〜最後の表現グマ〜 ラショウグマ物語1
一 ‘富嶽三十六景、バタバタに如かず’
ついに最後のラショウグマが、
最後の薄氷を踏み抜きました。
「グフォ!温暖化めー!
温暖化なのに冷たい海水じゃないか!」
そもそもラショウグマはシロクマでもないのに、
なぜ北極に自分が今居るのか理解できません。
北斎を意識し過ぎて、
転々と頻繁に引っ越してはいたのですが、
もちろん少しも絵心の向上はなりませんでした。
「おそらく北斎の『北』だ!
オレを追い詰めたのはお前だ北斎!
ああ、まったく波乱万丈にも程があるよ!」
とにかく足をバタバタとさせていました。
考えてみたら泳げもしません。
「グフォー!結構なピンチじゃないか?」
その時です。
遠くから何か巨大な物が近づいて来ました。
ラショウグマは興奮します。
「船だ!あれは船だよ!おーいおーい!」
喜び勇んで手(前足)を振りました。
「助け船ってやつだ。神も仏もあるんだな。
頑張っていれば必ず何かあるんだよ!
ネットショップにしたってさ。
おーいおーい!」
だんだん船が近づいて来ます。
「ん?あの船影は‥‥ 」
バリ、バリバリバリバリ!
「って砕氷船だあああ!
神も仏もないものか!
(もちろん北斎、お前もない!)」
富嶽三十六景はおおげさでしたが
おまけにとても大きな波が立って
改めてラショウグマを深い海中に引き込みます。
ぶくぶくぶくぶく‥‥
「クラムボンは死んだよ‥‥ 」
ぶくぶくぶくぶく‥‥
「クラムボンは殺されたよ‥‥ 」
ぶくぶくぶくぶく‥‥
「クラムボンは‥‥ 」
ミヤケンの生まれ変わりと時々吹く割には、
ラショウグマはこれ以上やまなしを思い出せないので、
絶句し、もうあきらめて目を閉じ、
ゆっくり沈んで行こうとしました。
「もうだめだ。絶滅だ‥‥ 」
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