「鬼神」亥の四つ時
なにも知らず
梟は鳴いていた
その夜
私は居宅にあらなんだ
竹林の隙間にともる小さ月のよな明かり
隣宅の後ろの木の上で鳴いておるのだろう
はじめて聞いたような新鮮味
闇の中に出るのではなく
闇の先から戻ったから、であろうか
『ホウ』
我が宅の灯りがない
実際人の気がないことは
いかに邸の隅に潜んでいるのとでは
醸し出すものが違うのだろう
梟は鳴いている
『ホホウ』
『ホホウ』
邸まで数度間隔を置いて鳴き声があった
近く県境に出る
なぜかあの頃の異質の中の恒例の気配に
私は度々引き寄せられているようだ
梟もまた
その道すがらである
星宿