【一人称を変える試み3】 あたいは猫だよ〜ん
英語には一人称がひとつしかない。日本語にはたくさんある。夏目漱石の「吾輩は猫である」で一人称を変える試みをしてみようと思った。
もしも30年前のコギャルが猫だったら
あたいは猫だよ〜ん。名前なんかまだないもんね。
どこで生まれたかなんてぜんぜんわかんな〜い。なんでもさ、薄暗いジメジメしたとこでニャーニャー泣いてたことだけは覚えてんの。あたいはここで初めて人間っていうの、それを見たんだ。しかもさ、あとで聞いたらそれは書生っていう、人間中で一番やなやつだって言うじゃない。この書生ってのはさ、時々あたいみたいな猫たちを捕まえて煮て食うっていう話なわけ。でもさ、そんときはなんもわかんないじゃん。だから、別に恐ろしいなんて思わなかったんだ。ただ、手のひらに載っけられてスーッと持ち上げられたとき、なんだかフワフワした感じがあったっけ。手のひらの上で少し落ち着いて書生の顔を見たのがいわゆる人間ってもんの見始めだったんだよね。このとき、ヘンテコなもんだと思った感じ、今でも残ってるよ。第一さ、毛で顔を飾るのがあたいたちの掟じゃん。なのに、ツルツルしていてまるでヤカンなんだわさ。そのあと猫にも随分遭ったけど、こんな変なのにはいっちども出くわしたことないよ。そんだけじゃなくてさ、顔の真ん中あたりが出っ張ってんの。そして、その穴の中から時々ぷうぷう煙を吐くんだ。あたい、むせちゃってさ、ジョーダンじゃないって感じ。これが、人間が吸うタバコってもんだってことは、やっとこんとき知ったんだよねー。
🔳 これをDeeplで英訳してみました。誤訳がありますが、そのままにしてあります。
I am a cat. I don't have a name yet. I don't even know where I was born. All I remember is that I was crying in a dark and gloomy place. It was here that I saw a human being for the first time. Moreover, later I heard that it was a “shosei,” the worst kind of person among humans. This “shosei” sometimes catches cats like me, boils them and eats them. But at the time, I didn't know anything about it. So I didn't think it was scary. But when they put them in the palm of my hand and lifted them up, I felt a fluffy sensation. I felt a little calm on the palm of my hand and looked at the face of the calligrapher, and that was the first time I saw a so-called human being. At that time, I thought it was weird, and I still have that feeling. First of all, it is our rule to decorate our faces with hair. But it was so smooth, it looked like a kettle. I've met a lot of cats since then, but I've never come across such a strange one. Not only that, but the middle of its face stuck out. And sometimes it would belch smoke from the hole in its face. I was so choked up that I felt like I was not Jordan. I finally learned that this is what a human being smokes.
Translated with DeepL.com (free version)
吾輩 [代]一人称の人代名詞。男性が用いる。
1 おれさま。わし。余。尊大の気持ちを含めていう。「—にまかせておけ」
あたい [代]《「あたし」の音変化》一人称の人代名詞。主に東京下町の婦女や小児が用いる。
らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。
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