトが効率的なためか、かなり広くスペースを使えます。大きなスーツケースを広げても余裕たっぷり。もしかしたらホテルインディゴスイートより使い勝手も良いかもしれません。スタジオスイートなので、リビングルームが別にあるわけではありませんが、「スイートルームは分割された部屋の方が好み」という方以外はここが一番良い部屋だと思います。
ここは「パノラマスイート」という別カテゴリにしてホテルインディゴスイートと同等の価格で売った方が良かったのでは…。
ここからはタイプBの紹介です。まずはビデオをご覧ください。
タイプBは9室と3種ある有楽苑スイートでは最多の数を占めますが、厳密にいうと国宝犬山城を真正面に面した部屋が5部屋、ホテルインディゴスイートと同様に木曽川を真正面にテラスから城を望める部屋が4部屋という構成です。原則指定はできませんし、ルームスペック上の齟齬もありませんので、どの向きの部屋が来るかは運次第…。
タイプA程ではありませんが、国宝犬山城を真正面にした部屋ならビューとしては悪くありません。快適な滞在ができる事でしょう。
ここからはタイプCの紹介です。まずはビデオをご覧ください。
この客室のみ、1階にある事から天井が他の客室より高い造りとなっています。
天井の高さに伴う窓ガラスの大きさも特徴です。
他の客室と違い、テラスは中庭の池に面しています。(池は浅いですが、落ちない様に注意!) 面積もそれ程広くありませんが、ここから見える景色は館内のどの客室にも無い独特な静謐感のあるものです。
この客室のもう一つの特徴は隣り合うもう一つのスイートとコネクティングできる事です。ただし、その接続方法は普通のコネクティングの様に客室を内部で直接繋ぐのではなく、Door-in-Doorのスタイルで大きな一つのドアの中に個別の客室のドアがある形になっています。例えば画像にある様に105号室のドアを開放すれば中にある101号室と103号室が現れるという寸法です。
このスタイルのコネクティングルームはかつてのインターコンチネンタル香港で採用されていたコネクティングの方式です。大きな一つのドアで繋がっているとはいえ、内部のドアで個別の部屋のプライバシーはより保たれるため、「若い夫婦とその両親」とか「ダブルカップルの旅行」などに向いているのでは無いでしょうか。(スタッフさん達からの通称は「ファミリースイート」だそうですが 笑)
このコネクティング用スペースのため、実効面積は他の有楽苑スイートよりも若干小さめになっています。
プレミアムルーム
最も客室数の多いこのホテルで標準的なカテゴリの部屋です。
犬山城ビュー、木曽川ビュー、有楽苑ビューと3種の眺望から選べます。
まずはビデオをご覧ください。
35㎡ですが、おそらくテラスを含めた面積で、客室そのものは30㎡、実効面積28㎡と思われます。ライフスタイル・ブティックホテルとしてなら標準的な広さですので、インディゴとしては問題ないのですが、ラグジュアリーホテルとしては狭いと思います。もし、このホテルの平均客室面積が40㎡から50㎡だったら、さらに上のラグジュアリーカテゴリのホテルを名乗れたかもしれません。
スタンダードルーム
プレミアムルームとの違いはバスルームだけです。バスタブが無くシャワーだけです。その結果、若干実効面積はプレミアムルームより広く使えますが、誤差の範囲と言えるでしょう。それ以外の間取り、設備やルームアメニティは全く同じです。
ビデオで詳細をご確認ください。
基本、このカテゴリの部屋は2階の有楽苑側やエントランス側のシティビューがその大半なのですけれど、僅かながら上層階の客室が存在しています。原則指定不可なので、幸運を祈りましょう。🤞
客室デザイン的には大手グローバルチェーンの日本国内におけるライフスタイル / ブティックホテルの中では最もデザイン性の強いホテルになったのではないでしょうか。これまでにオープンしたこのカテゴリのホテル、それもラグジュアリー系はどこも失敗したら小規模のリノベーションだけでいつでも普通のホテルにリブランドして戻せる様にあまりエッジの効いていないデザインだったり、どこか守りが見えた感があったのですが、ここはロビーから客室に至るまで守りの姿勢を感じさせない、攻め攻めの姿勢が見えてとても好感が持てます。これぞホテル インディゴ!と筆者は強く主張したいですね。(IHGには次は東京都心に超Coolなデザインのインディゴを造って欲しい。インディゴ上海オン・ザ・バンドとかW上海みたいなデザインの…キレッキレな。)
客室アメニティ
アメニティはスイートを含め全ての客室が共通の様です。
スイート専用アメニティは確認できませんでした。
ターンダウンスイーツとしてヴィーガンココアクッキーが。
そしてターンダウンの後に発見した謎の珍入者…。
正体は犬山市の公式キャラクター「わん丸君」でした。
ターンダウンテディベア的な扱いでしょうか。
小さいお子さんは喜ばれると思います。
客室アメニティではありませんが、ホテルデザインのペーパーバッグはインスタントサービスに電話すると用意してくれます。大・小2種類ありますが、大でも他のホテルの小サイズレベルです。色はインディゴブルーとオレンジのブランドカラー。
天然温泉大浴場 「白帝の湯」
旧名鉄犬山ホテルから受け継いだ天然温泉「白帝の湯」
犬山市内で唯一の天然温泉でもあります。
入口の暖簾、中央は温泉マーク♨️ですが、その脇を固める模様はハテサテ?
