「神秘捏造」ミステフィカシオン~女人訓戒士O.D
「待ちぼうけー兎の女」⑥
明日の朝は「ゆう」を背負って山を下りるという、大事な夜
俺はなかなか寝付かれず、うとうとと夢を見ていた
はっとして飛び起きると
周りの風景がぼんやりしていた
そこは山なのか
雪の中なのか
よくよく思い出せない
猫がいた
白い猫は赤い血の涙を流し
目が開かないので厳しい貌をしていた
兎ではなく猫の夢を見るとはな、と、うとうと思っていたら
ふっと目が覚めた
周囲はまだ暗がりだが、外は藍色だと思った
俺はすぐに「ゆう」の様子を確かめた
「キジ」が「ゆう」の枕元にいて、ふたりは静かに眠っている
眠る間、人の魂は体の内に留まっていられるものだろうか
寝息すら立てず、人は眠る間死に、起きている間は生きている
「ゆう」と「キジ」を見ていたらそんな気がした
瞬間、バサバサバサッっと大きな羽音がした
手前の木・・
屋根の上・・
俺は囲まれているな、と直感した
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