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パンドラ・イン・ジ・オーシャン -6-

俺達がわずかに海底を照らすライトの光すら覆いつくさんほどの奇怪生物・ブラック海坊主の群れがこちらに迫る。囲まれたら振り払うのは困難だ。

「疾ッ!」

気合と共に機体各部推進器を噴かすと大型ブラック海坊主に刀を突き立てたままに末端まで深々と切り裂き振り向く。やはりマグロを始めとする魚類が飛び出すばかりで体液らしきものは視認出来ない。もっともここは水中なので体液の色素が薄いのだとしたら見てわからないのも仕方がないが。

「R・V!そのままこっちから離れて!」
「了解!」

意図を聞くまでもなく推進を維持し白鯨から距離を取る。魚には見えないこちらには興味が薄いのか、ブラック海坊主の群れは白鯨の方へと密集。あっという間に黒い鞠玉の様にブラック海坊主の球が出来上がった。

だが、俺の視界を埋めんばかりの巨大な球は次の瞬間に内部から突き出した無数の針に貫かれ四散、ボロボロになって剥がれ落ちるブラック海坊主をさらに長い針の叢が幾度となく貫き引きはがしていく。

黒い断片を貫きながら姿を見せた白鯨は今やオバケハリセンボンめいた無数の針を全身に備えた姿だ。しかもただ鋭いと言うだけでなく、刺突箇所を振動によって分子結合崩壊にまで追いやっている。さしものブラック海坊主も分子レベルで破壊されれば存在を維持できない。

だが白鯨に密集し、そして一網打尽にされた分を差し引いても全く減っている気がしないほど、黒い影が次々と寄り集まっては押し寄せてくる。

「M・H!こっちもデカいのかますから距離を置いてくれ!」
「ええ!」

ニューロンを経由した機体制御により、自機である黒騎士イクサ・プロウラの背後に六角形を棒状に引き伸ばしたかのような板を複数物質転換を行う。
次にセンサーから得られる敵の位置を脳裏でロックオンから、出力した板こと火力極制限版フォトントーピードーへ誘導指示。この間コンマ0.01秒。

「ターゲットロック……征け!」

俺の号令と共に六枚のトーピードが殺到するブラック海坊主を切裂きながらイナゴ禍めいて押し寄せる影の群れの奥まで達した瞬間に、昏い海底は青白い烈光に染め上げられ、照らし出された。

球状の輝きが見る間にブラック海坊主を飲み込み消滅させていく。海底を一時的に昼に変えた輝きはすぐに消失し、何もなかったかのように元の静かな海底に戻った。だが、

「相当数を減らしたはずなんだが、参ったなこれは」

どうやら彼らには恐怖という概念は存在しないらしく、同胞が跡形もなく消し飛んだにも関わらず追加が後から後から湧いて出てきた。

「いっそ穴をふさぐように破壊するか……?いや」

穴を塞いでもただの一時しのぎにすらならない可能性が高い、がれきの隙間からも湧き出る事が可能だとすればただただ俺達が調査困難に陥るだけだ。

「R・V、余力があるうちに一旦退いた方がいいと思う。このままじゃジリ貧だわ」
「同感、もう少し敵を知らない事にはテッポダマがいいとこだな」

力押しで根絶するには余りにも敵の情報が不足しすぎている。その上この物量とこちらには不利な深海と言う状況を天秤に乗せた結果、ここは退くべきとの認識で一致した。

「俺が迎撃する。M・Hは牽引を頼む」
「わかった」

機体の左腕から楔付き鎖を生成して白鯨に放り連結。速度を増してポイントから離脱せんとする白鯨に引かれ、俺もまた乗機ごと奈落の穴から引き離されていく。

【パンドラ・イン・ジ・オーシャン -6-:終わり:-7-へと続く

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