Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/07/02 第403号
さて、7月に突入しました。
原稿作業はいよいよ佳境です。原稿自体は書き上がっており、それを編集者さんがページ組みしてくれたものを確認しています。いわゆるゲラチェックです。
確認作業はiPadで行っています。PDFファイルに、赤字で修正指示を書き込むスタイルです。
この作業はプリントアウト+赤ペンでやっても楽しいのですが(そうなのです。この作業は楽しいのです)、iPadの利便性も侮れません。大量の紙を持ち歩かなくても良い点、いくらでも書き直しができる点、ファイルの返送が楽チンな点。いろいろあります。
ともかく、ひさびさにiPadでゲラチェックを行っていたのですが、あまりにも久々だったので(紙の本は2016年2月以来)、「校正記号」の書き方をすっかり忘れていました。
さすがに何もかもを忘れていたわけではなく、「トル」などは覚えていましたが、「改行をやめる」がわかりません。というか、最初は改行をやめたい場所に間違えて「改行する」の指示を書き込んでしまい、後々本当に改行指定したい箇所に遭遇したときに、「あれ、この記号さっきも使ったよな? ん?」となって、慌てて検索しました。
セルフパブリッシングでは、自分の原稿は自分で修正するのでこうした指定は必要ありませんし、共同で作っている「かーそる」でも、すべてテキストファイルで内容をやりとりしているので校正記号の出番はありません。
使われない知識は忘れていくものだとよく言われますが、まさしく本当だな〜と痛感した次第です。まあ、検索すれば事足りるわけですが。
〜〜〜7月の気になる本〜〜〜
7月は気になる本がいくつも出版されます。
こちらは、@kfpauseさんの新刊。"対話で見つける〈学び方〉"というタイトルがビビッときますね。Web連載時も面白かったので書籍ver.も楽しみです。
こちらは、 @coromeganeさんの新刊。私は文房具そのものの本はあまり読まないのですが──どちらかと言えばノートの「使い方」のような本を好みます──、それはそれとしてヨシムラマリさんの独特な世界観(褒めてます)が好きなのでこの本も楽しみです。
あと、6月末に発売されていますが、以下の本も楽しみです。
楽しみというか、もう読了しちゃっているわけですが、この本については来週みっちり取り上げたいと思います。
最後になりますが、7月27日拙著も発売予定です。
記憶力の良い方ならば、「あれ、発売予定日って7月24日じゃなかったっけ?」と疑問を持たれるかもしれませんが、予定日は予定であって確定ではありません(すいません、私の遅筆が原因です)。
とりあえず本書に関しても言いたいことは蜂蜜をこぼした後の蟻の群れぐらいありますので、またこのメルマガで書いてみます。
〜〜〜読みの甘さ〜〜〜
『Scrapbox情報整理術』の執筆では、文章はギリギリまでラフな状態で進めました。
最初に構成を立て、それを徐々に肉付けしていき、その結果を受けてさらに構成を立て直すという〈行ったり来たり〉の進め方をしていたので、あまり早めに文章を固めてしまうと、身動きが取りにくくなりますし、どちらにせよ前後の記述に合わせて書き直すことになるので非効率的でもあります。
で、ようやく流れが固まり、後は文章を整えるだけだから作業はパパッと進むだろうと目算していたのですが、大きな誤算でした。
たしかに構成を考えるのには時間がかかるわけですが、文章の精度を上げていくにも時間がかかります。それこそ、一つの段落をどう表現するのかに1時間使うことすらあります。しかし、それが見えていませんでした。大きな構成を片付けたので、後は小さな作業ばかりだからささっと片付けていけるだろうと誤った目算を立ててしまったのです。
その作業時間の読みの甘さが、発売日の遅れとなって……(反省中)
いまだに執筆のどの段階で、どれくらい文章を固めればよいのかについての答えは見えていないのですが、次回の執筆プロジェクトでは「文章を整えることにも結構時間を使うぜ」ということをしっかり念頭に置いておきたいと思います。
〜〜〜感想集めプロジェクト〜〜〜
Scrapboxのプロジェクトを一つ新調しました。
本の感想をアップするためのプロジェクトです。
・Twitterは持っているが140字では物足りない
・Twitterは持っているが流れていくのが気にくわない
・Blogを持っていない
・Blogを持っているが、「書評」はちょっと書きにくい
・Amazonのカスタマーレビューは敷居が高い
という場合に使って頂ければ幸いです。あるいは、TwitterやBlogに投稿したものをこちらに転記して、リンクを繋げて遊ぶのも一興です。
招待リンクは、「はじめに」のページに貼り付けてあるので、ご自由にご参加ください。
こういうことが簡単にできるのがScrapboxのすごいところです。
〜〜〜少しの抑制〜〜〜
何かネガティブなことがあるとして、どれだけ対策しても、何%かは必ずそのネガティブなものが出現してしまう状況があるとしましょう。
