冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第三十七話 #DDDVM
この中継点となる魔法陣は等間隔で各所に設置されている。
その事を彼らにも教えると、私は再びパーティを伴って空へと舞い上がった。
「先生、もう何処に行けばいいか把握されているんですか?」
「もちろん、君たちが迷宮から出てくるまでの間にね」
如何に竜といえど、自らの足で一つ一つ探していては手間がかかってしょうがないが、先程の魔術を広域展開すればさしたる時間もなく手がかりを探すことが出来た。非常に便利ではあるが、大気中に十分な水分が無いことには使用出来ない点には注意が必要だろう。
平原を越え、木々のまばらな林を飛び越し、いくつもの地形変化を見届けた私の視界に、豊かな水量をたたえた湖とそこに寄り添う山村がうつってくる。
手がかりとなる魔法陣はあの村を中心に複数が等間隔に設置されており、その点からも彼処こそが首謀者の拠点であることを私は推測していた。
あまりに距離を詰めて着陸してしまうと、村民を怖がらせてしまうと判断した私は、村から大分離れた茂みへと着陸する。
「この先にあった村が目的地だ。私が近寄れるのはここまでだからよろしく頼むよ」
「わかりました、でもどうやって突き止めれば良いんでしょうか」
「あの村に、直近で回復した重病人がいるはずなんだ。あんな小さな村では隠しようもなく噂になっていると思う。そこをたどってみてほしい」
「やってみます」
一行は私の側から、足早に村へと向かっていく。少々距離があるので致し方ないといったところだ。
「いよいよ、姿消しの魔術も研究しないといけないかもね」
毎回毎回この距離を歩かせてしまうのは、ワトリア君をはじめとする同行者には申し訳ない。
―――――
湖畔の村は、近くに竜が降り立った事には気づく事もなく平穏を保っていた。ご婦人方は昼下がりの雑談を楽しんでおり、こちらの一行に気づくとにこやかに会釈をしてくれた。ワトリア君達も合わせて挨拶を返す。
「あら、旅の人かい?こんな何もない村に珍しいねぇ。なにもお構い出来ませんけどゆっくりしていってらしてね」
「ありがとうございます、私は王都の医学生でして……こちらに難病を患っている方がいらっしゃるとお聞きして参りました」
「ああ、そうなの?」
ワトリア君の機転は良い判断だ。医術の徒であることを明かせば、病床にある者を探しているのはなんらおかしくはない話なのだから。
事実、ご婦人方はすんなりと私達が求めている情報を提供してくれた。
「それはきっとエリシラ先生のことね、湖畔に一番近い家にお住まいだけど……もう治ったそうだから無駄足になってしまったんじゃないかしら?」
「いえいえ、希少な症例と聞いておりますので、寛解状態に至った経緯だけでもお聞きできればと思います」
「王都の学生さんは勉強熱心なのねぇ……頭がさがっちゃうわ、うふふ」
「まだ若輩ですから、はい、がんばります」
一行はご婦人方にお礼を告げると、教わった湖畔のほとりへと向かっていった。その合間に、シャンティカ君は首をかしげて疑問を呈す。
「私達、結構な見た目の一団だけど、怪しまれなかったわね」
「普段から平和なのでしょう、この辺りは」
「覆面兜が二人いても大丈夫って、結構な平和ボケじゃないかしら。騒がれるよりはいいけれども」
【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第三十七話:終わり|第三十八話へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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