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第十二回:タスクとアイデアの微妙な関係

デイリータスクリストの「理想」は、「今日やること」しか書かないことです。しかし、そうも言ってられないのが「現実」ではあります。

たとえば、上司に「これ明日の午後までにやっといて」と言われたとしましょう。仕事量的にはそこそこで、5分では終わらないが、2時間はかからないと見積もったとします。今日中にできるかもしれませんし、明日になるかもしれません。もし、今日中に余裕があるならば、完了させるか、せいぜい着手くらいはしておきたいところです。

こういったものは、はたして「今日やること」なのでしょうか。それとも違うのでしょうか。言い換えれば、「絶対に今日やらなければならないわけではないが、可能であれば着手しておくと明日の予定に余裕が生まれること」は、どこに、どのように、書かれるべきなのでしょうか。

とりあえずメモする

そんな難しいことを考えるくらいなら、デイリータスクリストに「とりあえず」書いておきたいですね。でも、そうやって「とりあえず」書き込んでいくとデイリータスクリストがToDoリスト化してしまうので、一応の線引きはしておきましょう。

たとえばそれを「できたら」の項目に入れておく手があります。あるいは、デイリータスクリストと同じページ(ないし項目)でありながら、線で区切った「別領域」に置いておく手もあります。

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「別領域」と呼ぶとなんだか物々しいですが、その実体は「メモ欄」です。で、この「メモ欄」を使えば、デイリータスクリストの運用は自由さを増します。「今日やること」と呼べないものも、ここに書きつけていけるのです。

What is メモ?

さて、ここで根本的な疑問です。メモってなんでしょうか。

メモにまつわる哲学は、その一般的な扱われ方に比べれば実は深いものなのですが、そこまで論を深めなくても、メモが短期的な情報であることは論を待ちません。

では、「短期的な情報」とはなんでしょうか。答えは、「処理待ちの情報」です。

たとえば、電話がかかってきて、来週の月曜日に打ち合わせの予定が入ったとしましょう。あなたは手近にあったデイリータスクリストのメモ欄にそのことを書きつけます。一時的に。

実際その情報は、手帳のカレンダーに記されていなければならないので、あなたは隙を見て手帳を開き、その情報をカレンダーに転記します。その時点で、デイリータスクリストのメモ欄に書きつけた情報は用済みとなります。一件落着。これが「処置待ちの情報」ということの意味です。

で、このような行動の構図は、メモをタスクとして捉えることを可能にします。どういうことでしょうか。

たとえば、「6月22日14:00にK氏と打ち合わせ」とメモ欄に書き込んでおいたとします。あなたの中で、この情報はデイリータスクリストではなく手帳に書き込まれるべき情報です。ということは、そのメモは以下のように読み替えられます。

「6月22日14:00にK氏と打ち合わせ」(を手帳に書き込むこと)

これは行動を示しており、つまりはタスクです。手帳に書き写せば、そのタスクが実行されて、終了となるわけです。
Point:メモは、タスクでもある。

メモ→タスク

この「スケジュールのメモ→タスク」の構図はわかりやすいものですが、考えを広げてみると、その他のメモもその多くは基本的にタスクの性質を帯びています。

たとえば、あなたがアイデアをまとめるノートを持っていて、その場所ではなく「とりあえず」デイリータスクリストのメモ欄に思いついたアイデアを書きつけたとしたら、そのメモは、以下のように読み替えられます。

「ブログのサイドバーにオススメ本を掲示してみてはどうか?」(をアイデアノートに書き込むこと)

これもまた、アイデアノートに書き写せば、このタスクは実行済みとなります。同じ構図です。

もちろん、単に書き写しただけで、「ブログのサイドバーにオススメ本を掲示」したわけではありません。その行動は終わっていないのです。しかし、それはしかるべき場所に移送されました。まず、それがメモの処理の第一歩なわけです。
Point:書き写すことも処理である。

タスクとアイデアの微妙な関係

上のアイデアメモの事例を眺めてみると、タスクとアイデアの微妙な関係が見えてきます。

たとえば、「ブログのサイドバーにオススメ本を掲示してみてはどうか?」という記述をアイデアノートで見つけ、それについて考えて、「結構面白そうじゃん、やってみようか」と思い、「具体的にはあの本とあの本を、あの場所に並べよう」みたいなことを考えたとき、それは「タスク」となり、しかるべきデイリータスクリストの日付に並ぶことになります。

メモとして記されたものがアイデアとして扱われ、そのアイデアの検討および判断がタスクを生み出したのです。

アイデアの中には、そこまではっきりとタスクを生成しないものもありますが、そうであっても、「それについて考える」という行為は付随しているものです。

アイデアは、──もっと言えばそれについてまだ検討が済んでいないアイデアは──、いつでもタスクに変化しえます。タスク予備軍なのです。
Point:アイデアはタスク予備軍である。

さいごに

何かしらの行動は、それを行いたい気持ち(あるいは行うべきだと感じる気持ち)があり、その行動を実行することが決まったとき、タスクとなります。もし、それぞれの「気持ち」をメモとして書き留めているならば、それらはすべてタスク予備軍となるわけです。

この構図は、アイデアノートとデイリータスクリストを区分けしているのではっきり見えてきましたが、もし、一冊のノートに「ToDoリスト」としてまとめて記載されていたら、うまく区別ができなかったでしょう。

つまり、「ブログのサイドバーにオススメ本を掲示してみてはどうか?」となるはずの書き込みが、「ブログのサイドバーにオススメ本を掲示する」と変換されてしまい、本来とは違ったタスクに変容してしまうのです。そうなると、その人の引き出しはタスクだらけ(言い換えれば、やること地獄)になってしまいます。

タスクとアイデア(メモ)は、行き来可能な性質です。だからこそ、それを扱う上では区別をしっかり持っておきたいところです。

(つづく)

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