実はこの暖簾を左右に並べてつなげると、犬山市の市章になるのです。
犬山市の市章は犬山城主で旧犬山藩主 成瀬氏が一郡を支配していた時代から使用されてきた由緒正しきもの。こんな所もneighborhood storyが。
温泉の温度は内湯で41℃、露天風呂で42℃を概ね維持する様になっています。個人的にはちょうどいい湯加減だと思います。源泉の温度が温泉法上温泉を名乗れるギリギリの温度(よって加温しています) かつ成分的には療養泉(薬効を期待できるレベルの温泉)ではないので、硫黄臭などはかなり薄めです。
サウナは軽井沢同様に男女ともドライサウナと水風呂完備です。
箱根強羅のサウナに水風呂が無かった事はかなり不評でしたので、
これはサウナーにとっては嬉しい仕様。
男女共に同じ仕様であることもポイントが高いですね。
露天風呂は小さい庭園もある開放感のある造りです。
陽が落ちて来るとライトアップもされ、風情ある空間を楽しめます。
温泉の源泉は有楽苑の横にある、ホテル裏手の駐車場の影にひっそりと。
フィットネスセンター
設備はシンプルで有酸素運動系機器とヨガマットなどが中心。
筋トレ系機器はそれほど多くはありません。
特徴的なのは自走式トレッドミルと、個人のスマートフォンやタブレットとアプリで連動させるスタイルのエアロバイク、ケーブルステーションでしょうか。
どれも主要パーツや外装に木材を多用しており、外観的に非常に特徴のある機器ばかりです。
宴会場
おそらく世界初で今後も唯一となるだろう、「ホテル インディゴの宴会場」です。霞(かすみ)53㎡と響(ひびき)260㎡の2つあり、さらに響は瑞(みず)・燈(あかり)・樹(いつき)と80㎡ずつ3分割可能です。
本来、ホテルインディゴは宿泊特化型のホテルであり、宴会場は無いのがブランドスタンダードなのですが、その経緯については別項で後述します。
有楽苑
尾張国が産んだ戦国武将かつ茶人で、織田信長の実弟でもある織田有楽斎 (織田 長益)。彼が建てた茶室や住居などを名鉄が蒐集してここ犬山へ移築し、庭園として整備保存しているのが有楽苑です。国宝茶室「如庵」や有楽斎が晩年を過ごした重要文化財「旧正伝院書院」等、貴重な日本建築の数々がここにあります。
ホテル宿泊客はルームキーを受付で見せる事で、入苑料が無料となります。
重要文化財の旧正伝院書院は京都の正伝院(現在の正伝永源院)にて晩年を暮らした有楽斎の住居でした。通常は外からしか観る事ができませんが、年数回、イベント的に内部を公開しています。
元庵は有楽斎が大阪天満で暮らしていた時の茶室を残されていた図面を元に復元した物です。元々はこの建物が「如庵」と呼ばれていたそうです。もしこれが、復元ではなくオリジナルのままだったら国宝間違いなしでしょうね。
国宝茶室 如庵
国宝茶席三名席のひとつ。これも京都の正伝院から移築されたものです。
「如庵」という名前はクリスチャンだった有楽斎の洗礼名「Joan」から来ているという説もあります。年数回のイベントでしか中を見ることはできませんが、今回3年間の修繕を経てホテル開業と同時に再公開された事もあってか、窓が開けられ、外から内部を見る事ができました。
茶室としては広々とした造りで、織田有楽斎のもてなしの心、堅苦しさを嫌った自由人ぶりが偲ばれます。有楽斎のもてなしの極意として三つの口伝が遺されています。
一、相手に窮屈な思いをさせぬこと
一、相手に恥を掛かせないこと
一、相手に満足感を与えること
ホテル インディゴ犬山有楽苑にもこの極意が継承されている様に感じます。
滞在こぼれ話
旧名鉄犬山ホテルの名残
館内にはありし日の旧名鉄犬山ホテルを偲ぶ名残が幾つか遺されています。
