「水府の三門」◆道しるべ◆②
神奈備山と讃えているのは、神が鎮座する山自体を御神体としている
神が隠れすまう、と言ったほうが“いばら”にはしっくりくる
武蔵の国
御諸山には金の大蛇が、人によっては金の龍が棲むという
(金佐奈が採れる)金砂つまり砂鉄のことをいうのだろうが、児玉といわれる地では日照りが多い
常陸の国郡戸や金郷、金砂、久米村の川では金が砂より重く採れると言うから、干割れの山の砂金と水質の良い山の砂金では、なにかもののたちが違うのかも知れない
金砂の郷の仙郷には龍が棲むと言う
更に遠く常陸の国の八溝山の金鉱山は、越後と佐渡の金鉱山に次ぐと聞く
その金鉱山に至っては岩石の中にもとから豊富な山金が眠っていたのだろう
滋養味に富んだ山のものも多く採れると言うから、肥沃であるのだろう
その辺りの山々には沼が多いから、そこの大蛇たちは活発ではないのか潜っていることが多いそうである
ああ、疲れて来たわ・・
“いばら”はまた、道端にあった適当な石を見つけて座り込んだ
足の指に出来るマメと、擦れて剥ける皮が当たって痛いのだ
やっぱり駕篭よ
でも此の辺りは江戸に近いと言っても、又右衛門様のいるところは『伸び放題の蜘蛛の巣の古いのが何十にも絡み付いた木と、昼間でも暗くて落ち葉が濡れたまま鬱蒼と繁っている冥府の里よ』
水戸は旧く『みと』ではなく『みなと』と呼ばれてきた
鹿島さまの灘から大安良の湊を通って、遡って水府のみかどは仙郷に帰ってくる
雨降りの少ないところでは喚ばないと訊いてはくれないが、水脈がたくさん繋がるところでは、水府のみかどのように、よく見廻りに行ったりする
時々黒龍が悪さをして、大津波を起こすからだ
それで鹿島さまのところの大ナマズが、お前の仕業かと叱られる
鹿島さまも大変忙しく、見廻りに行かれるから、水府のみかどが頼られて常陸の海原を警戒する
ちょうどその入り口はーー
湊もあるし湊に流れる大きな川の渡しには、いつも丸太ん棒が寝かされていると言うわ
だから雄薩からはまた大回りで戻って、そこの丸太ん棒が寝かされている川まで行かなきゃ
雄薩で又右衛門様のお手伝いが終わったら、駕篭探して貰うわ。絶対倹約よ
あ~~足がいたあ~
ちょっとそこのおにーさんたち
ちょうど良かった~
鉱泉があるところまで乗せて行ってくれなあぃ
雨宮いばら
空き駕篭を見つけて、親指を立てた