そうしたときに、「どうせ対策してもなくならないのだから、対策するのは無意味」と考えるのは早計でしょう。10%の出現率を0%にはできなくても、8%に抑えられるなら充分に意味のあることです。
もちろん、それにかかるコストの考慮は必要ですが、「完全でなければ意味がない」という白黒思考はできるだけ避けたいところです。
〜〜〜Q〜〜〜
さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のストレッチ代わりにでも考えてみてください。
Q. 「No 〜〜,No Life」。〜〜に適当な語句を入れてみてください。もちろん自分のLifeにとっての、ということです。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。
今週も少し長めの記事の二本立てです。
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2018/07/02 第403号の目次
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○「レビューとしてのメモづくり」 #メモから始める仕事術
タスク管理を掘り下げていく企画。今回はやや特殊なレビューについてです。
○「タイムラインの作り方」 #情報摂取の作法
現代における情報摂取の作法の重要性と、私のタイムラインの作り方を紹介します。
※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。
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○「レビューとしてのメモづくり」 #メモから始める仕事術
今回は、レビューにおけるメモの活躍について書いてみます。
メモは作業前・作業後に活躍するだけではありません。レビューにおいてもメモはばっちり役立ちます。むしろ、メモ作りこそがレビューの肝だとすら言えます。
そこでまずは、そもそものレビューについて少しみていきましょう。
〜〜〜
タスク管理におけるレビューは、システム全体のメンテナンスを担当します。手持ちのリストを最新状態に更新し、システムを「信頼できる」ようにしておく。そうした行為があるからこそ、私たちは実行中に深く考えることなくタスクに着手できます。
とは言え、──独断と偏見でしかありませんが──この「レビュー」活動が好きという人は、おそらく少ないでしょう。タスク管理の挫折理由としても「レビューが続かなかった」という話をよく聞きますし、逆に、毎週のレビューが楽しみで仕方がないという話はあまり聞きません。
理由はいくつかあるでしょう。
・直接的な生産性がなく「成果」が感じられにくい
・自分の「できていない具合」を直視しなければならない
・具体的に何をすればいいのかわからず着手しにくい
極めて簡素にまとめてしまえば、面倒なのです。これは、人間の自然な心理的傾向であって、怠け癖の問題ではないでしょう(あるいは人間の自然な心理的傾向に怠け癖が含まれているという言い方もできます)。
もちろん、原理原則としてはレビューは毎週実施した方が良いです。仮に毎週が無理でも、もう少し長いスパンで定期的に行うのが吉です。とは言え、仕事が順風満帆に回っているときには、(心理的傾向から言って)あまりやる気にならないでしょうし、大きな声では言えませんが、別にそれでよいとも思います。システムに従順になる必要はありません。裁量は常に実行者である自分にあります。
問題は、仕事がうまく回っていないときです。なかなか着手できない、混乱している、次の一手をどうしていいのかわからない。本来は、そうした状況に陥らないためにレビューを行うわけですが、そうした状況に陥ってしまったときのリカバーとしてもレビューは効果を発揮します。
つまり、──薬にたとえて言うならば──内服薬としてのレビューではなく、頓服薬としてのレビューです。やばい状況になったら行うレビュー。
最低限、そのやり方を知っておけば、「困難すぎる状況」を「やや困難な状況」くらいまでは引き戻せるようになります(そうした状況から困難さを完璧に取り除くことはまずできません)。
そして、そのようなレビューとは、まさにメモを作ることなのです。
〜〜〜頓服薬としてのレビュー〜〜〜
頓服薬としてのレビューを行うときは、うんざりするようなすべてのリストに目を通す必要はありません。取り出すのは、一枚の紙切れ(あるいは、テキストファイル・アウトライナーの一項目・Scrapboxのページ)だけです。
そこに、今気になっていることを書き出していきましょう。頭の中にあることを、ひたすら列挙していくのです。
たとえば、以下は私が6月28日に行った「書きだし」の例です(一部表現に編集あり)。
・MP連載がなくなったのでテンプレートから削除しておく
・脳神経外科の予約を入れる
・今週は早めにメルマガを仕上げておくこと
・ホームセンターでふとんの受け取り
・プロジェクトレビューをしたい
・TM本の進展を確認
・PM連載はあと三回
・いつオープン?
