大橋式情報フローシステム2019 〜ホットとウェイト〜
以下のポッドキャストを聞きました。
シゴタノ!の大橋さんの情報フローシステムが解説されています。聞いていて、ふむふむ面白そうだとと思い、自分なりに図解整理してみました。
まず、情報の第一着地点は[Evernote]です。[FastEver]や[たすくま]から送られたメモがここに辿り着きます。で、それを翌日に見返して適切な処理を行うわけです。いったん貯めておき、まとめて処理する。つまり[バッチ処理]ですね。さらに、一日置かれることで[冷却期間]が発生している点も見逃せません。これも情報整理においてはなかなか効いてきます。
とりあえず、このEverntoeは「思いついたこと」の[キュー]だと言えるでしょう。
そのEvernoteから取り出された情報は、そのまま行けそうなならブログのネタとして使用されます。で、そうでないものは[Dynalist]です。このDynalsitの使い方が実に興味深いものでした。
まず、大きく二つの項目があり、一つはアクティブなものを扱うproject、もう一つはアクティブ期間を過ぎたものを扱うzz archiveです。頭にzzが付いているのは一種の接頭辞であり、テキスト入力でこの項目を一意に引き出せるように付け加えられています。また、最近追加された[Dynalistのアーカイブ機能]は使用されていません。なぜならアーカイブ属性を与えてしまうと、[Move to]で探せないようになるからです。
上記はまあ、一般的な項目分けでしょう。注目したいのは、アクティブな要素を扱う項目「project」です。この中には、三つの項目があります。
・今考えていること
・進行中プロジェクト
・daily mixer
「今考えていること」は、第二の情報の着地点であり、処理・処理待ちの情報たちです。言い換えれば、ここは「今考えていること」/「今考えたいこと」の待合室です。もし、ここに到着した情報(≒気になっていること)が、「よっしゃちょっとやってみっか」的な感じになれば、それは「進行中プロジェクト」に移動され、そこでどんな展開が可能か、どんな要素がさらに必要かなどが検討されます。プロジェクトの分解といった行為よりも、「そのプロジェクトってどんなものになるだろう?」についての思考(ないしは試行錯誤)と表現した方が近しいでしょう。
同じように、「今考えていること」がひとまとまりの情報となったとき、それは「daily mixer」に移動されます。ここは(大橋さんいわく)断片が集まる場所で、旧来の方式の呼び方を引っ張ってくれば[情報カードシステム]における「カード置き場」ということになるでしょう。それ自身で完結していて、他のアウトプットの素材となりうるもの。それが断片であり、カードです。
このように、「今考えていること」に入ったものは、「進行中プロジェクト」や「daily mixer」に移動されるわけですが、「うん、まあこれはいいかな」というものは、zz archiveにいくこともあるようです。そりゃそうですよね。すべての「気になること」が実になるわけではありません。捨てられるものも出てきます(たとえそうであっても、断片は日々大量に増えていくので心配は不要です)。
これらのフローシステムもまた、特段珍しいものではありません。[トレーシステム]のデジタル情報versionだと言えるでしょう。真に興味深いのは、情報が行くだけでなく、返ってくることもあることです。つまり、〈行ったり来たり〉があります。どういうことでしょうか。
たとえば、いったん「daily mixer」に入れたものがあっても、そのときの自分が「これもうちょっと考えたいな」と思うものが出てきたら、「今考えていること」に戻すことが起こりうるのです。先ほど書いたように、「今考えていること」は「今考えたいこと」でもあるわけですから、これは自然な流れでしょう。
また、この「戻す」という行為があるからこそ、気楽に「行かせされる」という効能が期待できます。必要になったら戻して良いのだから、深く考えずに「daily mixer」に移動できる、ということです。この点によって、「今考えていること」に置くものの数を限定できます。
