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#7 「厄介な隣人との付き合い方講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第7話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

犬養春代(50) モンタギュー高校の校長。

ダムス(18)ザンビア出身の留学生。中華料理店でアルバイトをしている。

蓮本すみれ(18)犬養の姪。
虎之介(25)良太の中学時代の同級生。
店員

〈本編〉

T「厄介な隣人との付き合い方講座」

◯和希の家・リビング(夕方)
ソファで、良太、険しい表情で、ノートPCの画面を見つめている。
外から、祐菜がやって来る。
ソファには、和希もいる。
銅像のように固まっている良太。
祐菜「(和希に)彼、何してるの?」
和希「エロ画像見てる」
良太「違うよ。今、返信メールを書こうとしてるんだけど、何て書けばいいか悩んでる」
祐菜「誰からのメール?」
と、良太の隣に座る。
良太「虎之介っていう中学時代の同級生さ。近いうちに会わないかってメールが来た。今、仕事の関係でコッチに来ていて、二週間ほど滞在するんだって」
祐菜「なんで返信に悩んでるの?」
良太「ソイツとは卒業以来、一度も会ってないし、連絡のやり取りもしてないんだ。なのに今になって急に、会わないかって言われても、どうすればいいか分からない」
外から、正範がやって来る。
正範「(呆れ)まだメールの返信、悩んでるのか?」
和希「いつから悩んでるんだ?」
正範「もう3日前からだ。学校でも、ずっとパソコンに張り付いてる」
良太「授業はちゃんとやってるよ。パソコン持ちながら…」
和希「とりあえず、会ってみたら?」
良太「でも、虎之介がどんな大人になってるか分からないんだよ? もしかしたら、とんでもない悪党になってるかも」
祐菜「その人、不良だったの?」
良太「いや、大人しくて、小柄で、愛らしい感じだった。例えるなら、ハムスターだね。けど、それは10年も前の話」
和希「今は、回し車で人を轢き殺してるかもな」

◯同・同(夕方)
玄関チャイムが鳴る。
和希、ドアを開ける。
訪問者は、ダムス。中華料理店の制服姿。10人前ほどの注文品を抱えている。
ダムス「出前です」
和希「? 出前なんか注文してないぞ」
そこへ、祐菜がやって来る。
祐菜「どうしたの?」
ダムス「(和希に)ここへ届けるよう連絡があったんですけど」
和希「それ全部か?」
ダムス「そうです」
祐菜「ざっと10人前はあるわよ」
何か分かった様子の和希。
和希「あの女の仕業か…」
祐菜「あの女って、誰のこと?」
すると、ダムスの背後に、犬養が姿を現す。
犬養「あら、随分たくさん注文したのね」
祐菜「あなたは確か、モンタギュー高校の犬養校長?」
犬養「実は、隣の家に住んでるの」
和希「そして、しょうもないイタズラを、ウチにちょくちょく仕掛けてくる厄介な隣人でもある」
犬養「イタズラ? 何の事かしら?」
和希「とぼけるなよ! こんな大量の出前をウチに送りつけたのも、アンタの仕業だろ!」
犬養「私、そろそろ失礼するわね。早く召し上がって。料理が冷めちゃう」

◯同・ダイニング(夜)
満腹で苦しそうな祐菜、和希、正範。
テーブル上には、大量の出前の両立が残っている。
和希「胃袋が破裂しそうだ」
正範「良太も食べてくれよ」
良太、未だ、返信メールに悩んでいる。
祐菜「(和希に)あの犬養って人に、やられっぱなしでいいの? 仕返しするべきよ」
和希「仕返ししても、やり返されるだけだろ」
祐菜「またやり返せばいいのよ。向こうが白旗を上げるまでね」
和希「…」

◯犬養の家・外(翌日の朝)
犬養、家の中から出てきて、門付近にある郵便受けに向かう。
郵便受けから郵便物を取り出し、確認する。
すると、すぐ横(道路)を一台の車がビュンと通過。
それにより、水溜まりの水が犬養にガッツリかかる。
さっきの車がバックで戻って来る。
運転手は和希。
和希、運転席側の窓を開ける。
和希「どうも! おっはようございまーす!」
犬養「キャピュレット高校の人間って、ほんと愚かね」
和希「これで終わりじゃないぞ。これは、始まりだ」
犬養「いいわ、トコトンやりましょ」

◯ペットショップ・中(朝)
犬養、入店する。
店員「いらっしゃいませ」
犬養「犬を飼おうと思って」
店員「どんなワンちゃんをお探しですか?」
犬養「一晩中、吠え散らかす犬がいいわ。近所迷惑になるくらい」
店員「な、何ですか?」
犬養「とある隣人を不眠症にしたいの。おすすめはどの犬?」
店員「当店で扱っているワンちゃんは、みんないい子ですよ」
犬養「品揃えの悪い店ね」

