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診断メーカー「飛べない鳥は」

※診断メーカー「あなたに書いて欲しい物語」
https://shindanmaker.com/801664
※「飛べない鳥は不幸でしょうか」から始まり「だから、その瞬間までは」で終わる。
1120文字以内
※[囀る鳥は羽ばたかない 二次創作]

飛べない鳥は不幸でしょうか。

「…ペンギンさんが言いました『僕は鳥だけど飛べないんだ。君の飛ぶ力が必要だよ』スズメさんは、今こそ自分が役に立つ時だと思いました」
百目鬼どうめきが絵本を読み聞かせると、幼い仁姫にきは素直な疑問を彼にぶつけた。
「どーめき、ペンギンさんはどうして飛べないの?」
百目鬼は少し考えた。
「住んでいる環境に適応して、そうなったんでしょう」
「てきおうって何?」
「場所や役割に合わせて、上手く生きていけるように身体が作られる…という意味でしょうか」
「じゃあ、ペンギンさんは飛べないけど、それはいい事なのね?」
百目鬼は頷いた。
「そうですね。多分、その方が幸せなんだと思います」
「ふうん」
仁姫は納得した様子だったが、百目鬼は内心、以前に似たようなやり取りをした気がして、記憶を辿った。

闇の中で照らされた横顔。矢代(やしろ)のマンション。居間のソファ。
百目鬼の膝に頭を載せ、ソファに寝そべる矢代と何気なく観ていたテレビに鳥が映った時、確か。矢代やしろが言った。
「生まれつき飛べない鳥って居んのかな?なあ、どう思う?」
「それは、生まれつき障害があるという事ですか? …居るかもしれませんね」
「そいつはどうなる?やっぱ巣立ちの時に落ちて死んじまうのかな?」
「おそらくは…」
「人間で言うなら高校卒業みたいなモンだよなあ…社会に出た途端『普通のルール』に馴染めない奴は弾き出される」
矢代は頭を回して百目鬼を見上げた。
「そう考えると、俺も含めてヤクザもんってな飛べない鳥みてえなモンだな。堅気の世界じゃやってけねーからここに居るワケでさ」
かしらは、堅気でもやっていけると思います」
矢代は苦笑した。
「今は、な。…卒業してすぐ三角さんに拾われなかったら、今頃どうなってたか。考えたくもねえなあー」
「……頭は、今は幸せですか?」
「は?しあわせえ?んだそりゃ」
矢代は顔を再びテレビに向け、呟いた。「……考えたことねえ……」
それきり黙り込んだ矢代の表情はなぜか、いつもより幼く見えた。闇の中、テレビのチラつく色彩に照らされて明滅する横顔を覚えている。

仁姫を学校まで送る車に乗せた後、百目鬼は神谷(かみや)と今日一番の仕事に向かった。助手席で百目鬼は車窓を眺めた。都会の朝、職場に向かって行き交う人々。

同じ空の下に居るあの人は、今、何を思っているんだろう。

一年が経った。百目鬼はあれからずっと、矢代の表情、眼差し、言葉のひとつひとつを、思い出しては考えた。

『お前を…どうにもできない』

次第に自分の成すべき事がボンヤリ形を取り始める。…きっと俺にしか出来ない。

いつか帰る、あの人の下に。

だから、その瞬間までは。

(1120文字)

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