ダークマターはかっこいい
ダークマターはかっこいい。
これは宇宙の真理である。
なぜこんなバカみたいなことを書いたのか。
それは講談社ブルーバックスの『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』(著:野村泰紀)を読んだからである。
今回はこの本に関する話だ。
まず謝罪させてほしいのだが、本書は「ダークマターってかっこいいよね」などとは一言も書かれていない。
それどころか、最先端の宇宙論をあえて"難しいまま"読みやすく紹介しているインタレスティングな本だ。
うん。普通に難しい。
大体において書いてあることがわからない。
「はじめての」などと書かれているが、まず最低限の物理用語の理解が不可欠だ。例えば「質量」は普通に我々が理解しているような重さを指しているのではなく、モノの動きにくさ=モノを固定しているエネルギーのことをいっている。
この例えすらあっているのかどうか自信がないが、とにかくそういう基本的な理系教養がないとこの本に書いてあることの3割も理解できないだろう。
とはいえ理解できないことと面白いかどうかは別である。
内容がほとんどわからなくても、この本はちゃんと面白い。
例えば冒頭のダークマターに関する話。
ライトノベルの『とある』シリーズでもダークマターを使うやつがいたような気がするが、そもそもダークマターとは何を指しているのかをちゃんと理解している人はそう多くないだろう。
創作で出てくる場合は大抵「触れられたら分解される」「通常この世界にはない物質」など書かれている。気がする。
だが実際は「まだ観測できていないが理論上存在するはずの物質」らしい。
我々人類や地球、太陽系というのは宇宙規模で見ればあまりにもミクロな存在だ。だから人間は普通地球の重力は感じても、地球の自転や公転による遠心力を感じたりはしない。そのために地球が遠心力で徐々に楕円になっていっていることにだって、生きている限りでは気づくことはない。
だが銀河系・銀河団規模で見た時、それらの天体が生み出す遠心力は相当なものになる。人間は遠く離れた銀河団の遠心力までもを理論的に計算することができているというのだが、「計算上遠心力によって作られるはずの楕円」と「現実の銀河団の楕円」では、現実の方が厚みがあるのだそうだ。
ということは遠心力による外向きの力に対抗する、星々を引き寄せさせる力=重力が働いていなければならない。
その重力を生み出しているのが「ダークマター」なのだそうだ。
だがダークマターは人間の生み出したセンサーでは未だ観測できていない。
「見えていないのに重さだけがある」というのは非常にロマンティックではないだろうか。
理論的にはもちろん仮定の物質があるわけだが、創作として扱うのであればそれこそ夢は無限大である。
それともう一つ、「真空のエネルギー」というのもかなり中二心をくすぐるワードだ。
エネルギーとはwikiでは「仕事をするために物体内に蓄えられた力」だそうだが、本書ではおそらくもっと単純に「物体が存在するために必要な力」を指しているように思う。
さらに真空はただ空気がないというだけでなく、すべての物質を取り除いた「純粋な空間」のことだ。
つまりこの3次元だか4次元だかの空間は、例え何もなくてもエネルギーを持っているらしい。さらに真空のエネルギーは常に一定で、正のエネルギーなら膨張、負のエネルギーなら収縮していくのだという。
では仮に人間が「真空のエネルギー」を取り出せるようになったら、どうなるのだろうか?
なんとなくのイメージではエネルギーは使えば減る(というか別の形に変換される)わけだから空間そのものが膨張しそうだが、正負でそもそも膨張収縮しているものからエネルギーを奪った場合はザ・ハンドのように空間ごと消滅したりするのだろうか。
まあ、とにもかくにもまずはこの新書を理解するところから始めよう。
久しぶりの勉強だ。
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