『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』を読みました
北山猛邦さんの『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』という本を読みました。
『猫柳十一弦の後悔』から続くシリーズです。
ジャンルは本格ミステリーです。
設定がとても面白いです。
探偵や探偵助手という職業が一般的に存在する世界のお話です。
大学に探偵助手学部というのが普通にあって、猫柳ゼミの先生が主人公です。
猫柳十一弦先生。ねこやなぎじゅういちげん、と読みます。
そのゼミに君橋君人くんと月々守くんという学生がいて、君橋くんの方がこの小説の語り手の立場で、猫柳先生の探偵としての活躍が描かれます。
普通の探偵小説は、事件が起きてからそれを解決するために探偵が推理していくお話ですが、このシリーズが特徴的なのは、これから起こる事件を探偵が未然に防ごうと奔走することが主題となっている点です。
脅迫状が届いたりして、これから事件が起こることが予め分かった状態で、犯人がどんなトリックで犯行を行うかを推理して、それが起こらないようにするのです。
主要人物のキャラクターもとても面白いです。
主人公の猫柳先生はとてもひ弱です。
でも類稀な推理力を持っていて、被害者を出さないためにいつも一生懸命になります。
そしてどうやら語り手である君橋くんに対して、単なる生徒や探偵助手という以上の感情を持っている様子なのです。
君橋くんは探偵業にとても真面目な性格であるが故、猫柳先生の気持ちにはなかなか気づきません。
そのあたりのもどかしい恋模様もこのシリーズの楽しいポイントです。
月々くんも真面目な学生なのですが、君橋くんと比べるとややチャラついていたり強引な性格な印象もあります。
良い意味で細かいことは気にしない大雑把さを持っています。
『猫柳十一弦の失敗』では、この月々くんが前半でとんでもない行動に出ます。
同じ学生の女子生徒が、猫柳ゼミの3人に相談を持ちかけてくるところからストーリーが始まるのですが、その解決の仕方が凄くて驚いてしまいました。
今までの推理小説には無い展開だったんではないでしょうか。
それは前半の話で、後半はもっと、これから起こるかもしれない事件の核心に近づいていく展開になり、猫柳先生が活躍していくのです。
キャラクターが豊かで、読んでいてとても楽しいシリーズで好きなのですが、シリーズはこの2作しか今のところ出ていません。
今回のこれで完結なのでしょうか。
そんな感じの終わり方にも読み取れます。
世界観とキャラクターがとても好きなので、できればまだ続いて欲しいなぁと思っています。