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つい「一線を越えてしまう」人たち
「ファール」?「ファウル」?
先日の「NHK杯」がきっかけで,巷(ボウリングに興味のある界隈に限る)では「ファール」「ファールライン」というキーワードが「赤丸急上昇」しているようだ.
ことの詳細は,あちこちに書かれているようなのでここでは割愛する.
なお,原語(英語)では「foul」であり,発音としては「ファウル」のほうが近いのだが,ボウリングでは「競技規則」などでも「ファール」と表記するのが一般的なので(その割には「ボーリングじゃねえ,ボウリングだ」とか煩い人が多いのは何故?),ここでは「ファール」と書くことにする.
「ファール」か「ファウル」か,「ボーリング」か「ボウリング」か,は,正直「どーでもいい」というか「どうでもいい」のだが,要は「誤解なく伝わればよし」ということで.
「ファールライン」と「ファールセンサー」
さて,この「ファールライン」.
これをお読みになっているような方ならば,当然その存在は御存知だろうし,何故これを越えてはいけないのか,も熟知されていると思う.
この「ファールライン」を,投球者の身体の一部でも越えて投球した場合,ルール上は「反則投球」ということになり,その投球の結果は「0点」となる.わかりやすく言えば,ピンデッキまでにガターに落ちてしまったのと同じことになる.
一投目であれば,ストライクであろうが10本立て直して二投目として投球になるし,二投目だったら「1本も倒せずミス」と同じである.
その処理は,現在のオートスコアラで自動的に行うことができるはず.10本ではない残りピンを再現する必要が生じる場面はファールに関してはあり得ないから,リセットと同じ動作をすればいいだけだ.
しかし,実際にはその通りに運用しているセンターは,ごく僅か.筆者自身の感覚ではあるが,1割ほどだと思う.
2割前後のセンターは,ファールセンサーは作動させているものの,ブザーが鳴るだけで,スコアには反映させない,という折衷案を採っている感じ.これはこれで一理あり,センサー自体は動いているので,ガチなマイボウラーなら自分で修正したりリセットすることでファール判定のルールどおりにできるし,一般の客にとっても「ファール(ライン)」の存在を知ってもらうきっかけにはなり得るからだ.
残りの半数以上のセンターは,センサー自体を止めている.アプローチチェックなどの際に,数ミリ浮かせた爪先をファールラインの向こう側にやっても,うんともすんとも言わないセンターがほとんどだ.
では,ファールセンサーを作動させているセンターは,世間一般(あまり一般的ではない世界だが)に「ガチボウラー向け」と認識されている所なのかというと,必ずしもそうでもない.
明らかにレジャーボウラーのほうが多いであろうセンターでも,ファールセンサーが作動していることがあることは,これまでも何度か「ボウリング場めぐり」の記事で触れて来た.
筆者自身は,かなり後方から助走するので,まずファールラインに触れることはないのだが(足より手のほうが長い……ぃゃ,それ以前に手が上空でラインを越えてもルール上はファールの筈だが),結構あちこちからセンサー作動音が聞こえてきて「え?ここでもファールセンサー活きてるの?」と驚くこともある.
実際に,ファールと判定されてしまった一般客のリアクションをみていても「ああ,そうなんだ」と受け容れている人がほとんどで,怒り出す人など一度しか見たことがない.その時は「ファールって何!?」とか言っていたが,あんたはファールも知らんのかとしか思わなかったし,野球もサッカーも見ないのか,と.
ちなみに野球やサッカーはルール上「ファウル」と表記する.ただし,サッカーに例えるなら,ボウリングの「ファール」はサッカーだと「オフサイド」のほうが近い気がする.ファウルだと「格闘技」になってしまう……体育の授業でかつて「サッカーではキーパーしか手を使ってはいけません」と習ったので,実際のサッカーを見ていて「ボールを手で触ってはいけません」と言うべきなのだと驚いた.
あるんだから使おう「ファールセンサー」
そんな具合なので,ファールセンサーは作動させるべきだと思う.
ファールセンサーが止められているセンターで練習を重ねた選手が,ついうっかりファールをしてしまう可能性が(センサー稼働のセンターで練習する選手よりも)高くなりそうなのは,ボウリングをする人ならおわかりになるだろう.