そのままのものもあれば、形を変えて残っている物も。
旧名鉄犬山ホテルを覚えている方は探してみてください。1Fロビーから大浴場へ行くまでの間にひとつ大きいのがありますよ。
丸に片喰 (まるに かたばみ)
館内レストラン「車山照」にある三つの家紋。新たに起こしたインディゴ犬山有楽苑の紋章と犬山城築城主の織田家の家紋「織田木瓜」そして現城主成瀬家の家紋である「丸に片喰」。実はこの「丸に片喰」は筆者の家紋でもあります。最初これを見た時、なんでウチの家紋がココにあるの !?と驚愕したのですが、成瀬家の家紋と聞き納得と同時に、このホテルとこの犬山の地に不思議なご縁を感じたのでした。
名鉄ホテルの意気込みと地元密着というミッション
開業日初日の晩、The Bar 夜車山で飲んでいたら、総支配人が挨拶に来てくれました。今までオープンした国内のインディゴの中でも最もインディゴらしく、しかも客室面積がもうちょっと大きかったら、IHGのさらなる上位ブランドとなるREGENT(リージェント)にもできたんじゃないかと思える位、高品質。実に素晴らしいホテルでオーナーの名鉄さんも本当に頑張られたよねぇと、賛辞をお伝えしていたら、横に座って呑んでいた男性から声をかけられました。
私、こういう者ですが…と差し出されたお名刺は…。
このホテルのオーナー企業、名鉄ホテルホールディングスの社長でいらっしゃる岩瀬正明さんご本人でした。いやー、どこで誰が話を聞いているかわからないですね (苦笑) ホント、褒め言葉を聞かれていて良かったです。😅
利益を出すホテルを作る事はそう難しくはないが、「良いホテル」を作るのは本当に難しい
と語る岩瀬社長、非常にオープンで気さくな方です。本当に頑張られましたねと申し上げたら、『名鉄という会社は鉄道会社なので、どうしても保守的になりがちですが、今回は「良いホテル」を作るためにグループ本社の意向を抑えて好きにやらせて貰いました。お金ちょっと遣い過ぎちゃったけど 笑』
このホテルを建てるにあたっては、単純に名鉄犬山ホテル事業の再開発という目的だけに留まらず、地域の要請に応えるというミッションもあったそうです。地元の足、地域密着の名鉄ならではの事情ですね。旧名鉄犬山ホテルを取り壊してホテル インディゴ犬山有楽苑を建設する際に犬山市から2つ要請されたことがあったそうです。
最低30人以上は入れる会合ができる施設(ボールルーム)を設けて欲しい
富裕層向けだけでなく、誰でも気軽に犬山に滞在できるようなホテルも作って欲しい
犬山市内には30人以上入れるキャパを持った飲食店が無いんだそうで、ライオンズクラブやロータリークラブ、自治体イベントなどの会合の場として使われてきた旧名鉄犬山ホテルが無くなると、非常に難儀すると。そのため、新しいホテルにもボールルームはどうしても欲しい。地元密着の名鉄としてはこの要請に応えたい。インディゴのブランドスタンダードからは大きく外れるこの施設を設けるにあたってはIHGとはかなりの折衝が行われたそうですが、最終的にIHGがこれを受け入れ、その結果、世界初でおそらく今後も唯一となるだろう宴会場を持ったホテル インディゴが誕生したというわけです。
元々この地は犬山遊園があった場所でもあり、周辺には同じ名鉄グループの日本モンキーパークや博物館明治村、リトルワールド、そして国宝犬山城や有楽苑など観光施設・資源が多いのに、日帰り客が中心で犬山にはあまり滞在してもらえないという状況を変革しよう、人の流れを変えよう、そのためには魅力のあるホテルが中核施設として必要という名鉄グループのミッションと意気込みが凄く伝わってきました。
