冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第三十四話 #DDDVM
「話を戻すと、探偵君には首謀者、犯人を見つけてほしいのだよね」
「それについては、既に王家からも要望を受けておりますので構いませんが、よろしいければあなたの意図をお伺いしても?」
「ああ、なに。君が警戒するような理由ではないとも。僕らにはそもそも肉親の情とかそういうものはないし、そもそも絶対毀損されたくないのであれば、王家の頼みも断って地の底に引きこもっていたほうがずっと安全だったろう。要するに、父はいずれは攻略されるのを待ち望んでいたんだ」
レオート二世殿は、その非人間的外見からは想像し難い人間臭い振る舞いで淡々と彼らの信条を述べる。
「誰かに殺されるのを待ってたっていうの?」
「その通り。まあ財宝の獲得を目指すのであれば、特段僕らを害するのは実は必須条件ではないのだけれど……こうして価値のあるものを腹に抱えている以上いずれは、ね」
「ごめんなさい、ちょっと私にはその心情まではわからないけれど、あなた達の望みがそうであった、のは理解したわ」
「ありがとう、ミス・シャンティカ。ただ、実際打ち破られた後だと問題もあってだね」
二世殿は、大仰な仕草でため息をついてみせた。彼の身体に本当に呼吸機能があるのかは、少々疑わしいが。
「僕らの想定の範囲だと、制覇者は直接生身で内部を探索すると考えていたんだよね。君たちの言うところの魔術は、僕らには知覚できないにしても、今までは遠隔操作は難しいものと捉えていたわけで……だからこそ裏をかかれたのだけれど」
「もしかして二世さんは、犯人に会いたいだけ、なんですか?」
「そう、おっしゃるとおりだよミス・ワトリア。彼が持っていった物品を考えれば、悪人の可能性は低いし、もう一つ懸念もある」
「王家が犯人を迷宮を制覇した英雄ではなく、犯罪者として断罪することですね?」
私の指摘に、彼は重々しい所作を伴ってうなずいた。
「父と今の女王陛下はとても親しい間柄だった。それに人間ってのは自分たちの損益でどう動くか変わるからね、僕らが王国にとって害ある存在なら、彼は英雄扱いだったろうけども。残念ながら今の僕らは王国の国有財産的存在で、彼はそれを毀損した訳でもある。なので、僕の預かり知らぬところで、意中の人が処断されるのを防いでほしいんだ」
「お受けしましょう。他の皆も構いませんね?」
私の確認に対し、三人は三様に同意してみせた。
「当の被害者がそう言ってるなら、私に断る理由もないし」
「はい、それに丸く収められるならそれに越したことはないと私も思います」
「同意します。我々への依頼は迷宮公の調査であって、犯人の処断までは含まれていませんから。そうでしょう、シャール殿」
「可能であれば見つけてほしい、とまではお願いされていたけれど。そこまでだね」
とはいえ、安請け合いはしたものの、王家に先んじて……となれば彼らの情報網が犯人候補をキャッチするよりも更に早く動かなければならない。これは少々、忙しくなってきそうだ。
【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第三十四話:終わり|第三十五話へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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