◯犬養の家・外(朝)
家のドアの前に来る祐菜と和希。
祐菜「何するの?」
和希、ズボンのポケットから、ピッキングツールを取り出す、
和希「犬養は今、留守みたいだから、中に入って何か盗む」
と、ピッキングを始める。
祐菜「ピッキングなんてできるの?」
和希「(ピッキングしながら)昔、練習した。いつか役に立つと思ってな」
と、ピッキングを終え、ドアを開ける。
和希「実際、役に立った」

◯同・リビング(朝)
リビングにやって来る祐菜と和希。
祐菜「で、何盗む? テレビ? ソファ?」
和希「(悩む)うーん…」

◯同・ダイニング(朝)
祐菜と和希、割と大きめの窓を窓枠から取り外すそうとしている。
和希「1、2、3…」
と、二人で窓を一枚取り外す。
すると、玄関のほうから物音がする。
祐菜「(小声)ヤバっ、帰ってきたみたい」
和希「(小声)裏口から出よう」
祐菜と和希、窓を抱えたまま、こっそり裏口から出る。
裏口のドアが閉まった瞬間、犬養がダイニングにやって来る。
間一髪、犬養に見つかることなく、逃走成功。
犬養、テーブルの上にカバンを置く。
コートを脱ぎ、イスに掛ける。
そして、レースのカーテンが風で靡いているのに気付く。
犬養、窓の近くへ行く。
犬養「(窓が無い⁉︎)」

◯和希の家・外(朝)
玄関チャイムを連打する犬養。
中から、ドアを開ける和希。
犬養「ウチの窓を返して」
和希「? 何の事かサッパリ」
犬養「とぼけないで! あなたが盗んだんでしょ!」
和希「返して欲しいなら、謝罪しろ。これまでのイタズラの分な」
犬養「謝罪? そんな事するわけないでしょ」
和希「なら、窓は諦めろ」
と、ドアを閉める。
犬養、不貞腐れながら、帰っていく。
その途中、ふと、ある物を目にする。
和希の家の車庫の前に、和希の車。
犬養、ニターっと笑う。

◯正範の部屋・リビング(朝)
玄関チャイムが鳴る。
正範、ドアを開ける。
訪問者は良太。
正範「良太か。入れよ」
と、良太を中に入れる、
良太「例のメールの件なんだけどさ」
正範「確か、虎之介って奴からだったよな。返信したのか?」
良太「それが…怖くてできない」
正範「?」
良太「さっきTwitterで、虎之介のツイートを見ていたら、衝撃の事実が発覚したんだ。虎之介は今、ボクシングジムでトレーナーをやってるらしい」
良太、携帯を取り出し、画面を操作する。
良太「見てよ。(正範に画面を見せて)これが今の虎之介の写真だ」
正範「この大男の隣に立ってる人か?」
良太「その大男が虎之介だよ!」
正範「身長190cmはあるぞ。ハムスターみたいに小柄なんじゃなかったのか?」
良太「僕もビックリした。あの虎之介が、こんなイカツイ大男に…」
正範「つまり、お前は今の虎之介の姿にビビって返信できないってことか?」
良太「(携帯の画面を指差し)だって見てよ、この極太の腕! 人間の胴体くらいあるよ!」

◯和希の家・外 
和希、家の中から出てきて、車庫へ向かう。
和希の車のタイヤが4つ全て盗まれている。
和希「(タイヤが無い!)」

◯犬養の家・外 
玄関チャイムを連打する和希。
中から、ドアを開ける犬養。
和希「車のタイヤを返せ!」
犬養「返して欲しけりゃ、まずウチの窓を返しなさい」
和希「アンタ一人で、タイヤを盗んだのか?」
犬養「助っ人を一人呼んだの」
和希「助っ人?」
家の中から、日神が姿を現す。
和希「日神」
日神「犬養校長に危害を加える奴は絶対に許さん。ましてや、キャピュレット高校の人間なら尚更だ」
犬養「私と戦ってくれるんですって」
日神「校長のためなら、命を捨てる覚悟だってある」
和希「そんな必要ないのに。大人しくタイヤを返せばな」
日神「窓を返すのが先だ」
和希「いや、タイヤが先だ」
日神「窓だ!」
和希「タイヤだ!」
日神「窓!」

◯和希の家・リビング 
祐菜、取っ手付きの箱を持って、和希のもとへやって来る。
祐菜「頼まれてたやつ、持ってきたよ」
和希、祐菜から箱を受け取る。
祐菜「中身な何なの? 中で何かが、ガサゴソ動いているんだけど」

◯犬養の家・裏庭 
祐菜と和希、家の窓の前にやって来る。
和希、例の箱を持っている。
窓が一枚無い状態。(先程、祐菜と和希が盗んだため)
その窓無しの所から、和希、箱の「中身」を家の中へ投入。
その「中身」とは、3匹のネズミ。
×××
祐菜と和希、窓に耳を当てている。
そこへ、日神が現れる。手には巨大水鉄砲。
日神「君たち、何やってる?」
すると、家の中から
犬養の声「キャーー! ネズミ!」
和希「ちょっとしたプレゼントさ」
×××
走って逃げている祐菜と和希。
日神が祐菜と和希を目がけて水鉄砲を連射しているからだ。

