全裸の呼び声 -45- #ppslgr
もとより人質とは、ニッチもサッチもいかなくなった者の悪あがきではあるが、それでも道連れにしようとした相手が助かったことにオク・ダークは少なからず硬直した。そしてその間は、迫りくる死を前にしてあまりにも致命的であった。チェーンソーのけたたましい駆動音が夜空に鳴り響く。
ギリギリのタイミングで、巨大タコは自身をかばうように触腕を振り上げるも、何もかもが遅かった。高速回転惨殺チェーンソーが、紙すだれを裂くほどのたやすさで触腕を切り飛ばす。紫紺の血しぶきをかいくぐり、白い狩人がオク・ダークの眼前へとたどり着いた。
「待った!タンマ!小生が悪かった!見逃してーッ!」
「それはダメだね。触手に三度つきあわされるのはゴメンだし」
「アッ、嗚呼ーッ!?」
みっともない悲鳴を上げて後ずさろうとする巨大タコだったが、銛の返しが非情にもその身をビルへとつなぎとめた。チェーンソーがひらめく。
「露ッ!露露露ッ!露ーッ!」
常人には理解し難い断末魔。アノートは逆袈裟にチェーンソーを振り上げ巨大タコを斜めに切り裂きざまに飛び上がって、銛の鎖を蹴ってもう一段跳躍から振り下ろす!巨大な気球めいた頭部にチェーンソーが食い込み、回転刃が肉を引きちぎってかち割り内蔵をかき回す。噴水のように人外の血が舞った。
「わお……」
もはや戦闘ではなく、解体となったその行為は痙攣するオク・ダークを丹念に丹念にバラしていく。人を超え獣を超え怪物となった今であっても、ああも執拗に破壊されれば存在を維持するのは難しい。事実、タコの脈動は見る間に弱まっていき、すぐにピクリとも動かなくなった。屋上には元がおぞましい何かであったことくらいしかわからない残骸だけが残る。
「終わったよ」
「念入りなこった、化け物相手なら正解だが」
「むう……トドメを刺してしまったのか?」
「申し訳ない、アレを無力化したまま拘束する手段がなかったモノで」
「いたしかたあるまいのう、また暴れられても面倒じゃわい」
レイヴンは輝ける露出者から床に降ろされると、若干ふらつきながらも何とか立ち続ける。
「さて、ちゃんと会話するのは初めてだったな。こっちはレイヴン、そっちはアノート教授。大体お察しとは思うがドブヶ丘に暗躍する露出会の調査とこの事態の解決のためにここにきた」
「ほう、つまり、ワシと目的の半分は一緒、というわけじゃな?」
「そういうこと」
「であれば、改めて自己紹介せねばならん。ワシは裸道流家元にして当代継承者、全中裸男である!気軽にラオと呼んでも良い!」
「それなんだが、露出会と裸道流とやらは実際対立関係なのか?」
「いかにも」
「正直、俺には違いがわからん……何が違うのやら」
深い溜息をついたレイヴンに対し、ラオは神妙な顔で答えた。
「それを話すのは構わぬのだが、場所が悪いじゃろう。特にお前さんには休養が必要じゃな」
「確かに。私もここで立ち話はしたくないかな」
【全裸の呼び声 -45-:終わり|-46-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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