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舞い支度

成人される皆様、皆様のお父様お母様、お慶び申し上げます
今日はふと
足を街に向けてみたのですが
壁の角からちらりと振り袖が見えるものですから、お人形でも立っているかのかしらとすれ違いざまに、ちらりと見たのです
そこにはすらりとした静かなお人形さんでもあるかのような、綺麗なお嬢さん

(あら、お淑やかなおにんぎょさん)

なぜか壁を見つめています
きっとジロジロ見られるのが嫌なのでしょうけれど、見られて困るような恥ずかしがりではないように見えました
彼女たちの年代は見られることに慣れているのですし、この現代の街並みに溶け込んでいても、なおかつ誰よりも目立ちながら、誰よりも謙虚に身を守らねばいかぬ、人気商売のようなものなのです

それにしても今時分、街を歩いている振り袖のお嬢さん方はみんなして、鉛筆のようにすんなりと見た目がすっきりしている方ばかり

お嬢さん三人でどちらに行かれるのかしらね

お買い物荷物が結局二つと手鞄で三つになってしまいましてね

成人式を一周終えたけれど、まだ二週目には遠いって感じの店員さんにね
まだ入れる袋あるの?って持ち帰りの袋のほうの心配をされるの
確かにねぇ
たまに出かけるとついつい買い込んでしまうの
たいして買いませんけれど、結構な重さですよ
足腰弱ってしまうので、たまには電車やバスに歩いたりしませんとね
それでもだんだんと気持ちが弾んで来るものですね
荷物は重いですし、華やかで幸せなものを見られたものですから、ちょっとお茶をね、って思いました

そこは陽当りの良い窓際には御年配の方々
男女まんべんなく
テーブル席には声も明るく溌剌とした
その年代の方のお嫁さん世代に近い方々
要は今日の振り袖のお嬢さん方のお祖父様お祖母様の御歳の方々
お昼時を挟んで、これはこれで喜ばしい風景だわ
外を歩ける元気なお年寄りだってことだもの

今日はね
自然に御祝いする気持ちになったのでね
こうして心の中で言ってみたの

きっとまだ
この国は大丈夫よね
陽が当たる場所があるもの

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