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賽を振るは、神か人か -1-

「おはようございます、マスター。戦闘行動を開始します」
「頼むぜ、クリス」

 爆炎渦巻く廃墟都市上空を乗騎である黒い装甲死神めいた機動兵器、イクサ・プロウラに搭乗して飛行する俺の耳に通信をつないだパートナーのやり取りが届く。

 こちらより低空地面すれすれを疾駆するのは、これまた黒色の機体。曲線装甲と背部にはダイスを六つの長方形に切り分けたかのような推進器を負い、両手には重機関ライフルとグレネードランチャーを携えたその機体は、武力衝突を繰り返す二つの集団の真っただ中に突っ込んでいった。

 銃弾飛び交う中、二軍の合間にその機体が滑り込み様!手にした重機関ライフルの大口径弾が掃射!色とりどりの雑多な人型兵器群が次々とハチの巣にされる!

「イイイイイヤッハアアアアアアア!!!!!」

 右舷の敵軍をずたずたに撃ち抜いたかと思えばバレリーナの様に回転してからの左舷へのグレネード連射!反撃の銃撃をスライド回避しながら壊滅させていく!

 やがて両手の武器を使い切ったかと思えば背部の推進器内コンテナから次た短銃身マシンガンを引き抜き、パルクール回避運動と殺戮射撃を両立した動きで生き残りを次々と大破させていった。

「クソッ!誰の差し金だ!」
「ただの通りすがりってなぁ!」

 友軍を盾にファーストアサルトを凌いだ灰褐色の量販機が敵意をむき出しにしたところで即座に二挺マシンガンによる猛射によってスクラップ破壊。その背を狙った都市迷彩色の狙撃機の存在を俺は見逃さない。

 猛禽類の狩りめいた急降下から抜刀一閃、太刀のひらめきが狙撃機を頭から両断し粒子崩壊へと追いやった。自然と黒色の友軍機と背中合わせとなれば、俺達は数えきれないほどの光の帯、そして銃弾を周囲に回転投射!

 俺の目が回るよりも早く蹂躙が終われば後に残ったのは瓦礫の山であった。

―――――

「シブい」

 翌日の朝、昨日の暴徒鎮圧依頼の報酬額をスマホでもって確認した俺の第一声がそれだった。高々二人に押し寄せる暴徒を押しとどめるのをやらせておいてコレとはまったくもって政府はケチ臭い。

「そっかぁ?俺は臨時収入はいってありがたいけど」

 おそらくはいつもの黒ずくめと相まって大分不機嫌に見えているだろう俺に、気兼ねする事なくその青年は返事を返してきた。服装と言えばミリタリーとカジュアルをバランスよく折衷させたような感じにラクーンめいたこげ茶の髪を短く切った人物。

 そのすぐ傍らには球体が羽もなしにふよふよと浮遊している。AIが使用するドローン型端末だ。

「すぐ済んだから時給自体は悪くないが、相場の3割引きたぁいただけない」
「ハッハ、向こうもすぐ終わるとみてたんじゃね?」
「だとしても余り足元を見られるのは良くない、実に良くないな」

 過疎地とはいえ緊急ではあったので二つ返事で受けてやったらコレである。まったく誰も彼も人を安くこき使うのに執心し切りというものだ。次はその辺きっちり詰めてやらねばなるまい。

【賽を振るは、神か人か -1-:終わり:-2-へ続く

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