あげくの果てのカノン

2020年11月16日 19:00

人類vs異星人。その戦争の最前線で繰り広げられる不倫ドラマ！

コミックレビュー第2弾は米代恭の「あげくの果てのカノン」です。
ネタバレは『重要なものは無し』！ただある程度ストーリーを紹介する過程で『ちょっぴり有り』というスタンスで行きます！

[主な登場人物]
高月かのん……主人公。23歳フリーター。高校の頃好きだった『先輩(堺)』に現在も熱烈恋愛中。周囲からはストーカー扱いされている。
堺　宗介……25歳。SLC(異世界生物対策委員会)のエース戦闘員。イケメンでメディアからは半ば芸能人扱い。
堺　初穂……宗介の妻でSLCの研究員。戦闘員の『修繕』と『心の変化』を研究している。
高月ヒロ……かのんの弟。血の繋がりはなく、かのんに片想い中。
(※他にも沢山居ますが長くなる為、省略)

地球にやってきたクラゲのようなエイリアン『ジェリー』の侵略に抵抗するため、人類は街を囲う広大な「壁」を築き、エイリアンと人類との戦闘を壁の中に封じ込める事に成功した。
物語の始まりは壁の中にある、とある喫茶店から。最近、店に来るようになったSLCの戦闘員、堺宗介の姿に盛り上がる店の女の子達。そしらぬフリをする高月かのんは、実は先輩の熱狂的なファン。店で先輩が使った砂糖の空袋や紙ナフキン等を密かに収集し、先輩の声を録音している。

↑自宅で先輩の声を再生し、悶絶中のかのんさん(23)
イケメン戦闘員、堺は高校時代にかのんを一度フッていて、現在は研究員である初穂という妻も居る既婚者。百戦錬磨の彼にとっては、かのんの彼に対する好意は隠してるつもりでもダダ漏れ状態。
チョロいと思われたのか、彼は気軽にかのんに話しかけ、誕生日を祝って欲しいと持ちかける。

先輩としてはちょっと危険なお誘いのつもりだろーけど、かのんの恋愛偏差値の低さを舐めちゃいけない！しばらく噛み合わない関係がつづく。　
かのんと堺の関係はいわば「アイドルと熱狂的なファン」かのんにとって彼を想うことは生きがいそのもの、と言っても過言ではない。

↑堺がSLCの演習を終える所を「出待ち」に向かうかのん

さて、イケメン堺くん。人類の救世主ともてはやされ、日夜、過酷な戦闘を繰り返す彼は、実は精神的にかなり危機的な状況にあった。

↑片腕でも快くインタビューに応対する堺隊員(25)

この世界では、即死レベルの重症でも、元どおりに完治する治療法が確立されている。『修繕』と呼ばれる治療法は、皮肉な事に「ジェリー」を傷に移植するというもの。……しかし一つ問題があった。『修繕』されると、味覚や好みなどの感覚と考え方が変化するというものだった。
堺の妻、初穂は『修繕』による心変わりを防止するべく研究に明け暮れる毎日。彼女なりに彼を思ってのことだったが、浮気を繰り返す堺に最近はすれ違い気味の日々を送っていた。
表向きは理想の夫婦を演じながら……。

↑職場の食堂にて。夫のスマホを味噌汁に漬ける妻……

境からすれば「変わって行かざるを得ない自分と、それを許さない妻」。彼なりに変わってゆく自分に苦しんでいるのに、プレッシャーをかけてくる妻に息苦しい思いを抱き、それが彼を女遊びに向かわせている一因とゆー悪循環。

堺はかのんとのデートで彼女をSLCに連れて行く。そこの標本室には、ジェリーとの戦闘でほとんど晴れる事のなくなった壁の中では珍しい植物が栽培されている。
夢のように美しい花畑での初デート、天にも登る心地のかのん。
……しかしデートは惨劇となって終わる。
(※序盤最大の見どころ、かつ、作者の意地の悪さに悶絶必至の名場面！ここはネタバレできまへん。しかし、めちゃくちゃ好きな場面)

↑堺目線でのかのん。この後、惨劇が…！！

……エイリアンと人類との戦争の最前線、しかし恋するかのんにとって、そんなのはどーでもよい事なのだ。
相手は人類の救世主で既婚者。彼女なりに不倫に悩みもするが、それはあくまで表面的で、徹頭徹尾、彼女にとっては彼が全て。
境も変わってゆく自分と対照的に、変わらないかのんと居る時間に心地よさを感じ始め…
次第にかのんも、周りから孤立してゆく。