◯同・外 
日神、門の前で警備している。
水鉄砲を携え、辺りに目を光らせている。

◯和希の家・リビング 
そんな日神を窓から双眼鏡で見ている和希。
和希「日神が門の前で目を光らせてる」
祐菜「上等よ! 真正面から攻め込んでやりましょ!」
和希「でも、向こうは銃を持ってる」
祐菜「私に考えがある」

◯同・外 
家の中から、祐菜と和希が出てくる。
2人とも、ウェットスーツとシュノーケルを身につけ、フライパンを持っている。

◯犬養の家・外 
武装した祐菜と和希、門の前へやって来る。
日神、水鉄砲を構える。
日神「そんなので身を守ってるつもりか? 我々には大量の水風船もある。降伏したほうが身のためだと思うがな」
和希「そっちはタイヤ4つも盗んだんだぞ。こっちは窓1枚なのに」
祐菜「そうよ。フェアじゃないわ」
日神「戦争にフェアもクソもあるか! 君たちこそ、校長の家にネズミを放っただろ! 早く捕まえてこい!」
和希「まだ捕まえてなかったのか」
祐菜「そのまま住まわせてあげたら? あの家、ネズミの住処にピッタリ」
日神「(犬養の家に向かって叫ぶ)校長! 水風船の御用意を!」
和希「やろうっていうのか?」
祐菜と和希、戦闘態勢に入る。
すると、一台のタクシーが、犬養の家の前にやって来る。
祐菜・和希・日神「?」
タクシーから、蓮本すみれ(18)が降りてくる。
和希「!」
和希、思わずフライパンを落とす。
祐菜「どうしたの?」
和希「(放心)タクシーから、天使が降りてきた」
タクシーが去る。
すみれ、スーツケースを引っ張りながら、犬養の家の門までやって来る。
日神「何者だ?」
と、すみれに水鉄砲を向ける。
すみれ、念のため、両手を挙げる。
すみれ「えっと…」
家の中から、犬養、水風船が山盛りのバケツを抱えて出てくる。
犬養「覚悟しなさい! これらをたっぷりお見舞いしてあげるわ!」
すみれ「あ! おばさん!」
と、犬養に手を振る。
犬養「すみれ!」
祐菜・和希・日神「?」
犬養、すみれのもとへ来る。
犬養「日神先生、銃を下ろして。この子は関係ないの」
渋々、銃を下ろす日神。
犬養「この子はすみれといって、私の姪っ子なの」
日神「め、姪っ子様⁉︎」
すみれ「今日から、おばさんの家に居候させてもらうの。通ってる大学がこのすぐ近くだから」
日神、水鉄砲を何処かへ放り投げて
日神「それは、大変失礼致しました。お荷物をお運び致します」
と、スーツケースを家の中へ持って行く。
すみれ「あ、ありがとう」
祐菜「てことは、私たちの敵が一人増えたってことね」
和希「いや、もうこの戦いは終わりにしよう」
祐菜「え? どうして?」
和希「あんなイタイケなレディーに迷惑をかけるようなことはしたくない」
犬養「確かに、私も可愛い姪っ子の前で醜い争いはしたくない」
和希「(祐菜に)ネズミを捕まえに行こう」
すみれ「あの…あなた達は?」
和希「隣に住んでる和希だ。よろしく」
祐菜「同僚の祐菜よ」
和希「勘違いしないで。普段はこんな格好じゃない」

◯カフェ・中 
入店する良太。
カウンター席に、正範がいる。
その隣に腰掛ける良太。
良太「僕に話って?」
正範「実は、お前に会わせたい人がいる」
良太の背後に、虎之介(25)が現れる。
虎之介「会うのは10年ぶりだな」
良太「虎之介⁉︎ ど、どういうこと?」
正範「俺が呼んだ。お前、ずっとメール画面を開いて返信に悩んでただろ。それで、たまたま彼のメールアドレスが目に入ったから、連絡してみたんだ」
虎之介「どうした良太? 顔が引きつってるぞ」
ヘビに睨まれたカエル状態の良太。
正範「(虎之介に)少し、良太を借りるよ」
と、少し離れた所へ良太を連れ、作戦会議。
正範「何か話せよ」
良太「僕、殴られるのかな。メールに返信しなかったから」
正範「そんな事ないって」
良太「それに、何話せばいい?」
正範「あれこれ考えるな。パッと思いついた事を話せばいい」
と、良太を虎之介のもとへ連れ戻す。
良太「(虎之介に)えっと…久しぶり。メールの返信できなくて、すまなかった」
虎之介「いいんだ。逆に、お前を困らせることになったな」
良太「虎之介は悪くないよ」
虎之介「それよりもさ、今から一戦、交えないか?」
良太「…一戦? まさか、殴り合い?」
虎之介「違うよ。エアホッケーのことだよ。昔よく、ゲーセンでやっただろ」
良太「ああ! エアホッケーね。いいね、やろう! この近くのモールに、ゲーセンがある」
虎之介「よし、決まり!」
良太「あ、待って! 一応、確認だけど、負けても殴ったりしないよね?」

#8に続く

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