犬と暮らせば、2
いい年した大人がこっぴどく説教を食らう波乱の幕開けとなった犬との暮らし。
当時保育園に通っていた姪っ子は喜んでくれたが、姉と共に私を睨みつけていたのがもう1人いる。いや、1匹。
オシキャットの【ユイ】である。
突然やってきた犬ではなく、犬を持ち帰った私を睨んでいたところが本当は人なんじゃないですか?と問いたくなる。
犬をキャリーに入れ、ぷりぷりしている姉から逃げるように自室でゲージ作りを始めた。
ユイは本棚の上からジットリ目線を送ってきたけど、ひたすら知らんぷりしてゲージを作り、慣れない作業に苦戦しながらもようやく完成。犬をゲージに入れると、断尾された短いしっぽをプリプリ振ってくれた。
(同じ音なのに全然違うもんですね)
犬には【ロイ】と名付けた。
決めていた名前。
姪っ子も私も好きな絵本、くまのがっこうで主人公12番目の女の子ジャッキー。そのすぐ上のお兄ちゃん、11番目の男の子がロイ。
おてんばな妹をいつも優しく守ろうとする可愛い茶色の男の子。
姪っ子にとって、この子がロイくんのように優しく楽しく一緒に過ごせるようにそう名付けた。
「ロイ」
初めて口に出した名前に反応したのはユイちゃんだった。似てますもんね、音は。
そんなもんだよね。
「初日は慣れない環境なので夜鳴いたりするかもしれません」と言われていたけれど、ロイは子犬用のエサをしっかり食べ、お水を飲んで普通に寝た。
そんなもんなの?
初めて犬がぐっすり寝ているところを見た。
小学生の頃、夏休みの推薦図書で読んだ本に影響を受け、いつか青い目をしたハスキーを飼って名前はリゲルとつけると夢みていた。
現実は売れ残りで価格がガクッと下がった短足のトイプードル。
ゲージの中で他の子犬達が近づいた私に飛び跳ねてアピールする中、その子達の下敷きになって潰されていた茶色のワンコ。
人生は思う通りにいかないものだけど、
そんなの全く気にならなかった。
ただひたすらに愛おしかった。
夜勤の疲れも、ご立腹の姉も、やっぱりどう見ても短い彼の足も、何もかも気にならないくらい、ただただ愛おしく可愛らしい存在だった。
こうして、犬と暮らす1日目はおだやかに終わった。
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