顕著な例として,かつて「スポルト横須賀(114-102)」(現・ボウリング王国スポルト横須賀店)で投げた際の記事がブログにある.
https://ameblo.jp/ambidextrous-bowler/entry-12439412132.html
投球のほぼ全てがファールライン越え,の高齢マイボウラーの話だが,まだこの頃は「遠征」時にはハウスボールで済ませていた筆者でさえ,見ていて恥ずかしくなってしまうほどだった.
ファールセンサーが止まっているセンターでしか投げていないと,こうなってしまうことの顕著な例なんだろう.
そう考えると,今回のNHK杯での「ファール騒動」も「起きるべくして起きた」と言えるかも知れない.
ファールセンサーが稼働していないセンターでしか投げてこなかった選手が,国内最高峰ともいえる大会の会場になったにもかかわらずファールセンサーを稼働させなかったセンター(止めたのか,止まっているのがデフォルトだったのか,稼働させ忘れたのか,きちんと作動するかの点検を怠ったのかはわからないが)で投げたことによって,必然的に生まれたことなのかも知れない.
ボウラーとしてできること
これも確か「ジュニア強化練習会」の時に話しているのを聞いた記憶なのだが,「少なくとも試合や大会で同ボックスで投げている他の選手の投球はきちんと見ていてあげよう」というのがある.
ライバルの足を引っ張る,という趣旨ではなく,むしろ逆で,例えば残りピンの挙動をきちんと見て,マシンタッチの有無をきっちりと見届けることによって,相手を救うケースもあり得るからだ.
最近の「ラウンドワン」では投球画像を再生できたりもするので,それで確認(「VAR」だとか「リクエスト」などと呼ぶ人もいるけど)することもあるが,本来は同ボックスの選手が見ていることが望ましい.それに,そんな設備などないセンターのほうが圧倒的に多いのだ.
長男が出場する大会などについて行って,後方から見ていることも多いのだが,意外とこちらが「マシンタッチなしだよ」と教えるケースもある.本来は,選手間で確認して,必要があればスタッフを呼んで修正なりピン立てなりをしてもらうべきだろう.
ファールについても,疑問を感じた選手がいたとしたら,周囲に断ってファールセンサーの稼働状況をチェックすることだってでき得ると思う.逆に厳し過ぎることもあるからだ.実際に,微妙に向きがずれていてファールラインの2cmほど手前で作動するケースもあった.
最後に改めて「ファールライン」
恐らく一部の人は,ファールラインを「野球でいうところのピッチャーズプレート」的に思っている可能性もある.ボールを投げるまでは留まらなければならないけれど,リリース後は前に飛んでも(出ても)構わない,みたいな感じに.もしかすると野球のように「踏んで投げなければならない」と思っていたりして(汗).
有名なところでは「東京ドームボウリングセンター」が,変わっていなければセンサー常時稼働だったと思う.
また,ロケーションから「レジャーボウラー向け」と思われがちな「江の島ボウリングセンター(114-104)」も,実は「ガチボウラー向け仕様」で(社長も息子もプロボウラーだし),容赦なく「ファール判定」したら0点にされる.
実は長男が,何故かその「江の島ボウリングセンター」ではファールになりやすくて首を捻っていたことがある.
「いつもと同じところからスタートしているんだけど……」と困惑していたのだが,その原因が「センターによってアプローチの長さが違う上に,スタンスドットなどの距離も結構『誤差』がある」ということだった.普段練習するレーンも,基本的にはファールセンサーが稼働しているので,不思議に思っていたのだが,どうやら「江の島ボウリングセンター」のアプローチはちょっと短いのかも知れない.
これは,ナショナルチーム・プレイングコーチ兼男子キャプテンの佐々木智之さんから聞いて「そうなんだ」と驚いたのだが,佐々木さんによると「初めてのセンターの時には,改めてファールラインすぐ手前から逆に歩いて立ち位置を確認する」のだそうだ.これをやる選手は多くない,とも言っており,意外な盲点なのかも知れない.
ファールだけではなく,スパット辺りならそこまでの差はないかも知れないが,その手前のリリースポイントからガイド(テンアングルドット)辺りまでの板目などを参考に投げる人だと,リリースポイントまでの数cmの距離の違いが,見え方にも関わってきかねない.
ファールラインは「越えてはいけない一線」だし,そこからピンデッキまでの「長さ」はもっと「正確」なはずなので,正確にファールラインのすぐ手前で転がせるようにしたい.