・請求書を送るタイミングを確認
・タスク管理ツールの作成
・堀さんの本を読み終えたい
・日曜日(法事)
・法事用の買い物をしておく
粒度はバラバラで、性質もさまざまです。別にそれで構いません。むしろそれが良いのです。
こうしたレビューを行う際に、最初に大きな分類──たとえばプロジェクトや買い出しリストなど──を立てたくなるかもしれませんが、それをやっていると、既存のリストを使ったレビューと変わらなくなります。それをやるのがしんどいからこその頓服レビューなのでした。だから、ここでは一切分類を気にしません。ただし、書き出している時点では、です。
一度書き出すとわかりますが、書けばどんどん出てきます。「プロジェクトレビューをしたい」という項目から、「TM本の進展を確認」という項目が出てきました。これは「TP本」というプロジェクトの一部を為すタスクであり、もしかしたらプロジェクトノートに記載されているかもしれませんが、そんなことは気にしません。
今の自分の頭の中にそれが「気になること」として入っているなら、それを書き出すのです。
書き出し、書いたものを読み、また書き出す。それを繰り返して頭の中を掘り下げていきます。
それが一通り終われば、オーガナイズの時間です。自由に書き出していると、重複するような項目も出てくるのでそれをまとめます。似た内容のものは近づけます。そして、この段階で必要があれば「プロジェクト」などの項目を立てます。
そうこうしていると、別のプロジェクトのことが気になってくるかもしれません。合わせてそれも書き出します。
「堀さんの本を読み終えたい」から、別の未読本の名前が挙がってくることもあるでしょう。「今週は早めにメルマガを仕上げておくこと」からは、どんな内容の記事を書くのか、それは何曜日に書くのかについての考えやアイデアが出てくるかもしれません。それも書いておきます。最終的に別のツールに転記することになるかもしれませんが、この時点ではこの場所に書き出しておきます。
書き出し→並べ換え→それを見ながら書き出し
以上を繰り返し、全体を整えていけば、このレビューを開始する前に感じていた頭のもやもやは随分と消え去っているでしょう。
もしも時間があるならば、項目内のすぐさま取りかかれるものを実行しておきます。上の例で言えば、「MP連載がなくなったのでテンプレートから削除しておく」は、テンプレートノートを表示させて一行削除するだけだったので実行しました。実行したものは、そのツールの可能な範囲で「実行済み」を記しておくとよいでしょう。★をつけたり、絵文字のチェックマークを入れたり、取り消し線を入れたりといったことです。
そうすることで、そのリストは「着手」されたことになります。不思議なもので、まったくどの項目も実行済みになっていないリストよりは、二、三実行済みになっているリストの方が「とっつきやすい」感じがするものです。なので、すぐにできるものは実行してしまい、リストに「とっつきやすさ」を添付しておきます。
〜〜〜
しばらくは、こうして書き出したものを参照すれば、タスクの実行を進めていけるでしょう。いわばタスク管理システムが保持する全リストの緊急的な代替リストを作ったわけです。そして、代替であっても仕事を進めていくのに役立つならばそれで充分です。
必要なのは、「完全完璧なリスト」ではありません。当面の自分が安心して身を預けられるリストです。そう考えれば、代替リストでも十分だ、と割り切るのは現実的な対処法と言えるでしょう。
もし、多少のやる気が残っていれば、項目「プロジェクト」にぶら下げた項目を、既存のプロジェクトノートに転記しておいてもよいでしょう。買い物リストが別にあるならば、出てきた買い物の項目を書き写すこともできます。そして、そのような転記作業を完全に終えたら、頓服レビューは著しく内服レビューに近づいたことになります。
もちろん、すべての項目について洗い出しを行ったわけではないので完全完璧というわけにはいきません。モレもあるでしょうし、ヌケもあるでしょう。インスタントコーヒーの在庫を買い忘れることくらいはごく普通に起こりえます。
でも、そんなことはごく些細なことです。ごく些細なことだから、「気になること」として思い出せなかったのです。よって、「だからどうした?」くらいの太い心持ちでいればよいのです。
理想は理想、現実は現実です。そして、私たちは現実の中で、現実に対処していかなければいけません。
毎週欠かさずレビューを行うことは理想的ではありますが、それができていなくても別に挫折ではないのです。仕事がうまく回っているなら、どんな方法であっても、それは「正解」です。そして、うまく回らなくなったときの対処方法を知っていればリカバーできます。
うまくいっていないときは、そのままの行為を続けると、当然うまくはいきません。「何もしなくても自然に復帰した」ということはなかなかに望めないものです。
そうしたときに、「自分の手持ちの全リスト」をどうにかするのではなく、まず頭の中に抱えていることを外に出すこと。気になることをメモしていくこと。そういうスモールステップから始めていくのがよいでしょう。リストの完全な整備は、その後からでも行えます。そして、それで充分なのです。
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