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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十三話 #DDDVM

少年の制止を他所に、見事に咲き誇った水華はあまた重なる花弁のそこかしこより波紋をほとばしらせ、水撃を吹き散らす。あくまで地面を狙った一撃なのは、集落への誤射を嫌ってのことか。

やむなく抜刀したリューノ殿が、猫科肉食動物の低姿勢めいて駆け抜けては水華の根幹へと刃を振るう。かたやシャンティカ君はバク転側転から距離を撹乱した後、術者本体を避けての射撃を行うもことごとく花弁に埋もれて有効打とならない。

そして二世殿は、どういう技術か水撃の一線をことごとく最小限の動作で回避していた。彼の戦闘能力については未知であるが、少なくともここで披露する気はないようだ。

一方で私といえば、ワトリア君とサーン少年に累が及ばないよう、ワトリア君のメガネを通して防御場を構築していた。私自身がその場に行ければ話はまだ早いのだが、今度は私の姿を目にした村民がパニックに陥りかねない。こういう事態では、竜の身の不便さを痛み入るものだ。ワトリア君の眼前で水撃が弾けて水しぶきに変わり、短い悲鳴もあがる。

「怒り狂った水精<ウンディーネ>でもここまで攻撃的じゃないわ!こっちの呼びかけは耳に入ってないし、矢はのきなみ水塊に飲まれて弾かれてる!」
「相手もこれほどの術式をいつまでも維持は出来ないでしょうが、我々の方が先に追い詰められます。シャール殿、何かいいアイデアはありませんか?」
「そうそう、どうにかここまで来たのだから、ちゃんと丸くおさめていただきたいね探偵君?」

三者三様にこっちへ話を振ってくるが、これで策なし案なし手も足も出ないとなれば私の信用はガタ落ちだろう。もちろん、打開策はある。

「ワトリア君、申し訳ないが少しだけあの水華に視線を向けてほしい」
「えっ、あっ、はい!わかりました!」

私の要請に応えてくれたワトリア君が、水華を視界に入れた瞬間に合わせて次の魔術式を稼働させる。ワトリア君のメガネには、緊急回避用に遠隔操作可能な魔術具としての機能も持たせてある。しかして残念ながら、あの規模の相手を一息に無力化出来るほどの出力はもたせられていない。

一瞬のうちに、私の視覚へ通常は視認されない魔素、マナの流れが克明に認識される。それは糸引きで操るマリオネットのように、水華の内部へ骨格的に組み込まれていた。魔術といえど人為的に操る以上、そこには力の流れが生じる。

つづけて、水華の骨格、上下それぞれ二箇所の計四箇所に向かって次なる魔術を起動。それは暗殺者が好む吹き矢さながらに、赤い矢羽となって水華へと突き立った。水面に赤いインクを落とした様に、透明な像に赤の文様がにじむ。

リューノ殿は、私が声をかけるよりもなお早く眼前の赤い点を切り裂いた。続いて、クラゲの触腕同様に振るわれる水の一撃をくぐり抜けてもう一点を目指す。

「今ポイントした箇所を狙って一撃を!」
「わかったわ!」

リューノ殿につづく形で、シャンティカ君もまたマーキングされたポイントめがけ矢をつがえる。

【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第四十三話:終わり|第四十四話へと続く第一話リンクマガジンリンク

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