ガイズ・ミーツ・怪獣 -1-
緑満ちる山々の中、子供が誤字を誤魔化す時のノイズをウルトラサイズにしたような奇怪なる巨人が名状しがたい咆哮をあげた。
だが、目にすれば己の正気を疑う様な黒い巨人は、直後に自身に向けて放たれた太陽の如き光球を身に受け、絶叫する。地上の太陽を放ったのは城塞を下半身にしたかの如き重厚なる人型兵器。
太陽を逸らす事さえ叶わぬ怪奇黒巨人だったが、さらには真後ろから蒼光満ちるスフィアが飛来、無防備な背後に無慈悲に衝突。黒い巨人は陽光と月光に押しつぶされれば地上から完全に消滅した。
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「これ、倒したのR・Vであってるかい?」
「まあ、そうだが。正確にはM・Tとの二人がかりだ」
パルプスリンガーのたまり場、胡乱窟であるバー・メキシコにて俺はスマホにて『怪奇!黒い巨人現る!』などというナンセンスなタイトルがついた動画を見せられた後、そのような質問をぶつけられた。
問いかけて来たのはあつらえの良いグレーのスーツをまとった灰がかった髪の青年。雰囲気も良く、俺のようなうろんな黒髪黒づくめの男とはどうにもはた目からは不釣り合いに見えるだろう。
「なんで僕も誘ってくれなかったんだい!?」
「いや、あの時は急だった上に、M・Tから依頼された時にその場に居たのは俺……くらいで」
結構な剣幕で迫ってくる青年をなだめつつ、ちらりと向かい側のテーブルに座っている、紅いテング面にアロハシャツのパルプスリンガーに視線を送る。彼からは『めんどくせーから俺はいなかったことにしろ』のハンドサイン。ナムサン。
「うむぅ……実際僕がこれに気づいたのは動画が投稿された後だったし、間が悪かったんだ」
「そう、そうだ。決してT・Dをハブったとかそういう訳じゃないぞ、うん」
見るからにしょんぼりとした面持ちで現実を受け止めるT・D。あの黒い異界の神は実際結構な危険存在だったし、誰かに直に見てもらうために野放しするなどありえない話だ。
「せっかくこう、怪獣が実在するってわかった直後に討伐されてることまでわかるとか、おお、ブッダよ貴方は寝ていらっしゃるのですか!」
「この場合はちゃんと起きてた様な気がするが」
あの件は現世の面倒ごとを雑に俺に押し付けた所まで含めてブッダはばっちり起きてた気がせんでもない。俺の突っ込みが耳に入らないほど慟哭した様子のT・Dは盛大にCORONAを呷った。
「おや、怪獣をお探しですか?」
俺の前で怪獣と対面できない事を嘆き悲しむT・Dの様子を見て声をかけたのはこれまた整った雰囲気の執事めいた男性。ハッカー件パルプスリンガーのS・Cである。
「えっ、あっ、はい。でもどれもこれも霞の様な話ばかりで」
「確かに謎の巨大生物が実在するにしても、このテックの発展した時代に影も形も見えないという事は、相当に人間の目の届かないところに存在すると考えられますね」
「ですよねぇ……」
S・Cの推測に再び下を向くT・D。実際の所俺もあれやこれやと斬り捨ててきたが、いまだに怪獣は斬ったことがない。いやまて、竜は怪獣に該当するか?
「一つ、興味深い話を存じておりますが、お聞きになりますか?」
「はい、教えてください」
「わかりました。私が聞き及んだ話の一つに、未知の生物を研究していた施設があるとの事なんですが、その施設はいつしか放棄され、現在は廃墟となっているそうです」
聞いただけならありきたりな都市伝説だが、S・Cがわざわざ提供する情報であれば全く根も葉もないマボロシという事もないだろう。彼の情報収集力は、実際高い。
「その施設で研究されていたのが、なにがしかの怪獣であると?」
「残念ながら、生物の詳細な種別までは私の情報網では特定できませんでした。ですが断片的な情報の中で、確度の高い物に『通常の生物のサイズを大きく逸脱する』との情報を確認しています」
S・Cの語る情報に先ほどを打って変わって興奮した様子でこっちを見るT・D。待て、この流れは。
「探索しよう!R・V!」
やはりそうなるのか。皆、俺の事暇人だと勘違いしていないだろうか?
【ガイズ・ミーツ・怪獣 -1-:終わり:-2-へ続く】
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