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easytuning
引きこもりの国
もう一年ほど家を出ていない。でなくて済むからだ。
新型感染病だ、なんだと喧々囂々だったのも、まだまだ序の口で、もっと強力な流行り病が出てきた結果、私達は家に引きこもらざるを得なくなった。
「ま、私は元々ヒッキーだから関係ないけど。むしろ便利になったし」
在宅業の私に取っては、いやいやながらも社会が引きこもり奨励になった事で受けれるサービスも増えて万々歳だ。食料品から生活必需品まで運送ドローンが自宅まで運んでくれる。医療なら、診療遠隔操作ロボットが家までやってきて、お医者さんが見てくれる。病院への搬送だって自動運転車と無人看護機で済むし。そもそも出歩かないのだから、人から病気を移されることもない。生活習慣病だけはならないように、運動する必要があるけど。
外出しなければならない業種も、どんどん数を減らしていった。大体の仕事は、人間と互換性を持つ遠隔操作ロボットが開発された事で、自宅から彼らを動かせば済む様になったという。
人に会いたければ、インターネットを通じて仮想空間にダイブすればいい。最近はできの良いアバターが増えて電脳仮想空間は、美男美女ばかりだ。人の来ないエリアでは、ひと目もはばからずにおっぱじめてる奴らも居るらしい。エロは人間の根源的欲求だから仕方ないけど、そう、仕方ないんだ。だって、私だってこの一年は誰とも会ってないし、肌に触れてもいない。そうなれば人恋しさも募るし。
「彼に逢いたいなぁ……」
ふと、本音が口をついて出た。ネットでは毎日会ってるけど、そうじゃない。現実で、私に触れて欲しい。触れ合う事だけは、科学技術が発達しても代替できてるとは言い難かった。
「しょーがない、今日も君で我慢しますか」
キーボードを叩こうとした私の前で、当のキーボードに寝そべった毛足が長もじゃもじゃのウニ君に顔を埋める。誰にも会えない引きこもりの国で、ネコのウニ君だけが私の癒やしなのだ。
空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。
現在は以下の作品を連載中!
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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!
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