腐った性根を叩きなおせるのは俺だけ
また社長の思い通りに交渉を通してしまった。
舌打ちと共に渋谷を出る17時15分
今日は親友のバンドマンと三軒茶屋で待ち合わせしてお気に入りの本屋に行く約束をしていた
時間があるので喫煙所で一服
これで本当に良いのか?自分に確認する作業は恒例化した。
あの広告が流れる薄暗い箱の中で本を読みながら10分ほど自身に問いかけ渋谷を出る。
最近人と会話できていない。
会ってはいる。話す機会も多い。
だけど心が伝わらない。
このやるせなさが親友と好きな場所で会えることで癒えるんじゃないかと
期待していた。
田園都市線で三軒茶屋駅に降り立つ。
あいつは45分に世田谷線で着くらしい。
雨に濡れた情緒のある広場の一角
その柱にもたれながらアイツを待つ。
資本主義を上手く攻略している社長に説き伏せられて
心を失っている自分はただアイツが来るのを待つしかなかった。
イギリス風のファッションに身を包んで颯爽とヤツは来た。
僕は徹夜明けのポロシャツ。オシャレのオの字も無い格好で出迎える。
アイツ「おう。なんか久しぶりやな。」
1週間ぶりだけど長らく会っていない感覚にいつも落ちる。
多分お互い様。
雨がパラパラと降っていた
アイツ「イギリス人は雨が降っても傘は差さないんだぜ」
土砂降りになっても同じ口が利けるか個人的に楽しみだったが
ともかく目的の場所まで歩いた。
道中の記憶は残っていない。目的地の本屋に着いたが、生憎閉まっていた。心を溶かしてくれる本が沢山並んでいる個人経営の本屋に救いを求めたが神様は許してくれなかったみたいだ。
閉まっている可能性は考慮していたのでBプランに変更。お気に入りの喫茶店に連れて行った。
心を失っている自分には自白するのにピッタリだった。
「言葉を使うのがしんどい。本来言葉は借り物。誰かが定義したものをしゃべっているだけ。会話にならないんだ。届かないんだ。」
「物知り顔でアドバイスしてくる女の子がいたんだ。一緒にイベントとか開いてさ、多少理解しあえてるつもりの子。その子に今の苦しさを喋ってみたんだ。そしたら『私もそんな時期があった。その時はこうやって乗り越えたよ。』って。
やかましいわ。優しいのは分かるけどね。俺の苦しみが届かないんだ。決して。伝わると信じて言葉を紡いでも無駄なんだ。」
そんな感じでちょっとずつ話した。
するとアイツは一言
アイツ「記憶で喋ってるだろ」
思わず苦笑いした。やっぱりばれた。
アイツ「いつもそうだよな。感情が動いてない。」
アイツ「そんなお前が話す言葉で感化されるヤツらを見てて、いつも薄気味悪く感じてるわ」
「ね。そんな感じするよね。」
アイツ「ほら。今だって心動いてねぇよ。」
いまこの文章を書いている自分も心が動いていない。
僕が僕であるために闘い続けてきたけど
気づいたら魂を売り渡してしまったみたいだ。
その後の彼との時間は案外良いものになった。洋楽を流し続けるbarに行き、マイケルやエアロスミスのPVに没頭し、うずうずした俺たちはカラオケに2時間籠った。
尾崎豊やBUMP OF CHICKEN。時速36kmやamazarashi。心を代弁してくれる歌手は沢山いた。橘いずみの『失格』もよかった。
素晴らしいとしか言えない時間。声を荒げながら魂だけで歌い続けた。
正解なんてわからないが、魂や心を何よりも大事にしようとする精神だけは揺ぎ無く正しいと思える。
だけど何かが違う。所詮、歌も借り物。
俺がオリジナルで表現をしなければ満たされることはないと痛感した。
家に帰るなりshort動画を脳死で見始める。快楽漬けの自分に克を入れるため冷水のシャワーを浴びる。
そうして今noteを書いている。
すぐベッドから動けなくなる情けない俺を突き動かしてくれるものなんて
この世界に存在しない。
あるとすれば自分だけ。
また明日も僕が僕であるために生きていこうと思う。
救われない絶望感を胸に秘めて。