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ライフ・イズ・エンターテインメント!-4-
「そんな事私に言われたって、こっちだって人間のニューロン活動をエミュレートしてるだけなんだからわかるわけないでしょ?」
K/Rと異なり艶やかなブロンドを腰まで備え、品よくお姫様カットに切りそろえた髪型にフレンチ・メイドスタイルの衣装をまとった如何にも少女の様に見えるA/Mは俺に対して口先を尖らせて答えた。
「まあ、そうだよな」
「アンドロイドに人間の事を聞くなんて、そんなにも自分達の事が解らないものなの?」
「そうとも、意外とまだまだ人間は自分の事を知らないのさ」
「ふうん、でもおあいにく様、私は貴方達を模倣しているだけなんだから、貴方達が解らない事は私にもわからない、そうでしょ?」
「全くもっておっしゃる通り」
つんけんした態度のA/Mに肩をすくめて見せるとH・MとK/Rの二人を流し見る。H・Mは腕組みしたままうんうん唸っては時折天に腕を突き出して吼え、K/Mは黙々と動画を視聴し続けている。
「すまん、邪魔したな」
A/Mに背を向けた俺に彼女から一言お声がかかった。
「変化」
「変化?」
「そう、変化」
振り向いた俺に彼女は実に良くできた天使の様な微笑みで告げる。
「人間の情動パラメータは観察している事象に大きな変化があった時に大きく揺れ動くわ。少なくとも私が学習した内容はそういう風になってる」
「なるほど……変化、か」
「そういう事。後は自分で考えなさいな、私はY・Gと約束があるから」
A/Mは手にしたCORONAを俺に押し付けるとウェイトレス服のままで、入口へと姿を見せた分厚い丸サングラスをかけ、鮮烈なイエローのジャケットをまとった屈強な男、Y・Gの元へと駆けていく。
「ね、ね、今日は何処の取材?」
「物理肉体の購入基金を募集して予定の1000倍集めた仮想アイドルが相手だ」
「なにそれ、どうかしてる」
「まったくだな」
出来立てのカップルめいて積極的に腕を組むA/Mと、拒絶も抵抗もせず腕を組み返すY・Gの背を見送る。少し見ないうちにまた随分と進展した物だ。その一方で今問題の二人は……今のやり取りの間にも特に進展はなかったようだ。そんな二人の元へと戻れば改めて着座する。
「お~ぅ……何か手がかりになるような話はあったのか?」
「変化だ」
「変化ぁ?」
眼球アイコンをゆがめて訝しげにこちらを見るH・Mだがすぐにハッと目を見開く。あくまで覆面の目ん玉アイコンを、だが。
「確かに盛り上がる展開ってのは変化に富んでいるもんだよな、それか?」
「それだ。人間の情動ってのは五感で受け取っている情報に左右される。これをエンタメの基本的な流れに当てはめて考えると」
「一番盛り上がる所を最初に持ってきたら後が続かなくって見ている側がテンションダウンにつながってしまうってことだろ?」
「そうだ、俺も一度やらかしたことがある。特に格闘技などの対戦試合では開幕一発KOなんてした日には返って盛り下がりかねない、決着がついた時点で終わりだからな」
俺の指摘に今日の件を思い出したのか深々とデカいため息をつくH・M。ブンブンと力強くかぶりを振って過ぎた事を振り払うと改めてこちらに向き直る。
「そこまではいい、人間とエンタメの関係については改めてわかった。しかしK/Rにそれを噛み砕いて教えられるってのか?」
「ああ、問題はそこだが……さて、はて」
人間は受けた刺激に対して反応する。そしてエンタメにおいてはその刺激量のペース配分が重要となる。これをどう落とし込んだものか……
【ライフ・イズ・エンターテインメント!-4-終わり:-5-へと続く】
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