私自身の経験から言って、「今考えていること」のような場所に項目を置きすぎると、だいたい見るのが嫌になって破綻します。だから、数の抑制が必要です。しかし、次から次へと「思いつき」は増えていくのです。そうなると、数を抑制するための圧は日々高まっていきます。これをどうすればいいのか。答えは簡単で、気楽に「捨て」られるようにしたらいいのです。それが、「daily mixer」との〈行ったり来たり〉というわけです。
上記のシステムを見て、「そうそうこれなんだよな」と感じたのは、実は同じコンセプトを私も持っていたからです。
ただし、まったく同じではありません。まず、私は「進行中プロジェクト」「daily mixer」という区分をあまり大切にしていませんでした。この二種類は情報の扱い方が異なるので、考えてみれば分けておくのがナチュラルです。この時点の私の「断片」についての理解が大雑把だった(≒解像度が粗かった)のでしょう。
もう一点、上の記事では以下のように結んでいますが、
一点付け加えるなら、このflowboxには、別の場所に移動したノートが「戻ってくる」こともあります。「ちょっとこれ、温めなおしてみようか」ということもできるのです。この動きもまた、flowboxをflowboxと呼ぶ由縁でもあります。
私はこれを「そういうこともできる」とだけ考えて、それほど重視していませんでした。しかしむしろ、これができることこそが重要だったのではないかと今では考えています。それは、こんまり流などで、「捨てることの大切さと難しさ」を学んだ経験も活きているでしょう。捨てたい(数を絞りたい)、でもそれは難しい。だったら気楽に捨てられるようにしておく。こういうコンセプトを持っていると、大量の情報(というか思いつき)も扱いやすくなるのかもしれません。
■ ■ ■
とりあえず、これまでの情報整理学(そういうものがあるとすれば)では、「アクティブなものとアーカイブなものを分ける」というのは基本的原則として確立していました。上記のシステムではさらに、そのアクティブなものの中にも、「ホットなものと、そうでないもの」という区分が生まれています。そして、一度アーカイブに行ったものが、アクティブに戻ってくることがないのに対して、このホットとウェイト(≒待機)は、行き来が十分にあり得る、という点が重要です。
いやはや、それにしても面白いですね。こういう情報の扱い方については、いずれ『メモの育て方』(仮)と『タスクリストのつくり方』(仮)という本でまとめてみたいと考えています。
注一覧:
※Evernote
クラウドノートの大定番。最近は資料保管庫として使われている事例が多いようだが、さまざまな情報を一カ所で受け止めるツールとしていまだに独自の存在感を持っている。
※FastEver
Evernoteにメモを送るためだけのiOSアプリ。機能が限定的な分、ともかく早い。あと、細かい使い勝手が非常に優れたツール。
※たすくま
Taskchuteの思想で設計されたタイムライン型行動管理ツール。一日に「レール」を設定してくれる効果を期待できる。
※バッチ処理
複数のプログラムからなる作業において、あらかじめ一連の手順を登録しておき、まとめて連続的に実行する方式。 または、一定期間や一定量ごとにデータをまとめて一括して処理する方式。
※冷却期間
時間が経つことで冷静になり、衝動的反応を減らせる効果が期待できる。あるいは書かれたものの新たな価値を見出す可能性も。
※キュー
よくスタックと対比される。キューもスタックもデータを一列に並べるがその取り扱い方が異なる(参照)
※Dynalist
クラウドアウトライナー。無料でも項目が無限に追加できる、多機能・高機能なツール。pro版を契約すればさらなる高機能に進化できる。
※Dynalistのアーカイブ機能
以下を参照のこと。
Dynalistのarchive – 考えて、生み出す技術(TAC)
※Move to
Dynalistの機能の一つ。ドラッグアンドドロップやキーボードショットカットなどで直接項目を動かしていくのではなく、移動したい項目名を検索して、そこに一気に移動させる機能。
※情報カードシステム
情報カードというやや厚めの紙を使った情報管理システムの総称。梅棹忠夫の『知的生産の技術』が有名だが、渡部昇一『知的生活の方法』や板坂元『考える技術・書く技術』でも言及がある。現代ではPoICなども。
※トレーシステム
以下を参照のこと。
トレーシステム – タスク管理のScrapbox
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