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映画『パラレルマザーズ』(性被害女性の観点から)

最後の投稿から、そして父が他界し、4年近くが経ってしまいました。
当初は、末期ガンで余命宣告を受けた父が、奇跡的に7年生きられたことを元に、アロマオイルの効果を綴るのが目的でした。近いうちに、このブログのテーマを見直すつもりです。

さて、ここからが本題です。

私自身が性被害者のため、映画で描かれる性的シーンが嫌いです。
日本では性被害者が多いです。
エンタメでは性的要素を誇張して描かれることが多く、
それが性加害を誘発しているのでは?と考えています。
現実世界での性加害者は、エンタメで描かれたシーンを模倣している場合があるからです。

過去に映画で脱いだ女優が何十年も経った今になって、
「性加害だった」「苦痛だった」「子どもでよく理解していなかった」と
告白することが、世界的にも増えてきています。

「女優は脱いで当たり前」という認識が
観客にまで刷り込まれており、
それでかえって撮影現場での性加害が発生しやすくなっているのだと思います。

観客側も観る映画は慎重に選んだ方がよい時代となりました。

今回の投稿では、
『パラレルマザーズ』を取り上げます。
批判的な考察なので、苦手な方はスルーしてください。

あらすじ等は、他の方のブログや記事を参考にしてください。
物語は、新生児取り違えとスペイン内戦での虐殺事件を軸に展開していきます。

女性カメラマンのジャニス(ペネロペ・クルス)は、
本業の傍らフランコ政権下の内戦で虐殺された故郷の血族や村人の遺骨を
集団墓地から移したいと考え、活動をしている。

その一環で遺骨の発掘を法人類学者アルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)に依頼、不倫関係になり、妊娠。
病室を共にした10代のシングルマザー、アナ(ミレナ・スミット)と同時に出産。
退院後、子どもの取り違えに気づいたジャニスがどう行動してゆくかが見どころなのですが。
ジャニスは家族とのつながりを、アナは自身の母とのつながりを再確認していく中で、さらにジャニスとアルトゥロとの不倫関係、アナとの同性愛が絡んできます。

そこで、描かれる性的シーン。

これが、大いに疑問が残る点なのです。
一つ目、シングルマザーになるのを覚悟でジャニスが妊娠を伝えたとき、アルトゥロから「自分には妻と子供がいるので今は産むのを考え直す」ように言われて、一度は距離を置いたのに、アルトゥロが妻子と別れたからと簡単によりを戻し、また易々と身体を重ねるか?

一般的に考えて、女性は一度中絶を促した男性に、再び身を委ねようとするだろうか?
女性によるとしても、ジャニスはカメラマンであり、独立心旺盛な意志のある女性。
そんな女性が、再び同じ相手の子を宿したいと思うだろうか?(アルトゥロとの最初の子は、ジャニスが取り違えに気づいた後、他界していた)

二つ目、アナの妊娠はレイプによるものだったのだが、
ジャニスと再び交流を持ち、お互いの子どもの取り違えを知った後、性被害者であるアナがジャニスへの好意を示すために体を求めるか?

異性にレイプされた女性が、同性に対して簡単に体の関係を求めるか?
また、産後の女性はホルモンのバランスによって、性欲自体あまり湧かないようになっているはず。
実際に性被害に遭ったことのある女性ならわかると思いますが、
(異性からの性加害で異性が嫌いになり、同性愛に目覚める可能性はあっても)
そう簡単に体の関係は求めないはず。

女性の感覚からいって、この二点はあまりにも不自然です。
ペドロ・アルモドバル監督は「女性讃歌」の作品が多いと言われています。しかし、この不自然さは、すべて男性の目線で描いたからでは?
映画とはいえあまりにも女性にとっては不自然に感じます。
また、性的シーンがあるために、スペイン内戦での虐殺事件という重要な要素の印象が薄れてしまい、余計に物語を理解しにくくしていると思いました。

例えば、アルトゥロとは仕事での付き合いのみに限定する。
アナとは姉妹愛、またはシスターフッド的な関係として描くこともできたのでは?

昨今では、映画製作上、異性愛だけではなく、同性愛も描くよう要請されているのかもしれません。LGBTQ理解増進という世の流れを受けて、異性愛だけでは不公平だということなのでしょうが、一つの物語の中で異性愛と同性愛、バイセクシュアルを一度に描くのは無理があると思います。同性愛は同性愛として、バイはバイとして、また別な物語で描けばよいのではと。

この作品の場合は、性的シーンがなければ、もっと多くの人から理解され、共感を集められただろうと思います。

この映画の中で、ジャニス役のペネロペはディオールのTシャツを着用しています。
そのTシャツには「WE SHOULD ALL BE FENINISTS」(私たちは皆フェミニストになるべきだ)というスローガンが書かれています。

女性向けアイテムを手がけ、本作に衣装提供したハイブランドのディオールは、映画で描かれる性的シーンは容認しているのか?

「フェミニスト」は巨大なスクリーンに女性の裸体が写しだされても
なんとも思わないのか?

インティマシーコーディネーターがいる現場で撮影されていて、
出演女優が性被害に遭ってなければOKなのか?

性的シーンのある映画があふれかえっていても、疑問はないのか?
女性観客の中に性被害者がいるとは考えないのか?
(酷い性被害に遭った女性は、性的シーンのある映画は観ないでしょうね)

エンタメで描かれる性的シーンが性加害を誘発する可能性については、考えないのか?

※ペドロ・アルモドバル監督やディオールを批判するという意図はありません。また、監督が性加害者だと言いたいのではありません。映画業界全体の在り方を、性被害経験のある女性として問いたいのです※

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