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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -8-
「空洞内の大気成分は地上の空気とほぼ同じ、上陸出来るわ」
「了解」
マグロ達が誘導した海底の洞窟、機動兵器二機すらあっさり飲み込むサイズのルートの先に有ったのはドーム状の広大な空間だった。内部には大気が満ちている様で、海底の奥底にしてはやや不思議な印象を受ける。
海底との接続部は湖の様になっており、岸辺らしき場所にはしっかりとした硬さの大地がある。さらにその先は高い坂になっていて、その向こうの様子はここからでは視認する事が出来なかった。
自身の機体を水面から浮上させ、すぐそばの岸へと着陸させると胸部のコクピットハッチを開いて外へと顔を出すと、感じるのは土の匂いの濃い空気の味。昇降用ワイヤーを掴んで陸地に降りた俺を迎えたのは甲高い歓声だった。
「わーっ本物だーっ!」
「あの時ぼく達を助けてくれた黒いナニカだ!」
「かみさまって実在するんだ!」
「ありがたやありがたや」
歓声があがった水面へ振り向くと、マグロ達が水面から顔を上げてはやし立てている。よもやマグロから歓声を受ける実績が解除されるとは……
「あのな、俺はお前らを食っちまうこわい生き物だぞ?」
「こわーい!」
がおーっと肉食獣めいたポーズで脅かしてみるもマグロ達は表情の読み取れない顔でキャッキャと盛り上がっている。俺に続いて、接岸したアルビノイルカの口腔にあたる部分から上陸してきたM・Hは微笑ましいのか柔らかな笑顔を見せた。
「あら、モテるのねR・V」
「こう懐かれると今後マグロ食いにくいな……」
俺の複雑な心境をつゆ知らず無邪気に盛り上がるマグロ達へ、M・Hが水面へ腰をかがめて問いかけた。
「ねえ、やっぱりあなた達がここに案内してくれたの?」
「いえーす!」
「ご主人様がね、助けてくれそうな人が来たら連れてきなさいって」
「しんでぃはぎせいになったんだ……助けを求めるためのひとばしらに……」
ふわふわした受けごたえで何となく要領がつかめない物の、マグロ達がここに案内してくれたのは彼らの主人とやらが招いたから、という事らしい。というかマグロに人柱というワードまで伝わってるという事実にまず精神をシェイクされる。
「ですって」
「ああ、手がかりがありそうなのはともかく、俺はだんだん自分の常識が風前の灯火となっている方が気がかりになってきた」
俺の冗談めかした愚痴に苦笑して肩をすくめるM・Hの瞳が何かを見出した警戒のそれへと変わる。背後にわだかまる何者かの存在感を俺もまた感じ取った。
「ようこそ、陸のお客様。そこから先は私が承ります」
振り向いた俺の視界にも映った存在は以外にも、人間の様に見えるナニカだった。髪は野放図に伸び果て何本もの触手が生えているようにも見える紫のウルトラロングヘアーに古代日本の和服の特徴をわずかに残した奇妙な服装。顔立ちからすると女性の様にも見えるが、見たままではないだろう。
「貴女がその主人とやら?」
「いいえ、私は眷属が一人に過ぎません。我々の名称は陸の言葉では発音しにくいので私の事はどうぞアハト、とお呼びください」
アハト、ドイツ語だろうか。どうもいにしえの時代より、海底に誘い込まれたのは日本人だけではないらしい。
【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -8-:終わり:-9-へと続く】
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