Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/03/26 第389号
はじめに
はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。
最近自作のツールを作っています。
で、そのときに痛感するのが「作る人の都合」と「使う人の都合」の乖離です。
たとえば、プロトタイプ的に作ったツールがあるとして、それを触っているうちに「こういう機能(動作)があったらいいな」と思いつくとします。
しかし、それを実装する段階になるといろいろ難しさがみえてきて、「まあ、こんなもんでいいか」と少し違った(あるいはグレードダウンした)機能の実装で終わらせてしまう。すると、使う側としては十分満足できないツールになってしまいます。
その満足度の乖離がたとえ3%程度だったとしても、同じようなことが繰り返されていけば、ツール全体の満足度は低いものになってしまうでしょう。
「データベースがこうなっているから、こういうデータ表示にした方が楽に実装できる」
「ボタンの判別が面倒なのでショートカットキーは使えないようにしておこう」
などなど、「作る人の都合」が顔を見せる場面は多々あります。作る人だって、使える資源には限りがあるのですから、それは仕方がないでしょう。
とは言え、「使う人の都合」全開で作られたツールも一度は使ってみたいものです。だからこそのDIYです。
〜〜〜フリーライド〜〜〜
諸処の事情から、「ただのり」という言葉はあまり好みません(察してください)。というわけで、フリーライドという言葉を使うわけですが、コンテンツなり何なりを料金を支払うことのなく利用する行為をフリーライド、そのようなことをする人をフリーライダーと呼びます。
昨今、違法な(≒あきらかに適法と言い難い)Webサイトがあり、そのようなフリーライドを助長している状況もあるようです。
ただし、フリーライドを完全に抑え込むにはコストが非常にかかります。金銭的な意味もありますし、利便性や社会の自由性の意味もあります。
卑近な例で考えてみましょう。
書店があるとします。そこでの本の立ち読みは、一種のフリーライドです。それを完全に防ぐためにはどうしたらいいでしょうか。実際に行われていることですが、ビニールなどで包装し中身を見られないようにすることです。
これで立ち読みはかなりの部分防げますが、包装のための人手が余計にかかりますし、買う方も「あれ、これ読んだっけ?」と確認できなくなります。コストがあがり、利便性が低下したわけです。
しかもビニールなら破られてしまうかもしれません。そうなると、鉄の錠前で完全に封をしてしまうのはどうでしょうか。本を購入すればそれを開けるための鍵がもらえる仕組みです。またまたコストがあがり、利便性は低下しました。
同じように、万引きを完全になくそうと思えば、本を開架で管理するのではなく、閉架で管理することになるでしょう。ますます不便になり、しかも売上げは下がりそうです。
このようにフリーライドを0%にしようと思えば、想像を絶するコストが必要となり、全体的に見て良い結果にはなりません。かといって、フリーライド率が一定以上になってしまえば、そのシステム(あるいは生態系)は維持できなくなり、やがては破綻します。
よって、ほどほどのラインに留めておくことが現実的な施策なのですが、そのときに法整備やソフトウェアにおけるロックだけでなく、文化や美的感覚といったものも案外重要になるような気がします。
「立ち読みするのって、よくないことだよね」というコモンセンスは、立ち読みを完全に抑制するわけではありませんが、それでも一定数の人はそれを避けるようになるでしょう。
あるいは前号で書いた「自分で作品をつくり、売ってみる体験」も、似たような感覚を醸成すると予想できます。
むろん、法整備と文化は完全に独立しているわけではありません。成立した法が文化感覚を引き起こし、育成された文化が法整備を押し進める、ということはいくらでもあるでしょう。
よって、法側の人は法を、文化側の人は文化の育成を進めていくのがよいのかな、という気がしています。安直な意見かもしれませんが。
〜〜〜鋭意制作中〜〜〜
なんとなく「秋頃に発売できたらいいな」と去年考えていたかーそる第三号ですが、今年になってようやく発売の目処がつくようになりました。
といっても、いついつに発売ですよと発表できる段階ではなく、おそらく三号は完成するだろうという見込みがたっただけです。それでも大きな前進ですね。
それにしても、毎月毎月発売されている雑誌って、本当にすごいですね。頭が下がります。
ちなみに三号のテーマは読書(あるいは本を読むこと)になりそうです。そんじょそこらの読書企画とは一線を画している……はずなので、どうぞお楽しみに。
〜〜〜メッセージ〜〜〜
メッセージというのは、中身があり、誰かから誰かへ伝えるという方向性があります。でもって、中身にも強度があります。
そう考えると、メッセージはベクトルなのでしょうか。あるいはベクトルでもスカラーでもない、ぜんぜん別物なのでしょうか。
難しい問題です。
〜〜〜7wriner〜〜〜
ずいぶん前にその存在(というかURL)をこのメルマガだけでこっそり公開した7wrinerというWebツールがあります。
今をもってコードはスパゲッティなのですが、最近別ツールの開発に取りかかっているので、コード改善の進捗は望めません。そうしてズルズルと公開を先延ばしにしていると、このツールを使える人も増えません。あまりよくない状況です。
ですので、もうしばらくしたら思い切って公開してみようと考えています。
とりあえず、Windowsでもそれなりに使えるようにはしたので(ただしIEは馬謖のように切り捨てました)、近々発表できるかと思います。
ちなみに私は、最近のタスク管理はほぼこのツールだけでやっています。便利です。
〜〜〜Q〜〜〜
さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。
Q. 自分が使っている機器の中で、一番好きなものはなんでしょうか。
では、メルマガ本編をスタートしましょう。
今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。
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2018/03/26 389号の目次
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○「システムについて」#BizArts3rd #タスク管理 #システム論
タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。
○「Dr.Jamの日常」#ショートショート
読み切りのショートショートです。
○「新しいサイトの書き手」 #知的生産の技術
○「フロー、ストック、グロー[2]」 #やがて悲しきインターネット
○「読書が役立つのは30代までなのか」 #知的生産の技術 #読書術
※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。
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