父の身代わりになった人形
2013年5月のある日、家族で大事にしていた人形※の手脚に斑点のようなものが広がっているのを見つけました。(着物を着た布製の人形で、いわゆる日本人形ではない)
カビのようにも見え、とても奇妙な感じがしました。
急いで妹に伝え、「こんなところにカビなんて生える?いつも陽の当たる場所に置いていいて、暗いところにずっとしまってたわけではないし、しかも昨日までこんなのなかったよね?」と二人で不思議がり・・・・
「かわいそうだけど、気味が悪いから、新しい手脚を作って、つけかえよう」と言いながら、私は妹に
白いレース生地と綿を渡しました。
その日は確か日曜で、妹は午後からずっと自室にこもり、新しい手脚をつけかえるのに悪戦苦闘していました。
「4時間の大手術だったよ!」と言いながら、部屋から出てきた妹。
「キレイキレイになってよかったね」と二人で言い合い、一件落着!とばかりにその日を終えました。
ところが翌朝、私の携帯電話に母からの着信が・・・。
こんな時間にどうしたのだろう、と思いつつ応答ボタンを押すと
「かよ、心して聞いてね。パパね、昨日突然倒れて、救急車を呼んで病院に運んだの。
そしたらね、(ここから涙声で)ガンだって、末期だって言われたの。
脊椎にガン細胞があってそこからいろんな場所に転移してたって。
手術は昨日、4時間かけて大手術で。
命はとりとめたけど、一生寝たきりで・・・余命3カ月だって」
と言い終えるころには、泣き崩れてしまった母。
とうとうやってきてしまったか・・・こういう日が・・・と思いかけて、
はっと気づいたのが、4時間?
妹が帰宅すると、すぐに父のことを伝え、「手術4時間だって!」と言うと、
「えー?昨日わたしが、イコ(人形の名)の手脚をつけかえるのにかかった時間と同じじゃない?
手術をした時間帯も同じ!」
「えー?じゃあ、イコがパパの身代わりになったてこと?」
「いろんなところに転移してたっていうから、あのカビみたいなのが、ガン細胞だったわけ?」
そう気づいた私たち。妹はすぐさま母に電話し、この一件をことこまかに話しました。
「そういうわけだから、パパは絶対死なないよ!というか死ねないよ!大丈夫だからお母さん!」
昔の日本人は、人形を「ひとがた」と呼んで、人間の代わりに厄を背負って浄化してくれる・・・と考えていたっていうけど、本当なんだ!と思ったのでした。
「イコ、パパの身代わりになってくれてありがとう。あなたのおかげで助かったよ」と二人で、この何もしゃべらない小さな恩人にお礼を言いました。
ただのこじつけだと、思う人もいるでしょう。でも、私たち家族は、奇跡は起きると信じているので、この一件で、父は絶対よくなると確信したのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?