【詩】一億年後の海洋生物

(鶴城松之介様の上記企画をお見かけして、作ってから締め切り後であることに気付いたというていたらく。ランナーアウト…ッ! テーマは「海洋生物」。ビーチに海洋生物が襲来……してますね、してます。)

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一億年後の海洋生物

幾度目かの灼熱の時代が過ぎ去り
ついでに酷く凍える時代が
もひとつ明ける頃ともなれば
海原の上を、東京ドームの屋根ほどもある
大きな蝶が舞うだろう
撥水性の鱗粉のたっぷり乗ったその翅は
厚みがゆうに5センチはあり
それらがぼうぼうと風をはらみ
あるいはどんな微風をも捕らえながら
紺碧の波を無数に越えて
昼となく夜となく飛行するのだ
陸地が遂に枯れ果て
花もあいにく咲かなくなって
洋上を目指した彼らは
偏西風の抱擁を受け、翅を伸ばした
彼らは積乱雲を追って移動し
降雨の後に海水面にいっとき溜まる
真水を吸って生きるのだ
あとは時折クジラを見つけ
その背に硬い口吻を刺し
赤い血を吸って生きるのだ
その翅は、上から見れば雨雲色で
下から見れば夏空の色
モルフォ・ブルーの成れの果て

やがて力尽きる夜明けが来れば
肢体は海面にへばりつき、潮のまにまに
運ばれて、海の者らの餌食となるか
あるいはどこかの浜辺で暮らす
無知なわたしたちの元に流れ着き
「なんて大きな海洋生物」と
讃えられることになるだろう!