ホテル ミュースタイル犬山エクスペリエンス
そして、ホテル インディゴ犬山有楽苑は旧名鉄犬山ホテルからは平均宿泊料金は倍以上に跳ね上がる。岩瀬社長が記者会見で述べられた「最もハイエンド・ハイスペックな客層」以外の層もカバーできるホテルが犬山市内に欲しいという要請に名鉄が応えたのが2021年7月15日に名鉄犬山駅前に先行オープンした
「ホテル ミュースタイル犬山エクスペリエンス」
です。
人工温泉ですが、大浴場にドライサウナも完備、コインランドリーもあって本当に便利。名鉄犬山駅西口を出た本当に眼の前です。チェックイン・アウトもKIOSK端末で行う現代的でお洒落な美しいホテル。一泊8000円前後から。こちらもおススメですよ。
焼肉 松屋
名鉄犬山駅西口のホテル ミュースタイル犬山エクスペリエンスからロータリーを挟んだ向かい側にあるのが、「焼肉 松屋」です。名鉄ホテルHD岩瀬社長もお薦めされていたこの焼肉店にも行ってきました。
ぐわー!美味い!美味すぎる〜。もう肉質が段違い。赤身肉、本来の肉の旨味を最大限に味わえるこのロースなんかもう最高!霜降りの脂の味で誤魔化さない、これぞ「ザ・焼肉」ですよ。しかもお勘定はタン塩・並カルビ・ロース・キムチ・ビール一本で3530円!こんなお店が身近に欲しい!この店で焼肉を食べるためだけに犬山に行っても良い!そう思えるお店です。超絶お薦め!
岩瀬さん、色々とお話をお聞かせいただいた上に、良い店を教えていただき、本当にありがとうございました!😊
まとめ
ホテル インディゴ犬山有楽苑はホテル インディゴとしてのブランドコンセプトを損なうこと無く、犬山城と有楽苑(如庵)という二つの国宝を視界に収めるに相応しいラグジュアリーホテルとして、これまで東海・中京地域には無かった待望の施設です。名古屋周辺の富裕層の方々はこれまで週末のお出かけ(Weekend Getaway)としては名古屋マリオットホテルアソシア(通称ナゴマリ)に行くか、京都に行くか、はたまた東京まで行くかという方々が殆どでした。ホテル インディゴ犬山有楽苑はそれらの方々の受け皿として確実に機能するどころか、犬山の街を活性化させ変貌させる中核施設として機能するポテンシャルを持つと共に、これまでさした競合が無く、半ば殿様商売と揶揄されてきたナゴマリに確実にインパクトを与えるでしょう。元々名古屋周辺には高級ホテルが足りないと言われてきた中で、この市場に一石を投じたことは間違いありません。また、インディゴとしても先行で開業した二軒と比較して施設面でもコンセプト面でも最もインディゴらしいインディゴ、これこそホテル インディゴと言い切れるホテルになったと思います。お値段は三軒の中で一番張りますが。😅
一方で課題もあります。ホテルそのものの課題では無く、地域インフラの課題です。駅からホテルまでの交通手段があまりに乏しい。タクシーに至っては犬山駅にもいない事が多く、特に夜重い荷物を持って到着した場合、途方に暮れる事になります。19時過ぎにホテルからタクシーを呼んだ場合も複数のタクシー会社に全て当りましたが、タクシー迎車まで40分近く待たされました。また、本当の最寄り駅である犬山遊園駅からホテルまでは木曽川沿いに一本なのですが、街路灯も無く真っ暗な所を歩かなくてはいけない。これは犬山市が街灯を整備すべきです。周辺にある旅館や飲食店のためにもこれは必要だと思います。
ホテル インディゴ犬山有楽苑はこれからますます目が離せない施設となる事は間違いありません。まずは関係者、地域の皆様などのステークホルダーの方々とこの開業を祝いたいと思います。本当におめでとうございます!
(了)