冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第十八話 #DDDVM
遭遇戦を複数回こなした後、相変わらず見かけは変化に乏しい迷宮内についてシャンティカ君が言葉をこぼした。
「この事件、もし犯人がいるとしたらこの中に誰にも気づかれずに潜り込んで、この地味に厄介な公の使い魔を全ていなした上で、おそらくは奥の奥にしまい込まれてる遺物を盗み取ったって事なわけ?」
「まあ、君の言う通りだとも。シャンティカ君」
「はぁ……自然死の方がまだ筋が通りそうよ。だってほら」
彼女は自分たちが進んできた、幾度となく曲がった道を振り返って見せる。
「床にだって、私達の足跡でさえ入り口には残ってたのに、先客の痕跡は何一つ見つかってないの。本当に誰か先に入ってたのか……疑わしくもなってくるわ」
「君が注意を払っているのは人間の痕跡かい?」
「そうよ、まあこの中に入れる頭の回る生き物については極力考慮しているけれど……それにしたってなんにもなさすぎると思うんだけど」
「魔術の跡についてはどうかな」
「そっちについても、注意は払っているって。でも実際に使われていたとしても自然に存在するマナと見分けがつかないほど霧散しちゃってる。正直探知出来ないわね」
「ふむ……」
「これって、いわゆる不可能犯罪じゃないの?」
不可能犯罪、それは文字通り実現不可能の様に受け止められる犯罪のことだ。常識的な観点であれば、彼女の主張はまったくもって正しい。近年発達が進みつつある科学も、錬金術も、魔術もまた万能ではない。だがそれは通常の使い方での話だ。
「確かに、君の主張する通りこれは一見不可能犯罪、のように見受けられる」
「でも、女王陛下はそうは思っていないって訳?」
私とシャンティカ君が相談を交わす間、ワトリア君はというと私の視点からは伺いしれないがおそらく居心地悪そうにしていることだろう。なにせ実質的には彼女が応対しているようなものだからだ。本当は彼女のかけた眼鏡越しに私が対応しているのだが。
「即断するには、判断材料が足りない、という所だね。これと言った証拠が見つからなければ、それを元に私が現実的にも不可能な行いで、公は自然死したと陛下にはご報告するよ」
「お願い、偉い人達に弁舌でなんとか納得させるなんて、私にはどだい無理だもの」
「任されました」
引受はしたものの、これを不可能と証明するのも俗にいう魔族の詐術、に入るだろう。まったくもって厄介な案件に関わってしまったものだが、麗しき女王陛下たっての願いとあれば、竜である私とて苦労の一つもせねばなるまい。
気を取り直して進もうとした一行だったが、その時のことだ。ワトリア君の眼鏡越しにも明らかな振動が迷宮の壁を揺らしたのは。
「え……?」
「二人共、私に寄ってください!離れないで!」
「は、はい!」
「了解!」
今まで冷静さを保っていたリューノ殿が逼迫した様子でもって二人に警戒と密集を呼びかける。背中合わせで周囲を警戒する三人を置いて、迷宮はまるで積み木細工を組み替えるかの様に入れ替わり始めたのだ。
【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第十八話:終わり|第十九話へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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