バッドドラッグ・バッドラック 【ショートショート】
ヤクをキメると、いつも決まったユメが見える。
「ギャハッ、ビョーキじゃねぇのそれ?」
んなこと誰にも相談できねーからよ、ダチの辻斬りホストのジャコに言ったらこれよこれ。それでもヤツは気のいいマブダチだから深堀してきやがった。
「どんなんが見えるってんだ?オレっちはいつもちげぇ天使様がユメみせてくれっけどよ」
「あー……ふっるい紺のセーラー服?ってやつに、クソマジメな黒いストレートのJK?」
「いーじゃん、いーじゃん。惚れられてるってヤツゥだろシデキィ」
「バカ言え、キメててもそこまでラリってねぇよ」
「ヘハッ、どーだか」
チームの盛り場なカラオケ部屋で追加のドラッグをキメれば、ステッカーだらけの雑多な壁がぐにゃりと歪んで虹の華が咲く。
いつものJKはいつもどおり、俺の眼の真ん中に居座っている。
このガキの顔は、ウザい前髪に覆われてて顔立ちの造形すらわかんねぇ。
いつもはそのままゆらゆら立ちすくんでいるんだけどよ、今日は違った。
ワカメみてえにふらふら俺の目の前までよって来たJKは、俺にのしかかって遮光カーテンじみた自身の髪に手をかけて。
「おい、シデキィ……?」
女の顔には、宇宙が、星が瞬いていた。
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
南無三!裂帛のカラテシャウトと共に冒涜神アンスニャグラの首が吹き飛ぶ!人形の様に幻覚内で転倒する首なしJKを呆然と凝視するシデキ!シデキの幻覚に乱入してきたのは……柿渋染のニンジャである!
「危ないところであったな」
「あ……あ……?」
「あやつは幻覚の狭間にて邂逅した相手をむさぼり、己の糧とする邪悪冒涜神。オヌシのように幻覚に耽溺している者に眼をつけて喰らいつくすのだ。わかったな?わかるがよい」
「は……はい。ワカリマシタ」
「よし。今後は麻薬には手を出さず真面目に生きるのだぞ」
失禁したシデキを置いて、謎めいたニンジャはまほろばの様に姿を消した。
「お、おいシデキ、大丈夫かよ」
「ジャコォ……俺、ヤクやめるわ……真面目に生きる……そうしろってニンジャが……」
「ハァ?」
この後、シデキは宣言通りドラッグを止め、アウトローも止めて真面目に生きたという。お後がよろしいようで。
【バッドラッグ・バッドラック:終わり】
これはなんですか?
そういうことです。わかりましたね?
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ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!