「春すべり 花酔いのしず」
環鎖のように細い底の月
今宵は朧の中でくるまれている
湖畔の森の頂点から龍のような雲が立ち昇る朝
嫌な予感の雲ではなかった
午後に陰が差し
寒気にふと肩を丸める
クェ、とひと声蛙が鳴く
これから
朝昼夜となく蛙たちが鳴き連ねる
それは辛き日を乗り越えられる経のようなもの
桜が開き切った為か
えも言われぬ
説明のつかぬ
不調は一段落ついた
春すべり
思いがけずそんな言葉が浮かぶ
明け方の浅い夢ばかり見ていたい
淡き山桜の揺れる幻術
涙で霞むしずり雪
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